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逆襲は断頭台より愛をこめて  作者: てんてんどんどん@★虐待されていた商家の令嬢5巻発売中♪


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7話 絶望と原因

 

「リリーシャ様、お茶をお持ちいたしました」


 そう言ってレナが私にお茶を差し出した。

 あれから1年。

 セリナも無事で、私は平穏な生活を送っている。


(――けれど油断は禁物だわ。結末は変えられるけれど、イベント自体は少し形を変えてでも必ず起こる)


 この後叔父のダグラスが、皇帝からの願いに逆らえず、リリーシャに皇子との婚約を勧めてくることになる。

 皇子は最低最悪の屑なのだが、ゲームのリリーシャは、セリナの庇護がなく断れなかった。


(私は、本物のリリーシャのように気が弱くはないし、セリナが生きているから断るのは簡単だわ。セリナは皇帝でも異論を唱えられるほどの権力をちゃんともっている)


 断罪イベントさえ超えてしまえば――、回帰前はそれ以後のイベントは用意されていない。


(断罪イベントさえ乗り越えれば平穏に暮らせる)


 そう思いながら、私がお茶に口をつけた、その途端――。


「リリーシャ様!! 大変です!!」


 従者の一人が、ノックもせずに扉を開けた。


「公爵様が……公爵様が!!」


「……どうしたの?」


「神殿で祈りを捧げていたところ、突然、石像が倒れてきて……!」


 従者はそこで言葉を詰まらせた。


「……それで?」


「公爵様が、その下敷きに……。お亡くなりに、なられました……!!」


 視界が――暗転した。


 ――失敗した。


 目の前で埋められていく棺桶を見ながら――私は呆然と立ち尽くしていた。

 何がどうなったのかよく覚えていない。

 気づいたら、死んだ母の死体の前に立っていて、顔は綺麗なままの母の死が信じられなくて、ずっと肩をゆすって名前を呼んでいた気がする。


 ――どこで間違えた?


 検証はいろいろした。

 イベントは解決できるという結論を出すのが早すぎた?

 でも5歳時に回避したイベントは、現在も解決したままだ。

 数個解決したが揺り戻しはきたことはない。


 ――なら何がいけなかった?


 もっと、検証するべきだった?

 常に母のそばにいるべきだった?

 母に事実を知らせるべきだった?


 どうしたらよかった?

 何ができた?

 なぜ私は勝手に大丈夫だと思い込んでいたの?


 全然大丈夫じゃなかったじゃない。


 ――失敗した。


 ――失敗した。失敗した。失敗した。


 最善の手はきっともっと他にあった。なぜ私はベストを尽くさなかった?


 ――私のせいだ――


 私のせいだ。私のせいだ。私のせいだ。


 母の笑顔が浮かぶ。

 実の子じゃないと訴えても、決して聞き入れなかった母。

 本当の娘じゃないのに、無償の愛を注ぎ続けた哀れな人。


 いつも優しくて。

 見守ってくれていて――どこか雰囲気が現世の義母に似ていた。


 だから――好きだったのに。


 なんで、なんで、なんで。

 なんで死んでしまったの?

 こちらの世界でも結局私は一人になるの。


 嫌


 いや


 イヤ。


「合同葬は大神官ユリウス様が担当してくれるらしいですよ。よかったですねリリーシャ様。あの方ならきっとセリナ様を天国に導いてくれます。だから心配しないであげて」


 隣にいた――親戚が私に声をかけ、そこで現実に引き戻される。


 ――大神官ユリウス?――


 私はその名前に覚えがあった。

 ゲームのヒーローの一人だ。


 ――でも。おかしい。彼は私が作った設定ではまだ、大神官職にはついていなかったはずだ。


 私が歴史を変えたことで、予定より早く大神官職についた?

 けれど私が表舞台に変化が出るほどの介入をしたのは演劇の消火のみだ。

 それだけで先代の大神官と入れ替わるのは、説明がつかない。


「ショックー!!今攻略キャラいたじゃん!!」


 7歳の時、豊穣祭で聞こえた少女の声が思い出される。


 そして――そこで全てがつながった。


 そうだ、なぜ、私は、その可能性を考慮していなかったのだろう。


 私が機材の下敷きになって転生したのなら――もう一人転生したことも考慮に入れるべきだった。


 そして――その女が、自分の幸せのためなら他者に危害を与えかねないことも。


 み つ け た


 思わず、笑みがこぼれた。


 みつけた。みつけた。みつけた。


 犯人 みつけた。


 ああ、よかった。


 原因がわかった。


 原因を排除したらいいだけじゃない。


 そう、排除したらいいだけ。


 そうしたらすべて解決する。


「大丈夫?リリーシャ?」


 うつむいていた私に親戚が声をかける。

 そして私は顔をあげた――途端。


 なぜか一瞬、親戚がおびえた顔をするのだった。


 ***


「アリアナ様。ミラカルト公爵のお葬式が執り行われたそうです」


 従者の報告に、鏡の前で髪を整えていた少女が振り返った。


「まあ、そうなの? かわいそうね」


 そう言って悲しそうに眉を下げる。


 けれど、従者が部屋を出ていった途端――。


「ふふっ♡」


 少女は鏡に映る自分に向かって、嬉しそうに微笑んだ。


(やっと正常にストーリーを戻すことができたわ)


 まさかゲームのざまぁされる側に転生するなんて。

 でも私が作ったゲームだもの。これくらい余裕♡


 そう言ってアリアナ――転生した会社の後輩は手にある鍵を見る。


 プレイヤーだけが行ける秘密のショップ。課金アイテムが買えるショップに行くための必須アイテム。


(多分私が先に買いに行ったから、先輩は行けないはず♡)


 課金ショップでヒーローやネームドモブの好感度をマックスにできる薬を買ったので、神殿の連中は大体思うがまま。


 ――そう。殺人だって。


(死ぬイベントでちゃんと死んでくれなかったんだから仕方ないわ。本来死ぬキャラはちゃんと死ななきゃ)


 主人公の母が死んだことによって皇子との婚約が断れなくなったし、これでゲーム通りに進む。


 ゲーム通りに進んでなかったのはおそらく。


 主人公には先輩が入ってる。


 ゲームのWeb生中継中、「この世界はマルチバース(並行世界)皆さんが作る世界が世界そのもの楽しんでくださいね♡」と昔発言してしまったことがある。


 巻き戻り前もマルチバース発言をしたら、なぜか炎上してしまった。

 そんなの元の復讐するべき相手は、無傷じゃないかと重箱の隅をつつくような批判がSNSにあふれかえったのだ。


(あの時は、すごい後悔したけどぉ、まさかこんな形で役に立つなんて)


 この世界は並行世界。

 先輩が巻き戻って巻き戻った世界で復讐しても私には無関係。

 しかも先輩が死んじゃえば、私はウハウハ。


 死んじゃうのはかわいそうだけど、仕方ないよね。

 先輩やらないと私が偽聖女になっちゃうし♡


 どうせ生き返るんだから許してくださ~い♡先輩♡

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