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7.『あれ?』と思ったら素直に言いましょう


「まず聞きたいんやけど、あんさんらは前衛と後衛どっちが欲しいんや?」


 カウンター席に腰掛けた俺を見つめながら、獣人族さんが俺に問いかける。


「うーん……ぶっちゃけどっちも欲しいは欲しいけど、複数人で戦うとなるときちんと連携して動かなきゃ、数の多さはむしろマイナスに働いちまうからなぁ……。下手に人数だけ増やすわけにはだよな。ナツキ、お前はどう思う?」

「私も、人は多い方がいいと思いますけど……多かったら、私が逃げ出した時に怒る人が増えてしまうと考えたら……」

「ナツキさん、あんたは何言ってんだい?」

「途中で逃げ出すところ見たらびっくりしちゃうと思うし、なるべく人数は少ない方がいいと思います!」

「あなたは逃げるという選択肢をなくす気はないの?」

「逃げないと私死にますよ⁉︎」

「お前が逃げたら俺が死ぬリスク上がるんだよ! と、こんな感じで魔法使いが全く役に立っておりませんので、今は俺と同じ前で戦う人よりは後方から支援してくれる人がいてくれた方がありがたいかなって気持ちです」

「それだと私も安心してお任せできるのでいいと思います! 私と同じ魔法使いだと、なおいいと思います!」

「ってことで、前衛希望の方を教えてください」

「なんでぇぇぇ⁉︎」


 瞳を潤ませてポカポカ俺の背中を叩くナツキを無視して、俺は獣人族さんに希望を提示。


「ほんなら、まずはこの子やなぁ〜」


 カウンターに一枚の写真が置かれる。

 写っているのは、背中から刀身がはみ出るほど大きな剣を背負った、目つきの鋭い女性。


「この子は大剣使いの女の子やな〜。腕っぷしは間違いないけど、喋るんが苦手で無口な子でな。人とうまくコミュニケーション取れんのが難点やな」

「なるほど……」


 自身と同じ背丈の剣を扱うのは、それなりの技術と腕力がなければできない芸当だ。戦闘能力は言うまでもないだろうけど……。


「大剣は、一撃デカいけど隙もデカい。最大限力を発揮するためには仲間との連携が必要不可欠やでなぁ。人と話すん苦手となると、パーティとして機能するんは少し時間はかかるやろうな」

「ですね。俺も同じこと考えてました」

「でも、その悩み忘れてしまうほどには個の戦闘能力は高いで。そこはおすすめや。あとおっぱいも」

「確かに。素晴らしいものをお持ちです」

「次は、この子やな。この子は素早さと手数の多さで圧倒するタイプや。めちゃ元気でこの子おったらパーティが明るくなること間違いなしやし、短剣以外にも弓使えたり鎌使ったり刀使ったりと器用でな、武器の扱いはピカイチやで」

「おぉ、すげぇ……!」

「ただまぁ、写真で見てわかると思うけども、なかなか自由気ままな子でなぁ。好き嫌いも激しいし、たまに作戦無視して自分のやりたいようにやってしまうんや」

「それはかなりの問題児ですね……」

「そやな。でもまぁ、おっぱいは問題ないやろ?」

「はい。素晴らしいです」

「この子も前衛やな」

「この方は格闘家ですか?」

「せや。さっきの二人よりも一回りデカいやろ?」

「えぇ……! とても素晴らしい……!」

「あとは、この子とか」

「ふむ……弾力が見ただけでも伝わってくる、素晴らしいお胸……! この方も素晴らしい。すみません、この方のご職業は?」

「受付嬢や」

「もはやおっぱいの大きさしか条件を満たしてなぁぁぁぁぁぁいっ!」


 俺は手にした写真をカウンターに叩きつけた。


「なんや、おっぱい大きいんがええゆうたんはあんたやろ?」

「そうですけど! 言いましたけども! 戦えるという最低条件は満たしてもらわないと、俺の負担が増えるだけなんですよ! 負担を増やすためにここに来たわけじゃないんですよ!」

