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落星物語  作者: 間々 ようこ
旅程
6/42

理由

「ネイファンには宿坊がいくつかあります。希望して選ぶことも出来るけれど、あなたは私とこれから寝食を共にしてもらうわ」

 星はころころ笑って、肘掛けに体をもたれさせる。横に女性が二人座っていて、一人は年増で一人は老女だった。彼女たちは上等の赤い衣をまとっていた。

「珍しいかしら、赤衣しゃくいよ」

 星は横の女のも裾を指して、「この色が濃いほど位は高く、薄れるほど低くなります。宮中の女官の正式な着物よ。でも最近は、何か式典がないと皆着ません。その代わりに、耳飾りと領巾で色を現します。その方がきれいだから」

 いたずらっぽく星が笑う。

「でもこの者は王妃付きだからと肩肘を張っているのです」

「王妃さまが恥をおかきにならぬようにとのことです」

 老女が口を開く。

「あら、私がどうして恥をかくの? 後宮は私のものなのに」

「まあ!」

「ばあやはうるさいのよ。先生は、そんなことおっしゃらないでしょう?」

「わ、わたしはただの家庭教師で、ですもの。な、なにも」

「つまらないわねえ」

 ため息をつく星を、貴子は優しい目で見つめながら、内心ずっと観察を行っていた。天真爛漫というか、すこし自由が過ぎるように思えた。

 きれいだけれど、それだけだ。ときめくほどのことはない。

 そう思っていても、折に触れて心に感じるときもあり、貴子は困っていた。

 例えば彼女と目が合うたびに体が熱くなったし、彼女が髪飾りを指でいじるたびに唇が濡れた。

 こんなことは、未だかつてなかった。

 この感情がなんであるのか、貴子は気づかない。せいぜい欲をかいているのだぐらいにしか、彼は考えていない。

(欲望に忠実になれと誰かがささやいているようだ)

 誘惑などには負けない。貴子は咳払いをすると、礼をした。

「わたしをなぜお側にお呼びになられたのですか?」

 訊ねると、星の部屋がしんとなった。

「わたしは産まれてからずっと仮宮で過ごしているでしょう? 皆私に従って、思い通り。でもあなたは、少し違って見えたの」

「違う?」

 星はすっと立ち上がり、貴子の前に立つと、耳たぶに触れそうじゃほど唇を近づけ、ささやいた。

「反逆者の目よ」

 ぎくりとする貴子の横から、星は体を離す。

「昔、十五年ほど前に反乱が起きました。前王は女性で、現皇王の実母でしたが、時の摂政秀弓がこれを軽んじ国政を思いのままにしていました。それを是正した我が父楽章をうらみ、秀弓は反乱を起こしたのです」

「それと私がどう関係するのです?」

「あなたも、王宮をかき回しそうよ」

「それをお望みなのですか?」

「つまらないのよ」

 いぶかしげに貴子は星を見上げる。

「つまらない」

 再びつぶやいて、星ははらりと涙を落とした。

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