エピソード10
今、私は家ではなく事務所にいる
どこの事務所かって?
そりゃもちろん
「……静かだな」
「予想はしていたけどさ……」
探偵事務所「ティム・エデン」の事務所だ
(ちなみに費用は私が払った)
だが、いつものことながら、事業開始当初は閑散としている
「……退屈だ」
「もともと初期はこういう感じだから、ちょっと我慢して……」
「退屈だ! 退屈だってば! いくら何でもそれはないだろ! こんな人なんて絶対来ないような場所にある探偵事務所に、誰が来るっていうんだ!」
アートの言うことは正論だ
今の探偵事務所の外見はそれらしく見えるが……
事務所の場所がすごく人里離れた路地にあるせいで、誰も来ない
文字通り、誰。も。来。ない
「ディブルは仕事だから家にいるし、アートはちょっと退屈だろうな……文章の勉強でも終わらせようか?」
「嫌だ!」
「……^^」
キム・アリムが不気味に笑いながら、横にあったハンマーを手に取った
「私、実は小さい頃から文章の勉強がしたかったの」
そうして何事もなく過ぎていくかと思いきや
ディリン~ ディリン~
一人の若い女性が店の中に入ってきた
「いらっしゃい……ませ?」
「こんにちは。ここ、本当に探偵事務所ですか?」
「あ、はい! よく見つけてくださいました! こちらにお座りください!」
初めての客が訪れた
そうして客をソファに案内し、依頼について会話を始めた
「それで、どのようなご用件でいらっしゃったのですか?」
「実は、飼っていた猫を迷子にしてしまって……。どうしてもどこにいるのか分からなくて……」
「簡単な依頼ですね。今すぐ取り掛かります」
「えっ?! 依頼料は……」
「後で受け取りますよ。キム・アリム、アート、行こう」
「ゴーゴーシン~!」
そうして記念すべき最初の(ささやかな)依頼が始まった
道中、依頼人から得た情報によると、黒い体に黄色い模様のある猫で、首には「チョキ」という名前の首輪がついているとのことだ
そうして迷子になった場所を基準に、約5km圏内を3人で分担して調査した
「もしかして、こんな見た目の猫を見かけませんでしたか?」
「あ~……いや、この辺には猫がよく来るけど、こんな猫は見たことないな」
「あ、はい!教えてくださってありがとうございます~!」
一方、別の場所ではアートが
「この辺りには普段、野良猫がたくさんいるんだけど……ここか!」
アートは頭を下げ、岩の隙間を覗き込んだ
中には何もなかった
「……じゃあ、ここだ!」
振り返った場所にも誰もいなかった
そうしてアートが周辺を捜索している間、私は
「……ここは?」
野良猫がよく集まる場所を聞き込みながら探していた
「うーん……黒に黄色の模様のある猫はいないな。他の場所はどこだったっけ?」
そうして他の場所を二、三カ所ほど探し回った後、その猫を見つけることができた
「ニャー~」
「この子らしいな」
黒い体に黄色い模様のある猫がいた
首には『チョッキー』と書かれた首輪まで、紛れもなく依頼人の猫だった
特に印象的な部分は
「目がオッドアイ(odd eye)だな」
片方の目は緑色、もう片方は赤色だったのだ
そうしてチームメンバーと共に事務所に戻ると
「ニャー~」
「チョッキー……!」
女性が猫を抱きしめた
「(涙)ありがとうございます……王家の猫なので、もし迷子になっていたら極刑だったでしょうに……」
「……王家の猫?」
そして「極刑ですか?」という言葉は、あえて口に出さなかった
「……あ、いえ! つい口が滑りました! 心配で……ハハ……」
「はい、そして依頼料は……1000ウォン程度でいきましょう」
「はい……え? 思ったよりずっと安いような……」
「この程度の依頼で1000ウォンなら、むしろ高い方ですよ」
「え、はい、分かりました」
そうして依頼料1000ウォンを受け取り、依頼が終わったかと思ったが
「ところで、よろしければもう一つ依頼を追加してもいいでしょうか?」
「……え? あ、はい、構いませんよ」
そうして彼女が一枚の写真を手渡すと、その写真にはとても見覚えのある顔が写っていた
「ディアブロ・ボン・デッドという人物を探しているんですが……」
「……え?」
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一方、家では
「つまり、ここにこの魔法陣を追加すれば……?」
家の天井にある電灯が点灯した
「よし! 魔力発電で電気の生成も完了! 世界樹から魔力まで供給してもらえるから、事実上永久に電気を使えるね!」
ディブルは家で魔力を使って家電製品を動かしていた
そして、家のドアが開くと
きしっ!
