始まり
「で、どこに行くの?」
クレアとゼルクは都市から離れた森を歩く。
「まあ、まずは情報集めるか」
「情報…」
「都市プロメヌスはどうだ?あそこなら古代の書物も多い」
「きっと天地戦争の歴史も載っているはずだ」
「うーん。プロメヌス…どこかで聞いたことがあるような」
クレアは腕を組み首を傾げる。
「神プロメヌスだろ?」
「ああそうだ!人神プロメヌス!…あれ、でもなんで都市の名前に…」
「各種族最大の都市の名前は、神と同じって…あれ、もしかして知らなかったか?」
「え?いっいや!知ってたよ?」
手を振って完全に誤魔化そうとする。
「お前、本当に何も知らないんだな」
ふっ、と軽く笑うように言う。
「でっでも、都市プロメヌスに行ったら分かることが増えるんでしょ?」
「多分な。でも、書物が残っていたらの話だが…」
「なあクレア。竜種についての事とか自分のこと、本当に何も知らないのか?」
「ごめん、私は何も知らないんだよね」
申し訳なさそうに少し声を小さくする。
「…そうか」
小さく頷いた後、ゼルクは歩きながら空を見上げる。
雲ひとつない、透き通った青色。
「本当は、神に聞くのが1番早いんだけどなあ」
独り言のような小さな声。だが、クレアの耳には届いていた。
「神…ゼルクは見たことあるの?」
ゼルクを覗き込むようにして聞く。
「見たことないな」
「そもそも、獣族に神はいないし…」
「いない?なんで?他の種族にはいるのに」
クレアはびっくりした顔でゼルクに問う。
「これはただの言い伝えなんだが…」
「天地戦争で獣神は竜神を討った。だが、獣神も無傷という訳ではなかった。当然傷も負ったらしい。そしてその傷を癒すために現在までも長い眠りについている…という話」
「なるほど」
クレアは頷きながらゼルクを見る。
「でも…おかしくないか?普通、神は信仰者がいる限りは不老不死、というか、傷なんてどうにでもなるはず。なのになんで長く眠っているのか…竜神がただ単に強かったからか?いや、でもそんなことでは…」
「そういう事も、きっと都市に着いたら分かるようになると思うよ。それで…」
クレアがいきなり止まる。
「ん?どうし…」
一瞬、ゼルクの髪が少し揺れる。
見ると、森の木々を押しつぶして“何か”が二人をじっと見ていた。
「ゼッ、ゼルクこれって…」
ゼルクの顔が青白くなっていく。
「間違いない。こいつは暗黒獣カルゼリオンだ…!」
(なんでこんな森にいるんだよ…!)
一滴、また一滴とゼルクの額から汗が垂れる。
「クレア!逃げるぞ!」
クレアを見ると、口をあんぐり開けて固まっている。
「…………たのに!」
クレアは何かを言った。だがその時目の前には伝説ともされている魔物。もちろんゼルクにクレアの声は届いていなかった。
クレアとゼルクは全力で走る。
幸いにも、暗黒獣は追いかけては来なかった。
それでも、この森から出ようと必死で走った。
「なんでこんなところにいるの?!」
「わからねえ!」
息を切らしながらも、二人は必死で走り続けた。




