表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/21

「梓乃っ!みてみて!!」


光秀との対談が終わり、彼以外の城の者から隠れるように部屋で夕餉を済ませた後。今後のことを考えながら、二人分の布団を敷いていた梓乃に、綾女が無邪気に話しかけてきた。後ろ手に何か隠し持っているらしい。あの襲撃以来、久々に見せる子供らしい綾女の姿である。

顔を紅潮させながら手を開くと、そこには色とりどりの少しとげとげした小さな粒があった。


「これ、こんぺいとうって言うんだよ!全部お砂糖で出来てるの!お玉様がね、いっぱいくれたんだ!」


金平糖といえば、この時代から入ってきた南蛮の菓子である。作るのが困難な上に、貴重な砂糖から出来ているので、当然非常に高価なものだった。その(ぎょく)のような美しさに、梓乃も思わず手を止めて、その菓子を眺める。


「よかったな。あまり一気にばくばく食うなよ」


「梓乃も欲しいんでしょー。お玉様が一緒にどうぞって一杯くれたよ?」


「お玉様?ここの家の方か?」


「うん、煕子様と光秀様のお姫様」


光秀と煕子の間の娘。当たり前だが、この城の中には彼らの家族がいる。一目見て異人と分かる綾女に快く菓子をくれたということは、お玉という娘も異人に対して抵抗がないということなのだろうか。


(だとしたら、この家の人々はやっぱり変わっている)


十三で山を出てからこれまで、この綾女と二人で生きてきた。差別というものに常に晒され、それは生まれた時からずっと身近なものだった。それなのに…差別して当然の身分である光秀らが何故…。


「光秀様も煕子様も、ここの人達は皆優しいんだね。…今までと全然違う」


「あぁ…そうだな。俺達は一生分以上の恩を、この家の人達に貰ったんだ。だからこそ、生涯をかけて彼らにご恩返しをしないとな」


温かな分厚い布団に滑り込む。あるかどうかも分からないような、あの薄いボロ布ではない。それだけで、梓乃も綾女も涙が出そうなぐらい嬉しかった。

綾女がぎゅっと梓乃の体にしがみついてきた。何事だと身じろぐ梓乃に、ポツリと綾女は言う。


「梓乃が生きててくれてよかった。もう絶対、どこにも行かないで」


…何も答えられなかった。切ないその訴えに

、はっきりと断言出来ない自分が、情けなかった。

けれど、それ以上にこの身から湧き上がってくる感情は、歯がゆさではなく、愛おしむ気持ちだった。完全に縋りついて、自分を求めてくる綾女が、愛おしい。


応える代わりに、梓乃は縋りついてくる小さな体をかき抱いた。負けじと回される、細い腕。


今、はっきりと分かった。自分にとって何が一番大切で、守りたいものなのか。

それは梓乃にとって、誰よりも尊い命。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