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4.女の涙と笑顔は男にとって癒しでもあり天敵でもある


「よ、よかったぁ〜……! 私、捨てられないんですね……!」


 人気ひとけのない路地裏へと駆け、大慌てで事の説明をし、ようやく理解してくれたナツキは、安堵あんどの息を吐き出して涙を指で拭った。


「ナツキさん、あなた戦闘から無言で逃げるのもよくないけど、人の話も聞かずに自分勝手に決めつけるのもよくないからね……。俺じゃなかったらまた捨てられてたかもしれないんだから、気をつけて──」

「う、うぅ……! ぐすっ……! ひっぐ……!」

「もぉ〜、人の話はちゃんとしっかり聞かないとダメですよナツキさん! 俺じゃなかったらって言ったのよ、俺じゃなかったら! つまり、俺は君を絶対に見捨てはしないってこと! 安心しなさいナツキさんや!」

「ハ、ハルドざぁぁぁぁん!」


 声を震わせながら、ナツキは肌着姿の俺に躊躇う事なく抱きついてくる。


 可愛い女の子に抱きつかれて喜ぶ自分と、見捨てない宣言をしてしまいこの先どうしようと頭を抱えている自分がいて、今俺はとても複雑な気持ちです。


「わ、私、ドジばっかりのダメダメなやつなんでぇ……! 運良く仲間にしてもらえても、す、すぐに捨てられてばっかりでぇ……!」


 捨てられる理由はドジではないことは、伝えたほうがいいだろうか?


「周りからも『可愛いだけ』とか『置物』とか『可愛いだけ』とか『可愛いだけ』とか、そんなことばっかり言われて、皆さんのお役に全く立てなくてぇ……!」


 やっぱみんな思ってることは同じなんだな。


「だから私、優しいハルトさんに見捨てられたら、きっともう、いくあてがなくて……なぐでぇ……!」

「泣くな泣くな泣くなって! 俺は絶対に見捨てないから! だから安心しろ! な!」

「う、うぅ……!」

「そうだ、りんごを食べよう! りんご食べて落ちつこう! 今剥いてやるから!」


 ナツキの肩を優しく叩き、俺はナツキの持ち物袋から小型のナイフを取り出して、素早くりんごの皮を剥く。流れるように一口サイズに一つ切り分け、「ほら、お食べ!」とナツキの口元まで運ぶ。


 涙目のままコクリと小さく頷いたナツキは、大きく口を開いてりんごをパクり。シャリシャリ気持ちのいい音を立てながら咀嚼するその姿に、可愛らしさと懐かしさを感じる。故郷にいる愛犬のペロを思い出した。ペロ、元気にしてるかな?


 一口サイズに切ったやつを、も一つ差し出す。ナツキも大きな口を開けても一つパクり。りんごのおいしさが彼女の顔に笑顔を咲かせていき、俺はようやく一安心。


 そういや、ペロも食べることが好きで、よく嬉しそうにしてたなぁ。


 愛しのペロを思い出し、ふとナツキと重ねてしまい……俺は手を伸ばしてナツキの頭を撫でてしまう。


 しかしナツキは嫌悪感を見せてこない。むしろ俺の突然の行為を受け入れてくれて──


「にへへ……!」


 可愛らしい声を漏らしながら笑顔を強めた。


 前パーティの皆様が、ナツキの逃げ癖を知ってなのか知らずに受け入れていたのかは不明だが……これだけはわかる。こんなことされたら、男は皆受け入れちゃうよ。


 肌着姿の情けないハルトくんも笑顔を強めて、しばらく可愛い置物をなでなでしました。


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