12話 お見通し?
帝都中央広場は、朝から多くの人々で埋め尽くされていた。
年に一度の豊穣祭。
その中でも最も人々の注目を集めるのが、聖女による祝福の儀式だった。
「それでは聖女様。お願いいたします」
ユリウスの言葉とともにアリアナは満面の笑みを浮かべ、祭壇の前へ進み出る。
そこに置かれているのは、萎れた一輪の花。
アリアナが両手をかざすと、淡い光が花を包んだ。
しばらくして――。
萎れていた花弁がゆっくりと持ち上がり、美しい花を咲かせる。
「おおおおおっ!!」
広場から歓声が沸き起こった。
皆がすごいと褒めたたえる。
(ふふ。これくらい課金アイテムを使ったんだから簡単。みんなこんなのに騙されるんだから、本当この世界の人間ってちょろい♡)
アリアナが思っていると、その隣にユリウスが並ぶ。
「素晴らしい奇跡でした」
そう言ってユリウスは、観衆へ視線を向けた。
そして――ゆっくり微笑む。
「さて、本来は一人のはずですが――せっかくですから、もうお一方にもお願いしましょう」
ざわっ。
観衆が揺れる。
ユリウスの視線の先。
そこに座っていたのは、皇子の婚約者――リリーシャだった。
「リリーシャ様。よろしければ、貴方にも聖女の奇跡を披露していただけませんか?」
唐突な提案。
もちろん予定にはない。
「待て」
真っ先に声を上げたのは皇子だった。
「そんな話は聞いていないぞ」
「突然の申し出で申し訳ありません。ですが、皇子殿下。
貴方の婚約者様が、かつて劇場を救った奇跡を持つ方だということは、帝都中が知っています」
ユリウスは観衆へ向き直った。
「せっかくの豊穣祭です。皆さまも、もう一度その奇跡をご覧になりたいと思いませんか?」
その呼びかけに―― 一斉に歓声が上がる。
祝福ムードになっている会場に皇子が不快そうに眉をひそめた。
「勝手なことをっ!!」
「殿下」
皇子を制止してリリーシャが静かに立ち上がった。
「せっかく皆さまが楽しみにしてくださっているのですもの。
やらせていただきましょう?」
そう言って、微笑む。
そして何事もないように壇上へ進み出た。
一歩一歩。
まるで予期していたかのように堂々と、新しい萎れた花が置かれた祭壇の前に立った。
その瞬間。
花が開く。
一輪だけではない。
茎から新しい蕾が次々と生まれ、淡い光をまといながら一斉に咲き誇った。
一瞬の静寂。
「わあああああっ!!」
あがる歓声。
「すごい……!」
「聖女様より綺麗じゃないか?」
「あれが劇場を救った奇跡……!」
歓喜にあふれる会場。
その中でリリーシャは当然と言わんばかりにアリアナに視線を移してきた。
――貴方達のやることなどお見通しなのよ――と。




