第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? 第八十一節
言の葉を紡ぐ者
「その…迷惑かけてごめん…」
週明けの月曜日、真凛はそう言って大倉くんに頭を下げた
普段から犬猿の仲である真凛が大倉くんに謝るなんてこれが初めてだった
「…別に、お前が居ようが居まいが俺には関係ない ただ迷惑だから次からは倒れる前に頼れ」
「それって龍弥なりのに心配してたってこと?」
「なんでそうなる」
大倉くんの言葉を綾乃が独自の視点から解釈して真凛に伝える、それを聞いた大倉くんは心底不満そうにしてたけど…
「ま、龍弥も素直じゃないからな 真凛が倒れて一番心配してたのに」
「おいこら 勝手に記憶を改竄するな」
茶化すように言った天城くんを大倉くんが小突く
けど天城くんはそんなこと気にしないみたいに笑っていた
「なんだかやっとバンドらしくなってきたね…」
「そう…だね」
しみじみと呟く綾乃に私も肯定した
たしかに今までは何かにつけてギスギスしてたけど今はなんだか想像していた通りのバンドみたいな雰囲気になってる気がして…
こんな空間がいつまでも続いたらいいのにと思ってしまう
「それで、蚊帳ノはできたのか? 作詞」
「あ…えと…」
ふいに大倉くんから聞かれて言葉が詰まった
それはまるで翌日に後回しにした宿題を忘れててたことを思い出したみたいで…
「まあ、だろうな」
「あ、えと… できてはいるんだよ…」
ため息まじりに呟いた大倉くんに私は言った
頼まれていた作詞自体は一応できていた
私が口ごもったのはそれを家に忘れてきたとかやっつけででたらめなことしか書いていないからとかではなく…
「なら見せてくれないか? 曲の調整が必要だろうから」
「あ、えと… 全然だよ… ほんと…」
これ以上ごねて怒られたくないのでしぶしぶ歌詞を書いたメモを渡した
真凛の説得が上手くいって調子に乗っていた私はそのままのテンションで歌詞を書いていた……
金曜日の深夜というただでさえテンションがおかしなことになってるタイミングで書いた歌詞だ当然、日曜日の夜に見消したら黒歴史もいいとこの産物で…
かといって翌日の学校を思うと憂鬱でしかない日曜夜に歌詞がかけるわけもなくてどうにでもなれの精神でその歌詞を持っていくことにしていた
あんなことがあったから締め切りが曖昧になるかもなんて希望的観測は打ち砕かれ私の書いた歌詞(黒歴史)がみんなの手に渡ってしまったのだった…
「蚊帳ノ…」
「はい、すみません どうもゴミです そちらのお目汚しはこれから直ちに焼却炉へ…」
「まだ何も言ってないだろ…」
さっきよりも大きなため息を吐きながら大倉くんは言った
「それより歌詞についてはこれでいく」
「へ?」
「細かい部分の修正は入れるが基本はこのままでいく」
何かの間違いかと思って聞き返した私に大倉くんは言った
いやいやまさか… さすがにあんな歌詞がいいなんて…そう思って周りを見渡す
きっと綾乃たちからは酷評だろうなと半分自虐的に見渡すけど誰一人そんなことを言う人は居なかった… それどころか
「私もこの歌詞、いいと思う」
「いい意味で蚊帳ノさんらしい歌詞じゃないかな」
「あ、えと…」
私らしい歌詞って…
普段自分がどんなふうに見られているのか怖くなってくる評価だな…
念のため綾乃のほうも見ると
「…私、この曲がいいな この曲、歌ってみたいって思った」
あまりにもまっすぐにそう言われて私からは何も言えなくなってしまった
「ならこれで決まりだな」
「お願いします…」
そんなこんなで私が密かに懸念していた作詞はあっさりと方が付いたのだった
(最もこの時の出来事がきっかけで作詞に悩まされることになるんだけどその件はまた後ほど…)