「ただいま~」
「俺が来た!」
「ただいま。それと、ディブル、お客様がお一人いらっしゃいるよ」
「え、お……お客様……」
ディブルの顔が瞬く間に硬直した
「陛下!」
「え……その……」
「陛下(泣) すごく探し回ったんですよ……」
どうやら誰だか分かっている様子だった
「もしかして魔界から……?」
「はい、はい! ご挨拶させていただきます!」
「いや、いいよ……」
「こんにちは! 新人猫管理人のシリガミ・コロです!」
「あ……本当に人生って……」
ディブルは茫然自失とした目でソファにへたり込んだ
「おい、エデン」
「どうした?」
「俺がなんでここに来たか、話しただろ?」
「……いや」
「はあ……俺が魔王だって話は、君にしたっけ?」
「それ、嘘じゃなかったの?」
「嘘じゃないよ……」
そうしてディブルは状況の説明を始めた。
自分が魔王であること、そしてあまりにも多くの出来事が重なり王宮から逃げ出したこと、そうして私と出会ったこと、そして今の状況に至ったことまで。
「だからこうなったんだ」
「じゃあ、王宮ってところに戻らなきゃいけないの……? ディブルは……?」
「何よ! もう友達になったのに! そんなの嫌だ!」
「まあ、アートの言う通り、ここを離れるつもりはないよ。何しろ『仕事が山積みだから』というのは表向きの理由だし」
「えっ?! そんな話、初めて聞きましたよ?!」
シリガミ・コロという女性がそう言った
「そう、知ってるのは、僕の逃亡を手伝ってくれた領議政だけだからね」
そうして、かなり真剣な話がはじまった
「魔界では主に、死者の魂を裁く役割を担っている」
「私たちが知っている地獄のような役割ってこと?」
「うん、魔界も一種の地獄だからね」
そうしてディブルは、初めて聞く話を始めた
「でも、死者の未練はほぼ同じ種類なんだ」
「友達や家族にもう一度会わせてほしいって」
「不可能な要求だよ。普通、死んだ魂がこの世に長く留まりすぎると、精神的に狂って亡者になるか、あるいは消滅するか、そのどちらかになるからね」
そしてディブルは少し息を整えて、こう話した
「でも、今までそんな言葉を聞くたびに悩んでいたんだ。なぜそんなに生きていることに執着して後悔するんだろう、そうなら生きている時にちゃんと助けてあげればいいだけじゃないか…… ってね。だから、直接現世に来たんだ」
ディブルにとって、現世にいる意味を気づかせてくれたのは
「でも、わかったんだ。君たちに会ってから」
私たちだった
「一緒に暮らしてまだ2ヶ月しか経っていないし、最初は面倒だと思っていた」
彼にとって私たちは
「でも、少しずつ時間が経つにつれて、君たちとの日常が楽しくなってきたんだ」
友達であり
「一緒にいれば楽しくて、辛い時も笑って過ごせて、いなくなると心配になる……」
家族だった
「だから、本来は1ヶ月が霊議政と約束した期間だったんだ」
「……え?」
「でも1ヶ月も約束を破っちゃったよ。正直、魔界の軍隊を率いて攻めてこなかったのが幸いだったくらいだから」
「それなら……」
「 だから、行って説得してくるよ」
「僕はまだ君たちと一緒にいたいんだ」
「だから行くよ。行って説得して戻ってくる。そもそもここが僕の家なんだから?」
それなら
「私たちも。」
「え?」
「私たちも行きます」
「え? いや、そこは地獄だよ? それに、生きている人が入るのは君たちが初めてだから、反発も大きいだろうし……」
「戦争になろうが何になろうが、後始末は俺がする。魔王さえ倒した俺が、それくらい対処できないように見えるか?」
私の言葉に合わせて、ディブルが笑みを浮かべた
「ふっ、はは! そうだ! お前はもともとそういう奴だったな~!」
そして笑いを止めたディブルが、笑みを浮かべて言った
「じゃあ、トラブルを起こさずに気をつけてついてきて?」
「わかった。アートとキム・アリム、二人とも知ってるのか?」
「うん!」
「わ~っ!地獄行きだ~!」
「あ、それとエデン!」
「どうしたんだ、ディブル?」
そうして
「責任は君じゃなくて、俺たちが負わなきゃな」
地獄への旅が始まった
謝罪の連続連載です
あと10話記念公約で1話視聴数100回、ハート10回達成時外伝連載も一緒に進めます
(ピクシブ基準です)
最も暗い夜 エピソード1 | きむじゃっか #pixiv https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=27881469




