21話『ランクアップも一苦労』
ギルドマスターは馬鹿では無いので敵対しません。
「それで、なんでここに連れてきたんです?あそこで話せば良かったのに。」
現在俺達は、ギルドマスターの執務室にいる。
呼ばれた理由に心当たりしかないが、とりあえずは惚けてみる。
「あんな所で話したら、大騒ぎになるわよ……というか、分かってて言ってるわね。サイクロプス?グリフォン?そんなの、SSランクの冒険者が4人でようやく倒せる相手だわ。」
やっぱりそれですよねー。
ちなみに、ギルドマスターの名前だが、キャロルというらしい。ハーフエルフで若い見た目なの為、実は50代前半だとは思わなかった。
年齢の方は、当然、神眼で見たのだ。
「まあ、別に、無理に隠したい訳でもないですし、認めますよ。」
SSランクが束にならないとダメって言うのに驚きはしたが、大して問題は無い。
今は、人間やめますか?って聞かれそうな程にステータスがおかしい。職業Lvが上がると、更に酷くなるだろう。
「そんな魔物一体何処で……っていうのは聞いても、倒した後じゃ意味無いわね。なら、どうやって、1人で倒したの?」
どうして、1人でやっとバレているんだ!
トドメの一撃だけやったって言おうと思っていたのに、台無しだ。
「冒険者カードにはね、倒した魔物に与えたダメージの割合が示されているのよ。それで出てきたのは、100%……もはや恐怖を抱いているわ。」
「チッ……面倒な機能付けやがって……」
「渚沙君、落ち着こ。」
都合の悪い方に向かっていることに対して、つい舌打ちをしてしまったが、シエラに宥められた。
「はぁ、分かってるとは思いますが、手の内を教えるつもりはありません。試験に関係なく実力が知りたいと言うなら、ランクアップもしなくていいです。」
「それは、試験であれば、構わないということかしら?」
何を言ってるんだ、この人。
「それはもちろんです。実力を知られたくないから試験を受けない、なのにランクアップはしたいなんてアホな事は言いませんよ。」
何故か、ちょっと驚いている。
「グリフォンを倒すくらいだから、無条件でSランクとかには出来るのよ?」
なんと、そうだったのか。
だとしても、受けるべき試験を受けないと、狡をしている気分になるのでそれはない。
「うーん、ランクを上げる事で、何か得ってありますか?」
こう、ほら。買取の上乗せとか、宿が安くなったりとか。
「そうねー、依頼の報酬金額が高いのは当然として、君くらいの見た目でも舐められなくなるわね。Sランク以上になると、貴族みたいな扱いになるわよ?ま、SSSランクは現在0だけどね。」
結構、いいんじゃないか?舐められなくなるってところが。
「貴重な戦力だもの、しっかり確保させてもらうわ。」
そうだなぁ……
「じゃあ、Aランクまであげたいんですけど、どうすればいいですか?」
「あら?随分控えめね。若い男の子だと、SSSランクを目指す子とかもいるのに。」
そんな事言われても、面倒事の臭いしかしない。とはいえ、高ランクっていうのに少しだけ惹かれたのは事実だ。
まあ、自慢出来るかな?ってラインのAランクにしておいた。フィエナにも格好悪いところは見せられない。
「どうせなら、もう少し落ち着いてからにしますよ。」
面倒事が無くなった後とか。
「じゃあ、楽しみに待ってるわ。で、Aランクだけど、試験を1回だけ受けてもらうわ。方法は……模擬戦よ。」
「ですよねー。」
だろうなって、思ったよ。
☆
「おー、君が試験を受ける子だねー?うんうん、カッコイイし、真面目にやろうかなー。」
試験の人、緩い感じだな。
美人なので、少しだけ戦うのに抵抗がある。
「名前はメイっていうの。こう見えても、Sランクなんだよー?思いっきり来て良いからね。」
俺の思いっきりは、即死すると思う。うっかり殺しそうで怖いので、ステータスを300000程まで下げる。ただし、HP、MP、VITは下げないでおこう。態々危険を増やす必要は無いからな。
