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第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? 第六十二節

言ノ刃はいずれの歪を産むとも知らずに


その日の放課後、私たちは音楽室に集められた

綾乃と真凛、天城くんと珍しく大倉くんもいる

それからしばらくして二年の竹本先輩がやってくる

「ひさしぶり 蚊帳ノ達もあのバカに呼ばれたのか?」

「お、お久しぶりです その私たちは真凛に言われて…」

先輩に声をかけられて恐る恐る返事をした

ボーイッシュで背も高い竹本先輩は普段から近寄りがたい雰囲気があったけど今日はいつも以上に威圧感?がある気がした

「機嫌でも悪いのか?」

「別に ただなんの説明も無しに呼び出したバカに腹が立ってるのと呼ばれたのに返事もしないで集まろうともしない他の二年にキレてるだけだ」

大倉くんの問いかけに怒りを隠せない様子で先輩が答えた

たしかにまだ他の二年生は集まっていない

なんとなく自由な人たちだなと思っていたけどここまでとは…

これ以上怒らせたくないし大人しくしてよう… そう思った矢先だった

「それを機嫌が悪いっていうんじゃないのか?」

大倉くんが火に油を注いだのは


沈黙が流れる

大倉くんに指摘された先輩はそのまま何も言わなかった

論破されて『言えなかった』んじゃなくて自分から『言わなかった』んだと思う

むしろその沈黙が余計に緊張感を高めている

そんな冷戦状態の教室に蓮見先輩と双葉先輩が入ってきた


「お待たせ」

「…」

蓮見先輩はマスクをしていて何も話さなかった

代わりに双葉先輩が教卓の前にたちホワイトボードに何かをかき始めた

それから私たちのほうに向き直ると

「とりあえず何人も足りないみたいだけど始めるわ、内容は次の定期ライブについて」

「次のライブは二週間後だっんじゃないんですか?」

手を挙げて天城くんが質問する

次の定期ライブについてはもうすでに説明を受けていて私たちも練習や告知もはじめていた

本当なら今更、全体で説明を受けることなんてないはずなのに…

質問した天城くんだけでなくこの場にいる誰もが感じた疑問だろう

ただ一人を除いては…

「大方、そこのバカがライブに出られなくなったから中止とかなんじゃないのか?」

竹本先輩の声が響いた

それを聞いた蓮見先輩は申し訳なさそうに肩をすくめる


「まあそんなとこ こないだから風邪気味で喉が万全じゃないのにカラオケで何時間も練習したせいで声が出せなくなったのよ みんなには申し訳ないけど恋がこんな状態である以上ライブには出られない」

「はあ またこれか…」

双葉先輩の説明を聞いた竹本先輩は大きくため息を吐いた

「大体、恋が問題なかったとしても男子は出る気が無いようだし花音もやる気が見られない、本気でやってるのが一年だけなのはヤバくないか?」

「それとこれとは別でしょ? そもそも恋だって練習したからこうなったわけで…」

双葉先輩が庇うようにして竹本先輩の前に立った

「ボーカルなら自分の喉の管理ぐらいしろって言ったんだけど? そもそもこれで何回目?そのたびに雅さんや他の人にまで迷惑かけて…」


先輩たち二人のやり取りはまさに修羅場だった

蓮見先輩を責める竹本先輩と反対に護ろうとする双葉先輩…

厄介なことに二人の意見はどちらも正論で間違ってはいないことだった

だれも止めに入れないそんな状況の中で大倉くんが竹本先輩を制止した

「少し落ち着いたらどうだ? なんか向こうも話したいことがあるみたいだしな」

「話したいこと?」

大倉くんの一言でその場の注目が蓮見先輩に集まった

話すことができない蓮見先輩に代わり再び双葉先輩が話し始めた

「惠のせいで話しがずれたけどライブはするから」

「一年はともかくボーカル不在で二年はどうするつもり?」

口論をやめて一度落ち着いたからか竹本先輩の声はほんの少しだけ穏やかになっていた

(そんな気がした)

「実は真凛からの推薦で代わりのボーカルが見つかってるわ」

「朝霧に兼任させる気か?」

「私!?}

突然の指名に綾乃が驚く


けれど双葉先輩の違うわという言葉とほぼ同時に音楽室の扉が開いた


そしてまるでタイミングを図ったかのように彼女は音楽室に足を踏み入れる


「彼女が臨時で入ってもらうボーカル」


双葉先輩の紹介の後で彼女は…


「ユゥ・メイリンです 足手まといにならないように頑張ります!」


太陽のような笑みと共に彼女は言ったのだった


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