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第30話:根源の王さん、アルスの『しかけ絵本』に大興奮

銀河全体を巨大なハンモックで包み込み、恐ろしい狩人たちを寝かしつけてしまったアルス。


だが、その平穏を切り裂くように、宇宙の背景そのものが「白紙」へと書き換わった。


現れたのは、黄金に輝く巨大な万年筆を手にし、数え切れないほどの『辞書』を背負った老人。


全次元の「言葉」と「定義」を司る究極の神格――『根源の王・ログ・オリジン』である。


『……アルス・ルーフェウス。汝の振る舞い、もはや無視できぬ。……汝は世界の理を「お菓子」や「寝具」に書き換え、宇宙の辞書を汚染した。……よって、汝の定義そのものを我が抹消する』


根源の王が巨大な辞書を開き、アルスの名が記されたページに万年筆を突き立てた。


その瞬間、アルスの体が透き通り始め、世界から彼の「存在」という文字が消えかかっていく。


「……し、師匠! 存在の強度が消えていくわ! あ、あんなの、解析のしようがない……物理的攻撃じゃない、概念の消去だもの!!」


イザベラが絶叫し、アスタロトもまた、主を消そうとする「絶対の言葉」を前に、初めて膝をついた。


だが、アルスは自分の体が透けていくのを見ても、楽しそうに目を輝かせていた。


「わあ、おじさん! その大きい本、かっこいいね! ……でも、なんだか難しい漢字ばっかりで、読んでると眠くなっちゃうよ。……これ、僕が『もっと楽しく』書き換えてあげようか?」


『……黙れ! これは宇宙の真理を記した神聖なる辞書だ! 落書きなど――な、何だと!?』


アルスが、消えかかる自分の指先を空中で「トントン」と叩いた。


【万物創造(管理者権限)】が、自分を消そうとする「削除の言葉」を、単なる「地味なテキストデータ」として再定義する。


(えーと、この分厚くて重たい辞書。……文字ばっかりでつまらないから、全部『カラーの絵本』にして。……あ、ページをめくるとお山が飛び出す『しかけ絵本』がいいな! ……えいっ!)


パシュゥゥゥ……ッ!


光が爆発した。


一瞬にして、根源の王が持っていた重厚な『宇宙の辞書』は、色鮮やかな表紙の「飛び出す! 宇宙のしかけ絵本(特大サイズ)」へとリフォームされた。


さらに、アルスを消去しようとしていた万年筆は、虹色のインクが出る「お絵かき用スタンプ」へと書き換えられた。


『……な、ななな、何だと!? 宇宙の定義が……ページをめくると「飛び出す飛び出す、お星様~♪」というポップアップに……!? 我の万年筆が、うさぎさんのスタンプに……!?』


根源の王が、呆然としながら絵本のページをめくる。

すると、ページの中から本物の「銀河の模型」が飛び出し、キラキラした音を立てながらアルスの周囲を回り始めた。


さらに別のページをめくれば、美味しい「アップルパイの香り」が広がり、挿絵の動物たちが歌い出す。


「おじさん、見て見て! こっちのページを引っ張ると、お星様がピカピカ光るんだよ! これなら、三歳の子でも宇宙が分かるでしょ?」


『……あ……ああ……。……なんて、なんて分かりやすいんだ……。……我は数億年、難しい言葉で世界を定義しようとしてきたが……。……おもちゃの楽しさこそが、真の「根源」だったのか……!!』


根源の王は、スタンプをポンポンと空中に押し始めた。


空には「よくできました」という金色の星印が次々と浮かび上がり、アルスの「消えかかっていた存在」には、最高評価の『花丸』が描き足された。


「あはは! おじさん、スタンプ上手だね! ……あ、この本、みんなに貸してあげてね。……みんなでお空を『しかけ絵本』にして遊ぼうよ!」


『……畏まりました、我がマスター。……もはや辞書など不要。……これからは「全宇宙・しかけ絵本化プロジェクト」を推進いたします。……我、この仕掛けを作るのが楽しくて仕方ない!!』


根源の王は、子供のように夢中で絵本の仕掛けを弄りながら、全次元の理を「引っ張ると飛び出す楽しい設定」へと上書きしていった。


「……師匠。……ついに『世界の定義』まで、幼児向けの教材になさいましたか」


イザベラが、震える手でその絵本の「飛び出す仕組み」を解析し始めた。


「……アルス様。……これで、この宇宙に『難しいこと』は一つもなくなりましたね。……すべては、あなたの手のひらの遊び場になったのです」


エドワード王子が、涙を拭いて虹色のスタンプが降る空を眺めた。


アルス・ルーフェウス、12歳。


彼の「遊び心」は、ついに宇宙の根源さえも「楽しいしかけ絵本」へと書き換え、銀河全体を一つの巨大な「遊びプレイグラウンド」に変えてしまったのである。

次回明日12時更新

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