「そ、そうですよ! しっかりちゃんと戦ってくれる方を紹介してもらわないとです! もしその方が私たちのパーティに来てしまったら、その人の前で逃げ出さなきゃいけなくなる私の気持ちを考えてください!」

「そんなこと考えなくていいわ! 微塵も必要ないわ!」

「ダメですよ! これも仲間集めに必要なことなんです!」

「どこが⁉︎ どの辺が⁉︎」

「私のプライドが傷ついてしまいます!」

「よくもまぁプライドなんてもん口にできるな! そんなペラッペラに軽いプライドなんて、とっとと捨てちまいなっ!」

「捨てられません! これを捨ててしまったら、私が私でなくなってしまいます!」

「生まれ変わるいいチャンスじゃないか! お前は本日をもって生まれ変わるんだよ! ニューナツキになるんだよ! さぁ、ペラッペラのプライド捨てて、こっちに来なっ!」

「い、嫌です! 絶対に嫌っ! 生まれ変わりたくない! 私は今のままがいいんです! 今の、ハルトさんに寄生……甘えて生きていく方が、私には合っているんです!」

「寄生って言った! 寄生って言ったよこの子! 可愛い顔してとんでもないこと考えてるよ! お前、そんな考えしてるから捨てられるんだよ! わかってんのか⁉︎」

「す、捨てるだなんて言わないでくださいハルトざぁぁぁぁぁん!」

「俺はお前を見捨てはしない! だがしかし、その腐った根性を放っておくこともしなぁぁい! 俺が他の男みたいにお前をべっちゃべちゃに甘やかすと思ったら大間違いだからな! 甘やかすときは甘やかす! 厳しくする時は厳しくする! これ、育ての基本っ! わかったか!」

「嫌です嫌ですべっちゃべちゃに甘やかしてくださいぃぃぃぃ!」

「いい加減にしなさいっ! 甘やかしてほしかったら、その黒く曲った薄汚いプライドを捨てて、俺のサポートしなさいっ! 戦いなさいっ!」

「無理です無理ですできっこないですぅぅぅ!」

「やる前から無理無理言ってんじゃないよ! やればできる子なんだよあんたは!」

「できません! 戦えません! だって私は、その……う、受付嬢ですので!」

「魔法使いでしょうが! 戦わないだけじゃなくて嘘までくようになっちまったのかい⁉︎ ほんと歪んでんねぇあんたのプライドは! そのプライド、俺が叩き直してやるわ! ほら、こっちに来なっ! 仲間集めの前に戦闘訓練だよ!」

「嫌です嫌です離してくださいぃぃぃ! 獣人族さん助けてぇぇぇ!」

「そうやってすぐ人に助けを求めるのやめなっ! プライドと共に、その甘ったれた精神も叩き直してやるわ!」


 ナツキの腕を引き、酒場の扉に手をかける──と、後方から小さな笑い声が聞こえてくる。


 俺は動きを止めて、目を鋭くさせたまま勢いよく後方へと身体を捻った。


「おいこら獣人族さん! 笑ってんじゃないよ! こっちからしたら笑える問題じゃないんだよ! 死活問題なんだよ!」

「そ、それはわかっとるけど……わ、わかっとるんやけどもさぁ……! ふ、ふふふっ……あっはははは〜!」


 酒場いっぱいに広がる声をあげて、机を叩き、ポロポロ涙までこぼす獣人族さん。


 あんなに笑われることを俺たちはしていたのか……? 獣人族さんの笑い声で冷静さを取り戻し始めた俺とナツキは互いの顔を見合わせる。急に恥ずかしさがこれでもかと湧き上がってきて、俺たちは顔を赤らめ慌てて顔を逸らした。


「ひぃ〜……! あーおもろっ……! あんたらと一緒におったら、毎日飽きひんやろうなぁ」

「それ、褒めてます……?」

「褒めとる褒めとる! なぁなぁ、えっと……ハルトとナツキ、やっけ?」

「はい、そうです。どうしました?」

「仲間探しとるんやったら、この子はどや? この子」

「……えっと、どの子でしょうか? 写真は?」

「写真はない。うちや、うち」

「「……え?」」


 思ってもいなかった提案に、俺とナツキは顔を見合わせた。


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