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SAVE A MALL ―セーブ ア モール―  作者: 福山直木
三幕 “彼女”のために……
12/21

奔走!救世主タチ!1日目

とある日、事務所に行くと見慣れない男性がいた。作業服風の服を着ていた。


「あの方は?」

見世さんに尋ねる。

「ここの担当者になった柳田さん。市の商店街を回っていらっしゃる方よ。活動の様子を見たり、商店街の方々の要望を聞いたりしているのよ。月一回、ここの視察に来るわ。まぁ、今日は違ったみたいだけどね」

「そうですか。で、今日は何をすればいいんでしたっけ?」

「今日は和田さんのカフェに行って、チーズケーキのサンプルを貰ってきて」

「分かりました……。ところで僕ひとりですか?」

田中さんとセットで活動するという気で居たのだが。

「うん、そうよ。前会ってるから大丈夫でしょ?」

「それは大丈夫ですけど」


サンプルを貰うため、和田さんのカフェに向かった。

おしゃれな外観のカフェだ。店は営業中で若い女性や主婦たちがお茶をしていた。

男ひとりで入るには勇気がいる場所だ。


用事があるため、構わず入店する。

「あの、商店街活性化委員の船場と申します。店長の和田さんはいらっしゃいますか?」

店員に和田さんを呼んでもらう。

すぐに奥から出てきてくれた。

「待ってましたよ。サンプルはこれです。冷凍されてるので、解凍してくださいね」

「わかりました」

「では、お願いします」


こうして、無事にチーズケーキを受け取り事務所に持って帰る。

「おっ、早かったわね」

「数十メートルの距離ですから……。で、このサンプルをどうするんですか?」

「デリバリーしてちょうだい。八重さんに食べてもらわないとね」

「それで、僕ひとりなんですね?」

「ほら、急いで、早く彼女に食べさせてあげなさいっ」

なぜか急かされる。


「あ、船ちゃん!チーズケーキ?」

目を輝かせて食い気味に見つめてくる。その視線は結構ドキドキする。

「あぁ、サンプルを貰ってきた」

「ありがと~。早速たべるね~」

本当に嬉しそうだ。


「あっ、冷凍だから」

今にもかぶりつきそうな彼女を止める。

「うわ、本当だ!硬い…」

ケーキがある程度柔らかくなってから、八重が試食する。

「おいし~!和田さんのところのケーキおいしいんだ~」

幸せそうにケーキを頬張る。僕はその光景を複雑な心境で見守る。


「バッチリだよ!これはヒット間違いなしだよ!」

この上ない評価を貰えた。が、なぜか素直に喜べない。


報告するために和田さんの所へ行く。

「どうだった?」

結果を楽しみにしているようだった。

「すごく幸せそうでしたよ。ヒット間違いなしだって太鼓判してましたよ」

正直に伝えると嬉しそうに言った。

「本当かい?それは良かった。来週からは通常メニューに加えてみるよ。頑張って売って定番商品になるようにしてみせるから。森本さんの食堂にも置いてもらう話にはなってるけど、こっちで大々的に売り出すから安心してって伝えてくれるかな?」

やけに張り切っている。

「分かりました。あと、さっき田中さんに聞いたんですが、なかなかケーキを提供してくれるお店が増えないみたいなんです……」

ここへ来る前に田中さんと出会っていた。


「そうか……まぁ、単純に考えると洋風の飲食店が少ないからね」

「ですから、和田さんのお店が頼りです。お願いします……と伝えてくれと言われました」

その伝言も預かっていた。

「了解。やるだけやってみるよ!」

和田さんは爽やかにそう言った。


とりあえず、おつかいが終わった。やりとりを見世さんに報告した。

「そう……それなら良かったわ。それにしても、彼女のために奔走する彼氏……なんか良いわね~青春って感じがするわ~」

「い、いや、それは勘違いですよ……彼女じゃないですから……」

「あれ?違うの?」

意外そうな顔をする。

「本当に違いますから……」と否定しておいた。

気にしていないと言えば嘘になるが、恋愛対象としては見ていないと思う。


来週からチーズケーキとコロッケの販売が始まる。とりあえずは一部店舗だけの試験的な取り組みだが、これがうまく行けば商店街の全体的な取り組みに変わってゆくはずだ。



八重のために順調に売れてほしい。その気持ちばかりが先に出てくる。


そんな心境に自分が思っている以上に、彼女のことを想っているのかもしれないと感じた。だが、気持ちがどうであれ、やることは変わらないと言い聞かせて誤魔化した。

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