第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? 第八十九節
明かされるのは二つ目の悲劇
17/20 ・ 16/06
僅かに時間は遡る
「…珍しいわね あなたが呼び出すなんて」
放課後、私は珍しく寄り道をしていた
寄り道…正確には目の前にいる彼女に誘われてしぶしぶ付き合ったというのが正しいかもしれない
「……」
「黙ってても分からないのだけど」
碌に返事もせず目も合わせようとしない目の前の相手…梅田花音は表情を変えることなく歩き出した
「ちょっと… 待ちなさいよ」
いつものことだった花音は私に対してはいつもこうだ
まともに会話をせず私が声をかけたり行動しようとすると何も言わずに自分がしたいことを始める…
わがままなのか甘えなのか、その理由は定かではないけれど惠から聞いた話しだと他の人の前ではちゃんと会話しているらしいから謎だ
大して身長が変わらないはずなのにやたらと一歩が大きい花音に置いて行かれないように早歩きでついていく
「ちょっ… なんでそんなに歩くのが早いの!?」
「別に…普通だけど」
「どう考えても歩幅が大きいでしょ…」
「松子より脚が長いからじゃない…」
立ち止まった信号の手前で愚痴を溢すと花音は言うに事欠いて失礼なことを言いだした
思わずムッとして彼女のことを睨むけどそもそもこちらの顔を観ないんだから意味がない
「そんなことより、いい加減どこに行くのかぐらい教えてくれない? あなたに呼び出されてわざわざこんなところまで来たんだから」
そう言いながら鞄の中に入っている手紙に注意を向けた
『田村松子様』、そう書かれた手紙には放課後、何駅も離れたこの場所で合流したいとの旨が書かれていた
「もう着いた」
「は?」
花音の言葉に驚いて正面を見るとたしかに小さな建物があった
看板は見当たらないけどどうやらカフェになっているらしい、花音はそんな建物の中に迷わずに入っていった
私も一瞬の躊躇はあったものの結局は入らざるをえなかった
しゃれたアンティーク調の家具と店内に響くクラシックの旋律、落ちついた店内は狭すぎず広すぎずまさに隠れ家的なカフェだった
しかし残念だったのはその静寂が近くにある商業施設、その改装工事の音で邪魔されていることだった
それほど近く出もないのにやたらと聞こえてくる機会や重機の音、それがまるで聞こえてないみたいに花音は優雅にコーヒーに口をつけた
「それでほんとに何のよう?」
正直、カフェの雰囲気は良かったけど周りから絶え間なく聞こえる不協和音に精神を削られてもう限界だった
そんな私をみても素知らぬ顔でコーヒーの入ったカップを口に運ぶ
もう本当に限界だと席を立とうとしたその時だった
「それで、いつまでこんなことを続けるの?」
「は?」
唐突に口を開いた花音の言葉に意味が理解できず聞き返した
花音は手に持っていたカップを静かに置くとゆっくりと私と目を合わせて話した
「いつまであの人のことで恋たちと対立するの?」
その言葉に私が答えを出そうとしたその時、花音は繋げるようにして言った
「あの人… 雅さんと松子は付き合っていたんでしょ?」
その言葉がついに私を怒らせる二は十分過ぎる言葉だった