それはともかく、試験の為に武器を選ぶのだが、刀はさすがに無かった。剣にしよう。
「腰にあった武器と違うと思うんだけど、大丈夫〜?僕は普段通りに槍を使うよー?」
ボクっ娘!シエラが近いけど、一人称は私なんだよな。凄く新鮮だ。
「大丈夫だ、剣も使えるからな。それじゃ、よろしくお願いします!」
俺はメルに対して挨拶をすると、構えをとる。
「Aランク昇格試験……開始っ――」
受付嬢さんが合図をした直後に走り出したメル。それに備えるべく、槍に集中する。
「えいっ!」
何とも気が抜ける掛け声と共に突き出された槍だが、声とは裏腹に鋭い一撃。
リーチを生かした喉への先制攻撃だったが、辛うじて左へ避ける事に成功。
槍を引き戻したメルは、その勢いを利用して回転。遠心力のついた槍を、そのまま薙ぎで叩きつけてきた。
今度は避けないで弾くと、メルは一旦距離を置こうとする。
しかし、それは悪手だ。速さが売りの俺に対してとる行動としては。
「うわ!?」
縮地を使って素早く近づいた俺は、槍を掴み、剣を突きつける。
「参りました〜……」
「勝者、渚沙君ね。」
キャロルが端っこで見ていたのだが、メルの負け宣言と同時にこっちに来た。それと、フィエナ達も一緒だ。
「君、強過ぎない?負けるのが早すぎて、自信無くなっちゃうなー。」
ちょっとだけ、終わらせるのが早かったかもしれない。手加減は良くないかと思っていたので、容赦なく行ったのだがダメだっただろうか?
「この子に関しては仕方ないと思うわよ?運が悪かったと思って、諦めなさい。」
おい、俺は自然災害か?全く、失礼なやつだ。
「で、更新は既に終わってるわ。間違いなく、合格するだろうと思っていたもの。普通は負けるのだけどね……」
「そりゃ、どうも。」
へへーって感じで受け取り、見てみる俺。
色は赤という、目立つものだったが、そのおかげで分かりやすいだろう。
「……やった、ね。」
「ああ、無事にランクアップ出来たな。」
そうやってフィエナと笑い合っていると、シエラ達がこう言ってきた。
「良いなあ、私も共有したいなぁその気持ち。」
「どんどん倒しましょう!」
シエラは羨ましそうに、エニファはやる気に見ている感じだ。特にエニファは頼もしい。
「僕達は戻るから、ばいばーい!」
最後まで緩い感じの人だったな。というか、ギルマスは説明せずに帰るのかよ。
とりあえず、出るか。
そして、建物から出る前にこんな事を聞いた。
「あいつ、ギルドマスターと話してたみたいだけど、実は強いのか?」
「もしかしたら、どっかのボンボンって可能性もあるぞ。」
「何でいい女を3人も連れているんだ!顔か?金か?力か?」
前2人の無難な考察はともかくとして、最後の奴にはこう言いたい。
俺が聞きたいくらいだ、とな。
で、俺がランクアップしたのを知らないのは、試験を知らせないように頼んだからだ。変に勧誘されても面倒だし。
という訳で、なんの問題もなく出ることが出来た。王都なだけあって、治安も悪くないらしい。
「次は何処に行くか……つっても、何が何処にあるかも知らないんだよな。」
「……適当に、見て回る?」
……それしかないよな。
「宿を探しつつ、面白いものを探すか。」
☆
結局、広すぎて回れなかったわ。
時間は既に6時になっている。仕方ないので、見つけていた宿に向かった。
「いらっしゃいませ!ふむふむ、お泊まりですね?1人部屋が2つ、2人部屋も2つ、4人部屋が1つ空いてますけど、どうします?」
やめろ、期待の眼差しを向けるな。
「あー、うん。4人部屋でいいよ。」
女の子が「本当に!?」って言ってたり、食事をしている連中がこちらを振り向いている。
しかし、予想外の声がかかった。
「……2人部屋が2つでもいい。」
一同が、「え?意味あるのそれ?」という疑問を抱いているようだ。そのままにしておけばいいのに、シエラ達は余計なことを言う。
「2人になって、何をするつもりなのかなぁ?ねえ。」
「そうです。一体何をなさるつもりで?」
不穏な空気……そして、致命的な一言が!
