始まり1
クレアとゼルクは、暗黒獣カルゼリオンから逃げるために、全力で走り続けた。
「さっきも走ったばっかなのにー!」
クレアは文句を言いながら走る。
「…あ!出口が見えた!」
見ると少し遠くに小さな光が見える。そこに行けば、おそらく森から出られるだろう。
二人は息を切らしながら行く。
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「ああ、やっと抜けられた…」
クレアは下を向き中腰になっていた。
汗は自然と頬をたどって下に落ちる。
クレアのバテた姿を見てゼルクは思わず声に出す。
「疲れすぎだろ」
「……え?」
「いや、なんでもない」
「…にしてもあの魔物、なんであんな森にいたんだ?」
「分からない…なんでだろう…」
そんな事を言っていると、馬に乗ったある商人が手を振りながらこちらに近づいてきた。
「おーい。君たち、汗だくじゃないか。どこかに行こうとしているのかい?」
おそらく疲れ果てている二人を見つけて心配になったのだろう。商人は馬から降りる。
クレアは一瞬戸惑ったが、ゼルクを見てから商人に近づく。
「あの、私達都市プロメヌスに行こうと思っているんです」
それを聞いて商人は驚いた顔をする。
「都市プロメヌス…君達、本気で言っているのかい?!」
「え?」
クレアとゼルクは顔を見合わせる。
「本気って…何か問題でもあるのか?」
「ああ!なにせ今そこは魔物の群れが毎日のように来ているんだ。もし君達が都市に着いても…きっと、被害に遭う可能性は高いと思うよ」
諦めろ、とでも言いたいかのように、商人は強く言う。
しかしゼルクは、商人の言い分をまるで聞いていなかったかのように商人の目を見た。
「悪いが、俺たちはその都市に行ってどうしてもやりたいことがあるんだ」
じっと見つめられ、やっとゼルクの意志が伝わったのか、商人は小さなため息をついた。
「はあ…もう、何があっても知らないからな?」
そう言って、馬が引いていた車の端の荷物を退ける。
「はい、じゃあここで我慢しててくれ」
「まさか乗せてくれるなんて…」
端に座ったクレアが小さい声で驚いたように呟く。
すると商人は、後ろを向いて二人を見る。
「ああ、先に言っとくが、俺が乗せて行けるのは都市の少し前までだ。流石に、俺の愛馬を魔物に食われちゃあ、元も子もないからな」
「それだけで十分だ。感謝する」
ゼルクは少し笑う。
ゆっくりと馬が歩き出す。
静かに揺れる馬車。
優しい風が髪を揺らす。
二人は、着実に都市プロメヌスへと近づいていく。




