第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? 第八十三節
動き出す災禍
「それにしても中々思い浮かばないもんだね」
「たしかに…」
教室の隅で綾乃と天城くんが話している
私も歌詞を書いてたノートをめくりながら何か使えそうな言葉がないか探していた
バンド名を考え始めて三十分、何一つ案が出ないまま時間だけが過ぎていく
大倉くんはいらだちを隠しきれない様子だったけど一人でぶつぶつと何かを言ってる
天城くんと綾乃はスマホで調べながら少しずつ案を考えてるみたいだった
「蓬、ちょっといい?」
「あ、うん」
真凛に呼ばれて私は顔をあげた
「どうかしの?」
「このまま考えてても埒があかないからちょっと気分転換にいこうと思ってさ 蓬もどう?」
「そう、だね… 私もそうしようかな」
真凛の提案に便乗して私も気分転換のために音楽室を後にした
それからしばらくお互いに無言で並んで歩いた
いつもなら真凛が話しかけてきてくれるんだけど今日はやけに静かな気がする
まだ病み上がりだし色々あったもんな…なんてことを考えていると真凛が言った
「あのさ…」
「あ、うん」
私の半歩後ろを歩いていた真凛が私の制服の裾をつまんだ
「あの時は色々ごめん… 蓬に酷いこと言ったよね」
「えっと… いや、そんなことないよ それより私のほうこそ真凛の気持ち考えてなくてごめん…」
真凛のほうに向き直って頭を下げる
改めて考えてみると自分の気持ちばかり押し付けていて真凛のことなんて考えてなかった
けど真凛はそんな私の肩に手をおくと
「ううん あの時、蓬がちゃんと向き合ってくれたからアタシもちゃんと話すことができたんだよ」
「そう、なのかな…」
真凛はきっと優しいからそんな風に言ってくれるんだろうな…
輪の時の私の言葉はただのわがままで… 無責任にも真凛を巻き込んでしまったのに…
「それより、蓬は覚えてる? 中学の時のこと」
「あ、えと…」
高校に入学して早二か月、すっかり油断してた私はあることを思い出した
それは真凛と私が同じ中学出身であること、そしてそのことを真凛に知られると色々とマズいことである
「覚えてないよね… 今更だけど一応、同じ中学だったんだよ」
「あ、えと… ごめん」
「いいのいいの気にしないで!」
真凛は笑いながらそう言ってくれたけどその笑顔を見て胸が痛んだ
ほんとならちゃんと覚えてるっていうべきんだけど…私にはその勇気が持てなかった
「それより、あのニュース知ってる?」
「あっ…」
息が詰まる
きっとたぶんもしかしたらいいや必ず真凛の口から話される話題はあの時のことだ
中学三年生の文化祭、きっとあの学校にいた誰もが知っている事件
それについてのことだと思い込み背中に嫌な汗が辿った
ついに訪れるその瞬間、まるで断頭台の刃が首に当たるそんな感覚に襲われた直後だった
「家山さんの件なんだけどさ」
「へ?」
その刃はもう一人の少女のへと軌道を逸らした
「あ、えと… 家山さんて二組の?」
「そう! 三年の時、二組だった家山愛輪守さんなんだけどさ」
聞きなれた… もう二度と聞きたくない名前に身構える
「彼女がどうかしたの?」
「アタシが倒れた時、かなり大きな事故があったでしょ?」
「うん…」
真凛が倒れた日、学校から少し離れた地域の工事現場で大きな事故があったことを思い出した がれきが付近の道路にまで崩落して大規模な交通障害まで起きた事故だ
真凛は私以外に誰もいないことを確認して静かに言った
「あの事故現場に彼女… 家山さんもいたみたいなんだよね…」
「は?」