「……何とは言えないけど……愛してもらう。……ふふっ。」
「「ダメです!」」
恥じらう仕草をするフィエナを見て、ほぼ全員(男)が敵意を向けてくる。
「騒がしくてすまん。4人部屋で大丈夫だ。」
「えっと……本当に良いんですか?」
未だに言い合っている3人を見てそう聞いてくる。恥ずいわ。
「おい、静かにしないと……お仕置きするぞ?」
「「エッチな!?」」
違う、断じて違う。
「……冗談はこの辺にしておく。」
「冗談だったのかよ……ほら、早く行こうぜ。」
とりあえず三日分の代金を払い女の子から鍵を受けとったあと、引き留められた。
「私、マナって名前なんです。泊まってる間仲良くしましょうね、ナギサさん。」
ふむ、実に好奇心に満ちた目だ。
「ああ、うん。よろしく、マナ。」
若干疲れた顔をしながら部屋に向かっていく俺。食事に来るのががダルいと思うのは初めてだ。
「あ、部屋綺麗ですね。」
2500ミル取られてるし、綺麗じゃなかったら文句を言っているところだ。
いや、無限収納に入っている数千の魔石を売ればお金の問題はないので、その程度でクレームを入れたりしないが。
「ベッドがふかふかだねー……すぅ…」
「寝る前に飯を食いに行こうな?」
そのまま寝てしまう前に、食事に行くべきだろう。素早く体を起こさせる。
「食べる……ご飯ー……」
連れていくのが大変だったと言っておこう。
☆
「皆Sランクになれるよなぁ……」
「……皆って、私達?」
そう、フィエナ達だ。
「Sランクのメルは、ステータスが大体35000くらいだったからな。エニファはもう少しLvを上げないとダメだろうけど、すぐになれる。」
「でも、主様はAランクにしたんですよね?なら、私も同じが良いです。」
「……私も。」
まあ、なれるっているだけだ。
ちなみに、シエラが混ざってこないのは寝ているからだ。部屋に戻ってきて早々に、ベッドへ直行していた。
「良さげな狩場があったら、ランクアップ出来るようにしておくか。」
「楽しみですね……ふわぁ……」
ん?エニファも眠いのか。
「……シエラが端に寝てるね……おかげで、隣を奪い合わなくて済む。」
「え?俺も端っこに……」
言い終わる前に2人から腕を掴まれた。
ベッドは4つあったのだが、一緒に寝る為にくっつけたのだ。なので、端で寝ないと2人に挟まれるのだ。
グイッと引っ張られて、準備していたエニファとフィエナの間に入ったのだが、どう考えても寝れる気がしない。
「……エニファ、もう寝てる。」
「本当だ。……馬車を引いたり、騒いでたり忙しかったもんな。」
俺を挟んでエニファを撫でているフィエナを、俺が撫でるという状態になった。
だが、フィエナは撫でるのをやめ、顔を近づけたまま目を閉じる。
キスして欲しいと言う事だろう。
「……んっ」
望み通りにキスをすると、微笑みながら俺の頬を撫で始めた。しかし、フィエナも眠かったようで、だんだん手が滑り落ちていく。
じゃあ、俺も寝るか。
10分後。
……………ダメだ、寝れねえわ。
『気配隠蔽』発動。
そーっと抜け出し、窓から外に出る。
3人に囲まれたせいで、逆に目が冴えていた 。
こんな時は、夜の散歩をするに限るな。(異論は認める)
「明るくなる前には戻らないと……」
しかし、この散歩をしたせいで、面倒事へと巻き込まれる事になった。……それが悪いことかどうかは後で分かる。
見事Aランクになりました。
Sランクはならなくてもいいけど、低いのはちょっとカッコ悪い……という、17歳らしい思考ですね。
さあ、夜のお散歩で何が起きるのか!




