第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? 第百節
たった一つの譲れないもの
意識が朦朧としていいた
花音にお腹の辺りを突かれて…その時に何かが身体の大事な部分を麻痺させたみたいだった
「しかし、まさか○●基幹に干渉するとは… 彼女が一般人だからこの程度で済んだもののもし○●師だったら…」
朦朧とした意識の中で男の声が聞こえた
ぼんやりとした視界の端では花音がいるように見えた
その影は段々と遠のいていってそして・・・
「ぶっ ふふっ ふふっ あはっ あはははははっ」
私の言葉がそんなに面白かったのか女は大声で笑いだした
「あなたが私と? さすがにありえない!」
女はそういうとわざとらしくゆっくりと近づいてきて見下ろすみたいに言った
「冗談も死んでから言いなさいニンゲン あなたたちのような下等な生き物が吸血姫たる私と共に死ねるなんて…」
「そっちこそそんな風にいうぐらいならさっさと殺したら? こんな●Zく一人さっさと殺せないいなんて…」
その一言がよほど気に触ったのか女は私の首を掴んで持ち上げた
「さっきから黙って聞いていれば… あなたをすぐに殺さなかったのは足が潰れて動けなくなっていたからですよ ニンゲンなら少しぐらいは知性があると思っていましたがここまで馬鹿だったとは…」
「あっ…ぐっ… うっ・・・ あっ……」
気道を塞がれて思うように息ができなかった
このまま一分ともたないうちに私は死ぬだろう
でも彼女を挑発してここまで近づけさせたのも私の計算通りではあった
言葉にできないたった一つの呪文を
あの人から教わった紫陽花の魔法を
心の中で呟いた
「ハイド・ランシア」
私の首を掴んだその手は一気に痙攣し無造作に私を放り出した
その場に屈みこんで喘ぐ私の側で音は声にならない悲鳴をあげていた
「がっ…あっ… あああああああああああああああああああああああああああ!」
女は今までにないほどの形相で私のほうを見て言った
「貴様…それは… その…●○◎は…」
「あなたが殺した…魔女のものだよ」
「よくも、よくもよくもよくも!」
叫び近づいてくる女、しかし彼女はその力を十分に発揮できなかった
「こんな…あってはならない あってはいけない… 私の魔力基幹がこんな下等なニンゲンに…」
「雅さんは…最初からこうなるって分かってた」
だから私にこの術式を刻んだ
合意の上での譲渡ではなく一方的に呪いとして押し付けることで一度だけ本来の力以上の能力が出せるようにしていたんだ
「あの女の… 紫陽花の名を呼ぶな! あの忌々しい雨の魔女! よりにもよって紫陽花の名を象ったあの魔女! ハイ・D・ランシアの名を私に呼ばせるな!」
激昂した女の右手は躊躇なく私の顔に向かって伸びてきた
その瞬間、私は自分の最後を悟った
意識を取り戻しかけた視界の奥に花音は映っていた
血でまみれた赤い手を目前にしても彼女は逃げる様子がまるでなかった
ただ一言、僅かにその唇を動かして私に伝えた
「待って…」
かすれた声が正しい音の形を作ることもなく零れた
「まっ…待って まだ…かのんがっ」
しかしてその声は届くこともなく
「大好きだよ」
その言葉と共に無情にも世界は彼女の終りを告げた
「あ、あぁ あぁ…」
目の前に映った鮮血は紛れもない現実を突き付けた そして
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
薄暗い廃墟にその声だけが鳴り響いた
第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? (旧題反転)
改題 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできる!
(了)
これまでご覧いただきましたのは秘密を孕んだ、ある少女の話




