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SAVE A MALL ―セーブ ア モール―  作者: 福山直木
三幕 “彼女”のために……
15/21

奔走!救世主タチ!4日目

名物グルメ候補「藤の花コロッケ」と「藤の花ブルーベリーチーズケーキ」の発売当日。と言っても、やることは商店街の入口でビラ配りをするくらいだ。


「十年後、いや二十年後、この名物はここから始まって、それは私たちが企画したんだって自慢したいね~」

事務所で田中さんと話をしていた。

「そうですね」

と返事をしながらも、その時が来るまで商店街が残っているだろうかと考えてしまう。


「まっ、私たちもしっかり働かなきゃね!」

「そうですね。頑張りましょう」

それぞれ商店街の端と端でビラ配りを行う。

「商店街の新たな名物ができました!よろしくお願いします!」

ビラを受け取ってもらえるように大きな声を出す。


普段できないことをやらせてもらえるのは嬉しいのだが、慣れないことばかりなので疲れる。


昼に近づいた頃、黒田さんと松山さんが駆けつけてくれた。昼ご飯を食べて来るように言われた。

田中さんと一緒に八重の食堂に行く。定食と名物グルメをご馳走してくれるのだ。


「いらっしゃい。二人ともお疲れ様」

ねぎらいの言葉をもらい、少しだけ疲れが和らいだ気がした。

「ご注文は何にしますか?」

「ねぇ船ちゃん、君のおすすめ何?」

さりげなく、あだ名が流用されている。

「僕ですか?僕は…」

八重も気になるのか、じっと様子を伺う。

悩んだ末、唐揚げ定食だと答えた。


「そっか~。なら、唐揚げ定食をお願いします」

田中さんは即決した。八重は特に反応せずに僕の注文を訊く。

「じゃあ、唐揚げ定食で」

「唐揚げ定食ふたつね。ケーキは食後に持ってくるね。おやじ~唐定2とコロッケ2お願い~」


お昼時だが休日であるため客足は鈍い。平日ならば近くに勤める人達が来店するため、混雑することも珍しくない。


「八重さん、調子はどう?」

田中さんが水を用意する八重に尋ねる。

「馴染みのお客さんは楽しみにしてくれてたみたいで、結構注文してくれるんですが…」

思うような売れ行きではないのか、彼女は表情を曇らせる。


「まぁ、初日だからね!そんなもんだよ!で、注文してくれた人は何て?」と、すかさずフォローしながら評判を訊く田中さん。

「みんな美味しいって言ってくれてます」

「それは良かった」

「それもこれもみんなのおかげです。本当にありがとうございます」と深々と頭を下げた。

「え、いや、私たちは何もしてないから!頭を上げて」

田中さんは慌てる。

「そうだよ。八重が提案してくれなかったら、話そのものがなかったんだから、お礼を言うのはこっちだよ」と僕は同調した。

彼女は頭を上げたが、複雑な顔をして呟いた。

「私、何も出来てないもん…」

「そんなことないよ八重ちゃん!私ね、ケーキ大好きなの!だから、名物グルメにしようって提案してくれた時、本当に嬉しかったよ!それに、これから八重ちゃんの腕の見せ所なんだから!」と田中さんは必死に彼女を元気づける。

「そうだ。これから頑張ればいい。だからそう言うな…。あと、唐定2できたから、持ってってくれ」彼女の様子を見かねて、おじさんも口を挟む。

「う、うん……。はい、唐揚げ定食ふたつ…」


いつもならコロッと表情を変えて「定食ふたつ、お待ち!」などと言いながら持ってくるのだが。今の彼女は明らかに様子がおかしい。

何かあったのか訊きたいところだが、田中さんがいるため追及は避けた。


名物グルメの感想を聞かせてやるが、もはや逆効果だ。どんどん顔が険しくなる。

そのまま店を後にするしかなかった。

「頑張ってね」と言ってくれるものの、元気がなかった。



昼食中にビラ配りを代わってくれていた黒田さんたちにお礼を言って交代した。ビラ配りをする間も気になっていた。


「ご苦労様です。あら?なんだか、上の空ですね?どうかされましたか?」

誰に声を掛けられたのかと思えば、花屋の遥さんだった。

「あっ、こんにちは。なんでもないです」

それを聞いた彼女は疑うような眼差しで見つめる。

「悩み事ならおっしゃってください。相談事は慣れてますから」

「ありがとうございます……でも、大丈夫ですから」

「わかりました。何かあれば、いつでも花屋を訪ねてください。あなた方も商店街の一員です。お力になれることがあればできる限り協力しますよ」

「はい。お気遣いありがとうございます」

その場を去ろうとしたが、思い出したように振り返った。


「あっ、そういえば、森本さんのところで頂きましたよ。どちらも美味でした。お気に入りになっちゃいそうです」

笑顔で報告してくれた。

「そうですか!是非またよろしくお願いします!」

「分かりました。それでは、頑張ってくださいね」

「ありがとうございます。遥さんも頑張ってください!」

「はい。では、また」

手を振りながら去っていった。


本当に優しい方だと思いながら、配っていると今度はジュエリームラタの千弥さんが通りかかった。


「あ、船場さん…でしたよね?」

「はい。こんにちは」

「こんにちは。先日は申し訳ありませんでした。」

「いや、それはお気になさらず…。それより、商店街で売り出そうとしているグルメがあるんですが…」

「存じておりますよ。商店街の皆さんが噂してますから」

「そうなんですか?」

「まぁ、何を売り出すかということより、委員会が企画したっていうほうが有名ですけど…」

単に美味しそうだから噂されているのかと思ったが、委員会が企画したというほうがインパクトが強いようだ。


「そうですか…」

「これから食べにいこうかと思っているんです」

複雑な表情を浮かべる僕を気遣ったような言い方をした。

「そうですか。今度、感想を聞かせてください」

「分かりました。船場さん、引き続き頑張ってください」

「はい!」

そんな会話をしながら、ふと気がついた。


食いつきがいいのは、ほとんど女性。街頭で不特定多数の人にビラを配るよりも、女性の多い場所でチーズケーキを宣伝できれば効果的なのではと考えた。



作業を早く切り上げて、田中さんに相談することにした。

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