第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? 第八十節
今度こそ、私は… 私が好きな人のために音楽を奏でる
「大丈夫?」
「あ、うん… ありがと」
手に持っていた水を真凛に渡す
途中、テーブルの上に置いたけどずっと手に持っていたせいで温くなっていた
でも真凛はそんなことも気にせず少しだけ水を飲むと
「ごめんね、色々と…」
「ううん その、私もごめん 変なこと言って…」
さっきまでの言葉を思い出して顔を逸らした
とにかく真凛を引き留めることに必死で自分でも結構ヤバいこと言ってたなって思う
かなり微妙な空気間の中でさっきまでとは違った耐えがたい沈黙が生まれる
この状況でなにを話したらいいのか思いつかなくて…仕方なく天気の話題でも話そうかなと思ったその時だった
「やっと目が覚めましたか…」
「め、メイリンちゃん!?」
ジト目でこちらを見つめながらメイリンちゃんは病室に足を踏み入れた
「どうしてここに…帰ったんじゃなかったの?」
「蓬のことが心配でしたので残りマシタ、それにドクターからの伝言もあったノデ」
「ドクターって… さっきの先生のこと?」
病院に着いたとき、真凛の処置をしてくれた男性のお医者さんを思い出す
「そうデス! 日本語だと色んな職業の人のこと先生って呼ぶので難しいです…」
「ああ、たしかに 学校の先生もそうだし弁護士とかも先生って呼ぶもんね」
メイリンちゃんの話に妙に納得しつつ真凛の様子を見るといつの間にか布団に包まって横たわっていた
「ところでさっきのお医者さんて…」
「ドクターなら他の患者さんの所に行ってしまいました 蓬も知ってると思いますが先ほどあった事故の影響でこの辺りの病院は逼迫してマスからネ…」
「そっか でもここは事故現場からそんなに近くないと思っていたけどそれでも患者さんが運ばれて来るんだね…」
真凛のことで頭がいっぱいであまり気にしなかったけどメイリンちゃんのリムジンでここまで来る途中で黒煙や炎が立ち上っていたのを思い出いsた
スマホも触ってないからどんな事故なのかも分からないけど…
「ここはドクターヘリの設備もあるのでそれでだと想いマス 最もドクター曰く蓬たちが気にすることデハありませんヨ」
「…うん」
今もまだ窓の外から見える黒煙に気を取られながら私はそう呟いた
真凛の症状はストレスが原因のものだったらしい
検査の結果はほとんど異常がなかったみたいで明日には退院できるとのことだった
「それじゃあ、私たちはこれで帰るね」
「ゆっくり休んで… 私も蓬ちゃんと一緒で真凛のこと、待ってるから」
病室から出る直前、私と綾乃が言った言葉に真凛はうんとだけ呟いた
さすがにまだ元気はなさそうだったけどさっきまでとは違ってちゃんとその瞳弐は光が宿っていた
「…」
「アンタは…帰らないの?」
病室の隅に座る少女に声をかける、すると彼女は浅くため息をついて答えた
「アナタにはまだ聞きたいことがあるので…」
「…なに?」
彼女はゆっくりとこちらに歩いてきてベットの脇で立ち止まって言った
「勝負の件、諦めましたか?」
「…聞いてたの?」
「なにをですか?」
彼女の問いかけは私がバンドを抜けるってそう蓬に言ったこと聞いていたからだと思った
けどどうやらそうではないらしい
「私はただあなたに戦う意思がまだ残っているのか知りたいだけです 蓬のこともバンドのことも諦めるつもりがないのかどうか… 今まで通り、全部諦めるつもりで、わざと負けるつもりで挑まれるなら私からこの勝負を降ります」
見下ろすように見つめてくる彼女の瞳は今までになく本気だった
彼女の言葉はとても重くそれだけの真剣さがあった
だから、私もそれに応えないといけない
蓬が私を必要としてくれた… ピアノが弾けなくてもそれでもいてほしいって言ってくれた
蓬が好きだと言ってくれた、それが私の思う好きとは違うことも分かっている
だけど…その言葉が私を救ってくれた
だから
「私は…まだ、諦めてない ううん、今度はもう諦めたりしない」
「そう、ですか… なら私も本気であなたを…あなた達を潰しにいきマス」
宣戦布告とも捉えらるその言葉…
だがしかし彼女の目はまるで好敵手を見つけたかの如く静かに笑っていた…




