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第四十話

今回はお父さん回です。ではどうぞ!

「できたぁ」


 お母さんから貰ったハートの型を使って、ボウルに入ったチョコを型に流し込んだ。うん、良い感じ。

 私はステンレスボウルを置いて「ふぅ」とため息を吐いた後、額に湧き出た汗を拭う。そして、型に入れたチョコを見つめる。


 一段落ついたぁ。本当は今日デコレーションしたかったけどもう遅いし、固まっていないから無理そう。お母さんみたいに『好きです』の文字いれてみたかったなぁ。


 うーむ、よし、決めた! 明日早起きしてデコレーションしよう。


「後は冷蔵庫に入れて固めれば完成だ!」

「あら、なかなか良い感じじゃない!明日デコレーションしたら渡せるわね」

「うん、だから明日早起きしてデコレーションしようかなって思っているんだ」

「張り切るのは良いことだけど、あまり無理はしないことよ」


 母の言葉を胸に刻み、「うん」と頷いた。


「ありがとう、お母さん。今日はこの後手紙を書いたらすぐ寝るから」


 私の言葉に何度も瞬きして、目をぱちくりさせる母。すぐにクスッと笑う。


「あら、手紙ね。いいじゃない。春也君って子に伝わるといいわね」

「うん、そうなるように頑張ってみる」


      *


 チョコレートを冷蔵庫に入れた後、急いで二階に駆け上がり、自分の部屋に入った。近くに秋夜の部屋があるから、扉を開け閉めする時は慎重に行動。ふぅ、何とか自分の部屋に戻ってこれた。


 椅子に座り、机と向き合う。よし、後は手紙を書くだけ! 頑張るしかない。そういえば便せん持っていたっけ? ええと……。


 私は机の引き出しや棚をまさぐり、便せんを探す。ゴソゴソと探し、お。あった、あった。


 さてと、書きますか。ペン立てからシャーペンを取り出した。うーん、なんて書こう。とりあえず今の気持ちをそのまま手紙に書こう。春也が読んでくれるか分からないけど、私の想いを全てぶつける。後悔しないためにも。




 考えながら書き直しを繰り返してどれくらい経っただろう。

 うーん、参ったなぁ。手紙を書く行為がこれほどに難しいなんて。途中までは良い感じに書けたけど続きが思いつかない……。

 するとコンコンと扉がノックされる音が響く。こんな時間に誰だろう。


「はーい、どちらさまですか?」


 ドアノブが回り、扉が開く。そこには、マグカップをのせたトレーを持ったお父さんがいた。


「お邪魔するよ」

「お父さん!? どうしたの?」


 私は思わず目を見開いた。まさかお父さんがここに来るとは思っていなかったからビックリ。


「夜遅くまで手紙を書いていると聞いてね、ホットミルクを持ってきたよ。これを飲んで一息つきなさい」

「お父さん、ありがとう」


 私はお父さんからホットミルクを受け取ると、一口流し込む。


「おいしいよ」

「それは良かった。零時を回っても書いているみたいだから少しでも力になれたらと思ってね」


 お父さんの言葉で壁掛け時計に目を向けると、深夜零時を過ぎていた。もうそんな時間になってる!?


「そっか、もう一時間も経っていたんだ。何を書こうか悩みながら書いていたから気が付かなかったよ」

「頑張るのは良いことだけど、無理はいけないよ」

「うん、分かった。程々に頑張るよ」

「麻奈、思ったんだけど、春也君って子と喧嘩したって本当かい?」

「それは……その……」

「ここ最近表情が曇っていることが多かったからどうしてだろうと気になってね。ただの喧嘩じゃないんだろう?」

「うん、実はね……」


 私はこれまでの経緯を全てお父さんに話した。何があったのかを。全て。


「ということがあってね、それで手紙を書いていたの……」


 お父さんは黙って頷きながら、「なるほど」と呟いた。


「そっか、そういうことがあったんだね」

「うん、そうなの。手紙だって今書いている内容でいいのかなって、春也に伝わるのかなって不安な所があって……」

「麻奈、見せてみなさい」

「え、ああ、うん。これだけど……」


 私は書きかけの手紙をお父さんに手渡す。

 お父さんは読みながら何度も頷いている。


「良い手紙じゃないか。麻奈の気持ちがこもった素敵な手紙だね。春也君はどう思うか分からないけど、充分相手に伝わる手紙だと思うよ」

「本当に!? お父さん、ありがとう……」

「麻奈、いいかい。手紙というのは『送りたい相手を思いながら書いて届ける贈り物』なんだ。大事なのは麻奈が春也君を笑顔にしたい、喜んでほしいという気持ちだ。その気持ちを忘れなければ、きっと相手に届くよ」

「お父さん……」

「麻奈は何が駄目だったか気づける優しい子だから、何があっても前に進められるよ。きっと、大丈夫。自分を信じなさい」


 父の言葉に、涙が溢れてくる。マグカップの持ち手に自然と力が入る。


「私一人だけじゃここまでこれなかった。梨子や花梨、お父さんやお母さんに秋夜。周りの人達がいてくれたから、支えてくれたからここまでこれたと実感してる。ありがとう、お父さん」


 お父さんは嬉しそうに笑ってくれた。


「こちらこそだよ。麻奈がいるからお父さんは頑張れるんだよ。夜更かしのしすぎは気をつけなさい。程々に頑張るんだよ」

「うん、頑張るよ! ホットミルクありがとう!」


 お父さんはトレーを持って部屋から退出した。お父さんの言葉に元気を貰った。よし!

 私はホットミルクを一気に飲み干した。


「よぉし、頑張るぞ!」


 机と再び向き合い、手紙の続きを書き始めた。


      *


 日付が変わり、翌日になった。早起きしてデコレーション出来たのはいいけれど、丁寧に包む時間なかったからラッピングが失敗しちゃったな。


 ふぁ~あ。眠い。夜遅くまで手紙を書いていたからかな。あまり眠れなかったな。一応ラッピングしたチョコと手紙、両方持ってきたけど渡せるかなぁ。


 いつものように下駄箱で靴から上履きに履き替えている時だった。

 誰かか駆けてくる足音が聞こえる。廊下は走っちゃいけないんじゃあ。と思っていたら。


「三河! ここにいた!」


 現れたのは息切れしながら走ってきた朱鐘君だった。


「朱鐘君どうしたの? ここにいたって言われても……私登校したばかりなんだけど……」

「そうじゃない! それどころじゃないんだ!」

「え、ど、どういうこと?」

「待ってくれ、少し落ち着かせてくれ」


 そう言って深呼吸を始める朱鐘君。しばらくして呼吸が落ち着いたのか、私の目を見た。


「三河、まずいことになったんだ。大変なことが起きた!」

「大変なことって?」


「春也の引っ越しが突然早まって、今日引っ越しすることになったんだ!」

最後の怒涛の展開です。どうなるかは乞うご期待!

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― 新着の感想 ―
家族総出で協力してくれる展開……まさに最終章。 これで思いが伝わらなかったらさすがに泣くぞ、と思いきやそれが現実になっちゃいそう!? ちなみに私は、ラブレターは親に見せらんないなぁ。 ちょっと恥ずか…
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