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第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? 第六十八節

これが最初の過ち



それから一週間後、結局私はピアノを弾いている

先生から話を受けた翌日には答えを出していた

そもそも始めから決まっていたのかもしれない

私のクラスには私以外にピアノが弾ける子は少なかったし周りからの推薦もあったらしい

ピアノが弾けることを自分から話したことはない

ただコンクールでの優勝経験は以外にも自分の知名度wを上げていたらしい

そのせいもあってか断るに断れなかったのだ


「うんうん良い感じだよ みんなの声も纏まってるし」

「だよなこのままいけばウチが優勝じゃね?」

放課後の練習の後でクラスメートが話している

クラスメートといっても名前も覚えていない二人だたしか佐藤さんと鈴木くんだったかな

普段からそこまで前に出る性格じゃないからクラスメートとの交流は少ない

知夏もそうだけど部活とか他のクラスに友達がいるからぼっちじゃないし、逆にクラスには気の合う友達がいなかったってだけだ

こういう陽キャ特有のノリもついていけなかったし…


「てか真凛のピアノもちょー良い感じじゃね?」

「なにそれ 語彙力低すぎ でも真凛ちゃんのピアノが神なのはマジそれな 真凛ちゃんてもともとコンクールとか出てたんでしょ?」

「へ? ああ うん…」

心ここにあらずで聞き流していたらいつの間にか自分に話題が振られていた

自分には会話のターンが回って来ないと思っていたから普段以上に挙動不審になる

「すげー てか今もやってんの? 吹部と兼任?」

「今は…嗜む程度に…」

男子にまで声をかけられて視線を逸らす

まさかこんなことになるなんて… そう思いながらあのとき、安易にやるなんて言った自分を呪った

本当ならこんな場所、すぐにでも逃げ出すんだけど指揮と伴奏それから男女一名ずつの実行委員は放課後練習のあとは後片付けと反省点につついて話し合うきまりになっていた

反省といってもいつもこんな感じで実行委員の二人が適当にその日の練習を評価して終りになっている

もちろんそれだけでいいんだけどいつも抽象的でヤバいとか神とか言って終りだった


「真凛から見て俺らの歌、どんな感じ?」

「ああ、その… 良いと思う… 思います…」

男子のほうの実行委員、鈴木君たぶんにそんなことを聞かれて咄嗟にそう答えた

本当はまだ声が纏まっていないし声量も音程も言いたいことはたくさんあった

けどさっきまでの二人のやり取りのクラスの雰囲気的にもそんなことは言えなくて…

当たり障りのないようなことしか言えなかった


「だよな! 真凛のお墨付きももらえたしやっぱ俺らが優勝じゃん!」

「こら調子に乗らないの うちらが最強なのは事実だけどさ」

二人はそんなことを言いながら再び二人だけで盛り上がっている

愛想笑いでその場を乗り切りなんとか今日の練習は終わった


「あの…」

そのまま部活に行こうと教室で荷物をまとめていたらふと声をかけれた

「あ、えと たしか指揮者の…」

「はい 笹川詞姫ささがわしきです…」

振り返った先で立っていた少女はそう答えた

笹川詞姫、音楽祭で指揮者を担当することになっている

私と同じ陰キャって感じで練習している間もあまり意見を出さないタイプだ

それでも他のクラスメートからの支持があって指揮者になったらしい

「その… 今日の練習のことについてなんですが…」

「ああ、うん なにか気になることあった?」

彼女は怯えたようにそう言った

胸の前で手を組みながらもじもじとしている

「その 気になったこととかではなんですが… なんていうか…」

「悪いんだけど 私もこれから部活だからいいかな?」

中々、本題に入らない彼女にさすがにしびれを切らしてそう言った

「すみません… ただどうしても気になってしまって…」

「えっと だからなに…」

私が言い終える前に彼女は言った

「今日の練習、というよりも始まってからずっとなんですが… 私たちのクラス、一向に上手くなっていないというか… 改善すべき所をちゃんと話し合えていないというか…」


彼女の言いたいことはなんとなく分かった

たしかに私たちのクラスは他に比べて練習時間も少ないし纏まりも弱い

ノリと勢いだけでやっているそんな感じがした

「それで… 小林さん」

「なに?」

彼女は一度だけ深呼吸をしてはっきりと言った


「小林さん、手を抜いてませんか?」


「…え?」

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