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第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? 第八十四節

絵具の匂い、キャンバスの白、動き出す探偵

『ほんと、さっさと死ねばいいのに」

かすかに届いたその声は私の胸の奥に深く突き刺さったことを今でも覚えている

友達になりたかったわけじゃない、好かれたかったわけでもない

ただのクラスメート、それだけでよかったのに…

私はどこで間違えたんだろうか?


……ぎ ……もぎ? ……蓬!


「あ、えと… ごめん」

逸らしかけた視界と意識を元に戻す

意識が過去から現在へと引き渡されるとそこには真凛がいた

「大丈夫? 顔色悪いけど…」

「あ、うん 大丈夫…」

うっすらと笑って見せたけどきっとそれも意味がないんだろうな

「なら、いいけど それでさっきの話しなんだけどさ」

「うん…」

真凛はスマホの画像を私に見せて言った

「この間の事故のことで中学の頃の友達から連絡があってさ、あの事故現場の近くで家山さんを見かけなかったかって聞かれたんだよね」

「…事故に巻き込まれたの?」

「ううん、夕方のニュースで少しだけ彼女が映ったらしくてね それで色々と聞いて回ってるらしいんだよね」

「そうなんだ…」


真凛の友達がどうしてそんなことを聞いているのか気になったけど下手に詮索するのはやめようと思った

彼女が事故に巻き込まれたわけじゃないと知って素直に喜べなかったことへの憤りもある

正直、これ以上彼女に関わりたくなかった

「変な話ししてごめん 一応、蓬には言ったほうがいい気がしてさ」

「ううん こっちこそ途中で考え事してた… ごめん」

お互いに気まずい雰囲気になってしまいどちらも押黙ってしまう

きっと真凛はあの事故のこと、家山さんのことで他にも聞きたいことがあったはずなのに

けど私から彼女の話題が振れるわけもなく重い沈黙だけが続いた


「あ、えーと、あれ? おかしいな… えーと…」


教室棟の廊下を歩いているとどこからそんな声が聞こえた

真凛と顔を見合わせて辺りを探すと目の前に女の子が蹲っているのが見えた

私達と同じ制服を着ている、たぶん靴の色からして同じ一年生だろう

「あの… どうかしましたか?」

「え、ああっと すみません… その… ちょっと落とし物をしてしまって…」

「探すの手伝いますよ 探してるのってどんなのですか?」

迷いなく声をかけた真凛に女の子は恥ずかしそうに笑いながら言った

「あ、えと… ぬいぐるみです…」

「ぬ… ぬいぐるみ…ですか?」

「あ、はい… 今探してるのはゴッホちゃんで、今日はフェルメールさんと雪舟君も一緒だったんですけど…」

どことなく幼さの残る彼女の胸元には毛糸で編まれたぬいぐるみが抱かれている

けど普通のぬいぐるみとは違いかわいらしい動物やキャラクターではなくデフォルメされた人のような見た目だった


「えっと…それで探してるのって…」

「ゴッホちゃんです」

困惑した様子の真凛に彼女は熱弁するかのように言い放った

「ごっ… えと…」

「たぶん画家のゴッホのことじゃないかな? ひまわりとか星月夜とかで有名な… フェルメールとか雪舟も画家の名前だし」

無駄にアニメやゲームで培った知識がこんなところで生きるとは…

人生なにが役立つか分からないなと思った直後だった 

女の子は当然、私の手を握ってきて言った

「知ってるんですか!?」

「あ、えと… 少しだけ」

「なんと! こんな所に我が同志がいるとは… しかもその靴! 色からして私と同じ一年生ですよね! ここで会ったも何かの縁です ささ美術室に行きかの巨匠たちの作品について語り合いましょう!」


とんでもない速度で距離を縮められた

真凛都はまた別のタイプのコミュ強…いわゆる強火オタクだ

「やはりゴッホと言えばひまわりですよね! ですが私はあえてタンギー爺さんが最高傑作だと思ってます!」

「…たしか日本画に影響を受けたっていう…」

「そうなんです! 日本画と西洋画の融合…日本がかの巨匠に認められた瞬間で…」

思わず余計なことを口走ったせいで更に彼女の熱を加速させてしまった

「はいはい 一旦そこまでにしてさっさと探したほうがいいんじゃない?」

それを見ていた真凛が助け船をしてくれた

やはり持つべきものは友達…

「そうでした! 早く探さねば」

「あ、えと…」

「はあ… とりあえずぬいぐるみぽいのを探せばいいんでしょ?」

こうして結局三人で探すことになったのだった


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