第三十八話
三河家パーティー回です。楽しみながら執筆してました。ではどうぞ!
私がパーティー用の料理を追加で作り始めた時には、ご近所さんなど数十人がリビングや庭に集まっていた。リビングを見回し、料理は足りてるか確認。うん、今のところは大丈夫そう。
というか、お父さんやお母さんはともかく、秋夜も手伝ってくれてもいいんじゃないの!?
そう思って弟の姿を探すと、いた! 同級生と楽しそうに、はしゃいでいる。うん、まぁ、笑顔が戻ったみたいで安心。今日はお母さんの退院祝いを祝したパーティーだし、今日のところは勘弁しといてやるか。
ついでにお父さんとお母さんの姿も確認。それぞれ知り合いと談笑してる。
――バレンタインの前と後で比べたら考えられないくらい随分明るくなったなぁ。
お母さんは前までは私を家族と思ってくれなくて無視したり、秋夜に天才に育てるために勉強を強要していたけど、考えを改めて改心してくれた。おかげで私も秋夜も本当の自分をお母さんに見て貰えた。お母さん自身も英才教育をしなくなって普通のお母さんに戻ったって感じがする。
秋夜はお母さんに英才教育をさせられて苦しんでいた。本来なら姉の私が止めるべきだったのに、お母さんに相手にすらして貰えなくて止められなかった。でもあの二人のおかげでお母さんと和解も出来たし、秋夜もやりたいことをやらせて貰えるようになった。
お父さんはお母さんが英才教育に力を入れるようになってから、どこか寂しそうな表情で見てるように思えた。多分実際にそう思っていたんだと思う。あのお父さんのことだからお母さんの暴走を何度も止めようとしたはず……でも悪化していったことからなかなか思うように説得出来なかったんじゃないかな。でも病室の一件でお母さんが改心してくれたから、安心したんだろう。お父さんの本当の笑顔が見れた気がする。
三人共笑顔が増えて楽しそうに過ごしている。
後は私……! 私自身も変わらないと! そして、春也と仲直りするんだ。
って、今はパーティーだ。パーティー用の料理をどんどん作っていかなきゃ。
私は「よし!」と力強く頷いた。頑張るぞ。
おたまを片手に、寸胴鍋で煮込んでいるスープをかき混ぜる。お、いい感じ?
「麻奈、どう? 料理は進んでる? 間に合いそうかしら?」
と、お母さんが様子を見に来てくれた。私に寄り添うように隣に立っている。
私はかき混ぜていた手を止める。
「もうすぐ次の料理が出来上がるよ! もうちょっと待ってて!」
「頑張ってるわね」
お母さんはそう言ってにっこり笑う。
歩き出したからパーティーに戻るかと思っていたら、棚に置かれてあるエプロンを手に取った。そしてエプロンをつけ始める。
「一人じゃ大変でしょう? お母さんも手伝うわ」
えっ。今なんと? 手伝うって言った?
「そんな! お母さんは病み上がりなんだからゆっくりしてて! 料理は私一人でも大丈夫だから! パーティー楽しんでて!」
「充分楽しんでいるわ。今は調子がいいから大丈夫よ」
そう言って包丁手に持って人参を切り始めるお母さん。
「お母さん……」
「それにね……」
お母さんは手を止めると、私の方を見る。
「こうして麻奈と一緒に料理作ってみたかったの」
ニコッと笑ったので、私も微笑み返した。
「うん、私も!」
「何、姉ちゃんとお母さん、なんで笑い合ってるの? なんかいいことでもあった?」
弟の秋夜がお皿片手に持って現れた。めっちゃ食べてるじゃないの!
私はきょとんと目をぱちくりさせた後、笑うお母さんと目が合った。
「ううん、なんでもないよ」
「そう、なんでもないわ」
秋夜は納得いかないみたいで、「えぇ!」と叫び声を上げた。
「なんだよそれー! 逆に気になるじゃん!」
「だーかーらー、本当に何もないの!」
ただ料理していただけだって! これで納得して……なさそうだな。
秋夜、何か考え事してる。数秒黙り込んだと思ったら、何かに気づいた顔に変わった。
「あー、分かった! ハルにぃのことでしょ!」
「なんで、そうなるのよ!」
というか、ハルにぃって言ってもお母さん分からないでしょうよ!
「ハルにぃ? ハルにぃって誰のことかしら?」
ほら、見なさいよ! お母さん首傾げているじゃない!
弟は目をぱちくりさせて「あれ?」と呟く。
「お母さんハルにぃ知らなかったっけ?」
「ハルにぃって呼んでいるのはあんただけよ……、それ知らないお母さんに通じる訳ないでしょ……」
「ハルにぃは姉ちゃんの好きな人だよ!」
はあぁ!? ちょっと!
「秋夜、なんで言うの!?」
まだパーティーの真っ最中でしょ! 他にお客さんいるのに何で言うのよ!
恥ずかしすぎる! 今頃恥ずかしくて顔が真っ赤になってると思う。
バラした張本人は、腹を抱えて笑っているし。
「いいじゃん、どうせバレるんだし」
「よくない! 家族だけならまだしも、パーティーみたいな周りに他の人がいる中で言われると恥ずかしいじゃない!」
「というか、お母さんはハルにぃに一度会ってるよ!」
「ちょっ、話聞きなさいよ!」
やれやれ……、困った弟だよ。ホントに。
ふとお母さんの方に目を向けると、腕を組んで考え込んでいる。と、何かに気が付いたみたい。
「もしかして、以前病室にいらっしゃった、春也と呼ばれていた男の子かしら?」
「そうそう! その人! で、姉ちゃんの好きな人ね!」
「だーかーらー、秋夜ってば!」
私の秋夜の言い合いに見かねたのか、お父さんがやって来た。
「まぁまぁ。麻奈、気持ちは分かるけど、一旦落ち着こうか」
「お父さん……分かった」
お父さんに宥められ、深呼吸して心を落ち着かせた。ふぅ、大丈夫。
ん? なんだ、なんだ? 招待客が集まって来たけど。
「へぇ、麻奈ちゃん好きな人いるんだ!」
「どんな子が好きなの!?」
「今度おじさんに紹介してくれよ」
招待客の質問攻めに、私は「あはは……」と苦笑い。思わず、弟の秋夜を睨みつけた。
「秋夜、あんたのせいだからね!」
「いいじゃん、俺悪いことしてないし」
クソガキめ……! 腹立つわ。
お父さんが壁に掛けられた掛け時計に目線を移した。
「時間も時間だ、そろそろお開きにしようか」
三河家初めてのパーティーは、にぎやかに幕を閉じました。
この後どうなるかは乞うご期待! お楽しみに!




