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第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? 第五十九節

宣戦布告 対決の誓い


失うものはもう何も…



「こういうのって普通は校舎裏が相場なのでは?」

重い鉄扉を開けた先、屋上にたつ少女に問うた

「相場ってなに? 校舎裏とか不良じゃあるまいし」

派手な金髪を靡かせて向かい立った少女は告げる


 その日、メイリンは朝早くに登校した

まだ他の生徒がいないような時間だ

部活の朝練もないのにこんな時間に学校に来た理由それは自らの登校方法にあった

心配性な父との約束で日本にいる間は必ず坂本が送迎する決まりになっている

一昨日の蓬とのデートはホテルに近いため大目に見てもらえたが毎日の学校はそうもいかない

ましてやリムジンさらには自分の知名度も理解しているメイリンにとっていたずらに注目を浴びるのは避けたかったからだ


リムジンから降りて校舎に入る

自分の名前の下駄箱で靴を履き替えようとしたとき一通の手紙に気がついた

宛名はないただ一言、屋上に来るようにとだけ書かれている

そしてメイリンはそれに従った


「告白でもする気ですか?」

「なにそれ自慢?」

軽く冗談で言ったつもりが相手の機嫌を損ねたようだった

もっともメイリンにも相手をからかう意思があったからお互い様だろうと思う

屋上のフェンスにもたれかかった少女はただ黙ったままこちらを見つめる


「蓬とのこと諦める気になりましたか?」

「こっちのセリフなんだけど」

怪訝そう睨む少女にメイリンは続けた

「本当はこのまま蓬と付き合うつもりでいましたが騎士の情けです あなたの気持ちも聞いてあげます」

「武士の情けでしょ? それにどうして上からなの?」

更に不服そうにする少女にメイリンは

「どうせ私と競ってもあなたに勝ち目がないからですよ それにこのまま諦めてくれるならバンドのことからは手を引きます」

これが自分にできる最大限の譲歩だとメイリンは掲示する

実質的な勝利宣言だった


客観的にみても一昨日の様子からして蓬が自分と交際してくれる可能性は高い

しかしその上で最大の障害となるのが小林真凛の存在だった

彼女がなぜ邪魔をするのか?


その答えは始めからメイリンにも分かっていた

厄介なのは真凛自身がそれに気が付いていないことそして


□□□もまた真凛に対する感情がゼロではないことだった


疑わしきは罰せよ…それがメイリンの基本方針である

故に今回も早々に真凛を潰すつもりでいた

そして計画は順調に進んでいたはずだった


メイリンにとっての誤算は蓬がバンドをはじめていたことそしてそのバンドにもうすでに自分が入る隙間がなかったこと

逆に言えばそれだけのはずだった


彼女すら見落とした誤算それは…


「それで?」

「ですから、あなたが蓬のことを諦めるなら・・・」

これ以上バンドに手は出さないと言いかけた所で真凛は言った


「アタシは蓬が好き」


「…認めるんですね」

「認めるもなにも始めからそうだったから」

今更隠す必要はないとでも言いたげに真凛は呟いた

「なら私と奪い合うってことでいいですか?」

「それじゃ埒があかないし蓬にも迷惑がかかるでしょ」

真凛の考えは比較的まともだった

メイリンと真凛、二人の関係がどうであれ二人が蓬にとっての○○であることに変わりはない

○○同士の喧嘩に巻き込まれるなんて蓬にとってはただのとばっちりでしかないしその原因が自分なら責任を感じてしまうだろう

もちろんそんなことをメイリンが許容できるわけもなかった


「それについてはあなたの意見が正しいです」

「あっそ」

真凛はため息まじりに小さく呟くと

「なら勝負しない?」

「勝負…ですか?」

「そう、アタシが買ったらアンタには蓬から手を引いてもらうしバンドの件も諦めてもらう」

「ならわたしが勝ったら?」

お互いの条件が対等であることを確認するために真凛に問うた


「もしもアンタが勝ったなら蓬とのことは好きにすればいいしバンドもやっていいよ」

「…バンドとは蓬に兼任してもらうということですか?」

それでは結局、蓬の負担が増えるだけだとそう言おうとした

帰れどその言葉は彼女の一言で遮られる

「アンタにはウチのバンドに入ってもらうその代わり、アタシがバンドを抜ける」

「正気ですか?」

耳を疑う発言に思わず聞き返した

しかし真凛は表情を変えずに言った

「本気だけど? それでやるの? やらないの?」

「あなたがそれでいいのなら断る選択肢はありませんよ」

こうして二人の間に契約は結ばれた


「それで勝負の内容とは?」


「次のライブ先輩のヘルプでアンタにも入ってもらうからそこでの対バン勝負でどう?」


「…分かりました ならそこで決着をつけましょう」


ひとりぼっちになった屋上

真凛は静かに決意を固めた


『今度こそライブを…ちゃんと… 成功させる」


第三章 コミュ障陰キャぼっちでもライブはできますか? (旧題反転)


改題  コミュ障陰キャぼっちでもライブはできる!

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