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第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? 第七十二節

仕組まれたのは偶然か必然か?

病院での診断結果はストレス性の胃腸炎だったと思う

ここから先のことはあまり覚えていない

二年生の終りまで不登校になって家から一歩も出ることはなかった

まるで死んだように日々を過ごして、何を食べたか、なにをしたか、なにを見てなにを聞いてなにを感じたのかそのどれも記憶に残っていない

ただ精神的な病気を患って家に引きこもった叔父とその面倒を見る母の姿を見てこのまま迷惑をかけられないと三年生の途中から学校に戻った

幸い、クラス替えであの時と同じクラスメートはほとんどいなかったし私のことを覚えてる人なんてゼロだった


それでも誰かに何かを言われてるみたいな感覚が消えることはなくて…

クラスに居場所のない私が逃げ込んだのは保健室だった


「すみません 失礼します…」

「あら、小林さん 今日も具合悪いの?」

保健室の扉をノックして中に入る

するともはや顔なじみになった保健室の先生が声をかけてくれた

「はい… ちょっとお腹痛くて…」

「そう、ならそこのベットが空いてるから適当に休んで もし早退するのに親御さんに連絡が必要なら言ってね」

「ありがとうございます…」

そう言って私はパーテーションで区切られたベットの一つに横たわった

それから目を閉じて沈黙に浸かる

何かを考えることも何かを思い出すこともしなかった

ただの虚無、そうやってただ与えられた時間を無駄にすることがなによりも救いだった


「失礼しました…」

誰もいない保健室に一礼して外に出た

時間は下校時間の少し前、保健室の先生は職員会議でいなくなっていた

校舎にもうほとんど生徒が残っていないことを確認して教室に戻る

それから自分の荷物、といってもロッカーに入れたままの鞄を取り出して玄関に向かった

学校に来て保健室で寝て下校するそんな姿、誰にも見られたくなくて教室棟に誰かいないか注意していたのに…

「きゃっ」

「っ…」

出会い頭にぶつかった

ぶつかった相手のほうを見ると尻もちをついたみたいでお尻の頬をさすりながら痛がっている

「ごめん…」

「こちらこそすみません… ほんと私ってどんくさくて…」


目の前の少女はそう言いながら立ち上がると手を指し伸ばしてきた

「あの…大丈夫でしょうか?」

「気にしないで…」

「あ、でも…」

自分でもそっけなくて感じの悪い態度だなと思いつつ一刻も早くこの場を立ち去ろうとそのまま立ち上がった


「あの… もしかして小林真凛さんですか?」

「っ…」

その一言で背筋が凍った

まさかこんなタイミングで私を知ってる相手と出会うなんて…

なんて言い訳しようかと恐る恐る相手の見ると少女は言った

「あの… 気を悪くされたらすみません… 私、去年もあなたにぶつかってしまった結城彩羽です… さすがに覚えてないですよね…」

「えと… ああ… あのときの…」

名前までは覚えていなかったけどそういえばそんなこともあったなと思い出した

たしかピアノの伴奏をしないかって先生に言われた日に会った子だ

以前よりも明るくなったみたいだけどたしかに面影はある…

「まさか二度もぶつかってしまうなんて… ほんとごめんなさい」

「謝らなくていいから… 私なんかにさ…」

深々と頭を下げる彼女にそういうと私は鞄を拾い上げてそそくさと立ち去ろうとした

「あのっ…」

「…なに?」

無視しようかと思ったけどさすがにそれは無理だった

振り返らずに彼女の呼びかけに立ち止まる


「小林さんにずっと言いたかったんです」

「…なにを?」

「あのとき、助けてくれて… ありがとうございました」

「……」

背中にかけられたその言葉に息が止まった

一年も前のそれもあんな些細なことにお礼を言われるなんて思ってもなかったから

そもそも私はそんなこと言われるような人間じゃないし…

けれど振り返った時には彼女はもういなくなっていた



72.5


「お礼は言えた?」

「うん、おかげで ありがとうね、こんなわがまま聞いてくれて」

隣に立つ親友にそう答えた

「別に 私は何もしてない」

親友はいつも通りそっけない態度でそう答える

「でも… なんだか様子がおかしかったような…」

「たしかにそうかもしれない、けどそれは彩羽が心配すること?」


たしかにその通りだ、だけど親友のその言葉はあまりにも他人事過ぎるような気がした

「でも…」

「今はやめておいたほうがいい」

「また…勘?」

親友は直感で物事を判断するタイプだしその勘が割とよく当たるから言われたら従うようにしている

「勘…なのかな 分からないけどいつもと違う感じがする それに彼女を心配するヒマがあるなら今は…」

「勉強…」

そう言われて手に持った参考書に目を落とした

「私と同じ学校に入るんでしょ?」

「……うん でも〇〇はいいの? あの人と同じ学校じゃなくて…」

「向こうのほうが偏差値低いし私が入りたいのはこっちだから」

親友はパンフレットに目を落としながらそう言った

「そっか… じゃあお互い頑張らないとだね」

「頑張るのは彩羽だけだよ 私は余裕だから…」


そう言っていたのに…

あんなことが起こったせいで… 

あの人が///せいで…


親友≒〇〇が同じが高校に進むことはなかった


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