第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? 第八十八節
チュートリアルは終わった
駅前に停まったリムジンに私は乗っていた
田舎の閑散とした駅前のそれはあまりにも場違いで駅を訪れるまばらな人影は皆、こちらに注目していた
「それで、なんの用?」
好奇の目に晒された私は苛立ちながら言った
「落ち着いて話がしたかったんですがあいにく近くのホテルは満室でしたので」
「…たしかに場所ぐらいはもう少し選んでほしかったけど」
私のつぶやきを気にも留めず目の前の彼女は真剣な表情で話を始めた
「単刀直入に言います 以前あなたから提案された勝負の件、一度白紙にしませんか?」
「は?」
「ですから勝負の件を…」
「ちょっと待って なに? 次のライブでの勝負を白紙にする? なんのつもり?」
彼女から告げられた話はあまりにも予想外のものだった
たしかに勝負を仕掛けたのは私だった、けど彼女がそれを承諾したのも事実だった
「逃げるつもり?」
「心外ですね そんなわけないじゃないですか」
「ならどうして…」
そもそも逃げるも何も勝算は彼女のほうにあったはずだ
蓬と結婚する… あまりにも無謀でしかし本気だった彼女なら例え勝算がなくても勝負から降りる何てことはしないと思っていた
だとしたらいったいなぜ… そんな疑問が頭の中を埋め尽くした
「…ライブができるような状態ではなくなりました」
「ライブができないって… どういう…」
わけもわからず流れ込んでくる情報の渦に私が溺れかけていると彼女はいつになく神妙な顔つきで小さくいった
「本来なら私の口からは言ってはいけないことなんです けど近いうちにあなたも知りたくなくても知ることになってしまう…だから…」
「あ、えと…」
口ごもった彼女のほうを見る彼女の目には涙が浮かんでいた
いつも無駄に明るい笑顔で近づいてくる彼女のから想像できないほど悲しそうな顔…
ほんの一瞬だけどその姿に目を奪われた
「このことは…まだ誰にも話さないでくれますか?」
「それは… まあ 内容にもよるけど…」
「分かりました ならあなたにだけお話します」
「////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////」
「………」
それはまるで雲一つない青空に向かって放たれた爆弾のようなそれまで側にいた誰かを形だけ、影だけ残して消し去るみたいなそんな話だった
「ねえ… ほんとなの? だってそんな…」
「私だって信じたくなかった、でも本当です 本当…なんです…」
彼女の顔を見たらそれが演技でも作り話でもないことはすぐに分かった
けどそれは経った今聞かされた話が全て事実だと肯定する証でもあった
「それ、先輩たちは…」
「たぶん、知ってます 私も惠から聞いたので…」
「……」
大きく深呼吸をする
自分の心を落ち着かせようと試みるけど心音は時間とともに速まっていく
まるで残酷な現実を受け入れるみたいに
「…分かった」
彼女への返事はその一言だけだった
17/20 ・ 19/06
このせかいはくるっている
最初の×××は… だれ?




