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理を統べる転生者~獣耳少女(嫁)を守ります~  作者: ナギ@にわか
生贄の子狐
25/30

24話『闇の欠片』

遅れました。ギリギリ2日以内……

今回は、シャルの過去(割と最近)です。


これは、シャルロッテの悲劇。


私達家族は、山の奥でひっそりと暮らしている。何処かに村もあるそうだが、探す手段がないし、今の生活が楽しいのだ。


今日は、シャルが得意としている炎を、両親に見てもらっているのだ。


「シャルは炎の扱いが上手いな……もう少しで、ミシェルも越えるんじゃないか?」


頭を撫でながら褒めてくれるのは、父であるエルドだ。狩りが得意で、顔がいかつい上に傷も多いが、見た目に似合わず優しいのだ。


「まだ少し粗い感じはするけど、1年くらい経てば……もしそうなったら、1ヶ月くらい引きこもらせて貰うわ。」


真面目な顔で阿呆なことを言っているのは、母親のミシェル。娘の自分が見ても綺麗だと思う程に整った容姿をしている。そして、シャルは母の容姿を引き継いでいるので、かなりの美人だ。金色の髪に、気弱そうな顔。身長も低め。

2人が並べば、姉妹でも通用するだろう。


もし、父親と似ていたなら、女の子?という反応をされること間違いなしだが。


「えっ?それは………いや、主婦なんだからいつも家に居るじゃねぇか!」


「あら?私だって偶には外を……あ、歩いてるわよ?多分……」


夫からのツッコミだけでは終わらず、シャルの呆れ顔まで頂戴してしまった。


「お母さん……」


「こ、これからは、ちゃんと外に出るわ。ホントよ?私、嘘つかない。」


思いっきり目を泳がせているミシェルを見て、2人はハモリながらこう言う。


「「ダウト!」」


「えー!?何でよ!」


ミシェルは嘘をつくのが下手なのだ。

そこもまた魅力だろう。と、エルドは過去に語っていたが。


だが、次の瞬間、2人は戦慄する事になった。


「もういいわよ……2人のご飯作ってあげな――」


「「ごめんなさい!!」」


ミシェルが言い切る前に、ハモった2人の謝罪の声が響き渡る。そして、ジャンピング土下座は冴え渡る。


「ふふっ。まったく、そんな事してないで家に入りましょ!」


軽く吹き出したミシェルは、そう言って家の中に入っていった。立ち上がって土を払うと、苦笑しつつも2人はミシェルに続く。


不便でも、幸せな日常。しかし、ある事が原因で、その日常は崩れ去る事になる。


数日後の昼。

炎を操る練習をしていたシャル。

魔法と違い、妖狐の炎は自在に操れる。まるで体の一部かのように。

そして、詠唱が必要ない変わりに、相当な集中力が必要とされる。


そのせいで、それに反応することが出来なかった。


「痛っ!うぅ……何これ?石?」


頭の上に落ちてきた黒い石。

この時拾わなければ、未来は変わっていたかもしれない。


「え?ああぁ!?体の中に入って……お、お母さん……!」


ダッシュでミシェルの元へ向かう。

掃除をしていたようだが、そんな事を気にしている場合ではない。


「どうしたの?顔色悪いけど……」


「なんか、拾った石が体に入って……」


しかし、そこには何も確認することが出来ないので、ミシェルも困ってしまう。


「後でお父さんに聞いてみないとね……」


その日、帰ってきたエルドにも伝えたが、何も判明することは無かった。


次の日。


「さ、炎を出してみて。」


結局、分からないことを考えても仕方ないので、普段通りに過ごす事にした。


「うん。……ふー。」


目を閉じてゆっくり息をしながら炎を出す。


だが……


「な、何これ!シャル、大丈夫?」


なぜ心配そうな声で呼びかけてくるのだろうか?そう思いながら、目を開くと、


「……黒い炎……?えっと、私は大丈夫だよ。」


昨日までは、普通の炎だったはずなのに、突然変わってしまったことに狼狽える2人。


「石のせいかもしれないわね……」


「そう、だね。」


理由も分からないせいで、不安に苛まれるシャル。ミシェルは優しく抱きしめるが、突然遠くで炎が見えた。


――ゴオォ!


