第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? 第九十五節
終りに始まる 始まりに終わる
「うっ… んっ…」
重い瞼をゆっくりと開いていくと視界がはっきりと形を帯びていく
薄暗い、土埃と鉄の匂い…
頭の裏側が痛い気がするけど意識が混濁してるおかげか立ち上がることに支障はなかった
「んっ…」
記憶がおぼつかないさっきまで誰かの記憶を見ていた気がする
それが誰のものなのかどんな記憶だったかさえ思い出せない、けどとても悲しい記憶だった気がする
「なに… これ…」
視界は暗い、なんならさっきよりも灯が消えていてかすかにものの形がわかるかどうかぐらいだ
それでもこの異様な状況は簡単に理解できた
さっきまで天井だったものが崩れ落ちている
さっきまで通路だった場所を塞いでまるでこの暗闇に灯を燈すかのように不規則に火花が飛び交っている
「これって… 事故?」
もともと改装工事中の建物だ、工事中の何かの間違いで事故が起こる可能性は否定できなかった
「っ… か…の、ん」
どれくらい気を失っていたのか分からないけど直前まで隣にいた花音を探がした
身体中が痛いけどどこも骨は折れていないみたいだった
おかげでちゃんと動くことができたしこれなら花音がもしもケガをしていたとしてもどうにかして連れて帰れる
「かの…ん かのん… どこ…」
上手く声が出せないけどそれでも必死に声を出そうとしたすると
「しょ、う こ…」
「花音! どこにいるの!?」
彼女の声が聞こえて辺りを見渡した
スマホのライとはかろうじて生きていたけど周りの暗さがここに来たときよりも暗くなってるせいでスマホの明かりだけでは一か所を照らすことしかできなかった
「かの…」
「聞いて…」
かすかな声で花音は私の言葉を遮った
「たぶん、ここほもうすぐ…崩落、する…」
「崩落って… だったら逃げないとっ」
「でも逃げられない…」
まるで諦めたみたいに花音は言った
崩落するにしても出口を探せば二人とも助かる見込みはまだある
でも花音はそれが無理だと分かってるみたいに言った
「どうして、まだ諦めなければ…」
「アレがいる、以上は… 無理」
「アレって…なに?」
「……ぃ」
その言葉だけ花音はわざと聞こえないように言ったみたいだった
「とにかく逃げよう今ならまだ…」
「足、感覚がない…」
「えっ…」
花音の手をとって無理やり立たせようとしたその手を花音は手放した
「たぶん、もう 無理」
「…でもっ」
この場で花音を置いていくなんてそんなことができるわけもなくてどうにかしようとする
けれど花音は私のことなんてお構いなしにかすれた声で言った
「恋のこと、お願い たぶん、雅三のこと…後悔してるから」
「なに言ってっ……」
まるでこのまま二度と会えなくなるみたいなそんな言葉を口にしだす
「桜のことは…」
「ちょっと待ってよ! さっきからなんなのまるでこれから死ぬみたいなそんなこと」
声を荒げて否定する私に花音は
「いいから聞いて きっとこれで最後だから」
「っ…」
花音の言葉に身体が停まった
そして彼女はその言葉の続きを話し始めた