「あれ、お父さん?」


「え、ええ、そうだと思うけど。というか、こっちに向かってきてないかしら……?」


ミシェルが首を傾げてから少し森を見ていると、エルドが出てきた。


「あ、お父さんどう…した、の?」


……血塗れの状態で。


普通に話しかけようとしていたシャルは青い顔でへたり込んでしまい、ミシェルは走ってエルドの元へ向かおうとする。


「……落ち着いて聞いてくれ。詳しくは知らないが、シャルが狙われてる。俺が相手をするから、お前達は逃げろ。」


当然、ミシェルはその話を呑むはずがない。


「で、でも、そんなに怪我してるじゃない……私も一緒に――」


「ダメだ!!」


エルドの言葉にビクッとする2人。

落ち着くために深呼吸をすると、諭すようにこう続ける。


「お前が居なかったら、誰がシャルを守ってやれるんだよ。俺なら大丈夫だ。さっきは油断しただけで、正面からやれば負けやしねぇ。」


その言葉が強がりである事はシャルからでも分かった。また、それが事実である事も理解しているミシェルは、俯いて葛藤していた。


しかし、敵は待ってはくれない。


「全く、逃げ足だけは速いですねぇ。で・す・が、それもここまで!丁度そこに、目的の小娘も居るようですし?」


「クソっ!もう追いついてきやがったか……ミシェル、シャル!早く逃げろ!」


「いや!逃げるなら一緒――」


シャルが反対しようとしたが、ミシェルが素早く気絶させる。そして、背中に背負って走り出す。


「ごめんなさい……こうするしか無いのよ……」


唇を強く噛んだせいで、血が出ているようだが、流す涙がそれを上回っている。


「どうしてシャルを狙うのよ……」


エルドが足止めしてくれている間に、逃げなければならない。


だが、敵が1人とは限らないのだ。


「教えてやろーか?」


「くっ、なんなのかしらね……」


ミシェルの言葉の意味は、どうしてここに居るのか、というものだったのだが、相手は教えて欲しいと受け取ったらしい。


「君が背負ってる子がさぁ、闇の欠片を吸収しちゃってるんだよね。何か変な力とか使えるようになってなかった?」


「そんなの知らないわ……」


そう言ってみたものの、ミシェルの脳裏には、シャルの出した黒い炎が映し出されていた。

だがしかし、闇の欠片というものは本当に知らないのだ。


「ふうん。まあ、いいけどー。それでだけどさー、その子を奴隷にして遠い所まで連れていくつもりなんだよ。それ以外は、不要。……意味わかるよねぇ?」


最後の一言を発した時から、目の前の男からは殺気が放たれている。


「つまり、あなたを倒せば問題ないって事ね。弱そうだし、楽勝だわ。」


露骨な挑発ではあるが、男は自分とミシェルの実力差を知っている。


「仕方ないから、乗ってあげよう。でも、怒らせる事は出来なかったみたいだね。」


ミシェルは、上手くいかなかった事に対して悔しがっている………表情を作った。


「そうそう、冥土の土産に1つ教えてあげよう。闇の欠片っていうのはね、魔神復活に必要な力の結晶なんだよ。僕達だけじゃなくて、魔族なんかも仲間には沢山いるのさ。」


魔神復活という言葉に驚いてしまうが、問題は無い。狙っていたのは、魔法を発動する時間を稼ぐ事。そして、ようやくその魔法が完成した。


「なんちゃって!気づかないとでも思った?残念だけど、最初から分かってたよ。」


ニヤリと笑う男に、嘲笑で返すミシェル。


「残念だけど、これで終わりよ。」


ミシェルの炎に対して、男は素手での攻撃。


勝者は、


「私の、勝ち、よ。」


「意味の分からないことを……」


ミシェルの腹には大きな穴が空いており、どう考えても負けだと思うだろう。


だが、それは、倒す事が条件の場合は、だ。

ミシェルの本当の目的は、強すぎる相手を倒すのではなく、シャルが奴隷になるのを防ぐ事だ。


使った魔法は、幻惑魔法という、妖狐の得意とするものだ。

効果は、奴隷術を使用しなくてもシャルを奴隷として認識する。かけた言葉の返答が、大人しく従っているように見える。暴力を振るわれても、若干の誤差が生じて、感触はあっても実際には触れていない状態になる。

これらがメインで、他にも細かく設定してある。


魔力はシャルから自動補給。

そして、この魔法が発動する条件は、奴隷に準ずる扱いをされる、蔑まれる等の行為だ。


ミシェルは、自分の為でも、敵を倒す為にでも無く、娘1人を助ける為だけに全力を尽くした。


「……幸せになってね……」


この日、シャルは両親を二人とも失ってしまったが、母の残した言葉だけを信じて、奴隷のフリをしながら逃げ出す機会を見計らっていた。



「うぐっ、それで、王都に着いて……ぐすっ、止められる人を探すために、逃げ出したんです……うぅ……」


最後の方は、ずっと泣きっぱなしのまま話してくれた。気絶中の記憶があるのは、母親の魔法の効果らしい。


「ありがとう。もう、大丈夫だぞ。さすがにそれをほっとく訳にはいかない。それに、信じて話してくれたんだから、応えてやらなきゃ男じゃないな。」


「……許せない。私も頑張る。」


「色々と疑問はあると思うけど、そんなのを許す事は出来ないかな。」


「主様が行くと言うなら、何処へでもついて行きます。それに、誤解でも主様を助けようとしてくれたシャルさんが、こんな目に遭うのは間違ってますよ。」


優しくシャルを撫でながら、俺に続き協力すると宣言する皆。

そのうち巻き込まれることになるかもしれないのだ。ならば、協力して早い内に潰しておく方がいいだろう。


「エニファの言う通り、シャルは俺を助けようとしてくれたんだ。正体がバレる危険を考えると、俺が協力するのは当たり前の事でもある。」


建前上はこれでいいだろう。

本当は、シャルが悲しくて泣いているのが見ていられないのだ。ただ悲しんでいるんじゃなく、憎しみや、絶望などの複雑な気持ちをその瞳に感じてしまった。


ならば、その顔を、笑顔1色に染めてやりたいと、そう思ったのだ。


「よかった……ナギサさん達が仲間になってくれて心強いです……!」


「任せろ、必ず潰してやる。シエラ、魔神について知っている事、教えてくれるか?」


「勿論いいとも。私だってそこそこ怒ってるから、出し惜しみはしないよ。」


すぐには解決しないだろう。

それでも、少しだろうと情報共有しておくのは大事なはず。

最後に笑うのは、俺達だ!

あー、色々と考えていたら訳が分からなく……

後々手直し入れます。

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