始動!救世主タチ!7日目
会議の当日。緊張した面もちの八重と共に事務所へ向かった。
今日の会議には、実行委員のメンバーたちとイベントの時にお世話になった西さんと大谷さん、それに花屋の石川遥さんも参加する。
店主を取り仕切るリーダーである西さんと大谷さんは、毎回話し合いに加わるようだが、内容に詳しい様々な人に顔を出すよう、二人が働き掛けてくれたらしい。
実際、事務所へ行ってみると、定食屋の看板娘、衣笠幸さんやおしゃれなカフェ経営する和田寛之さんも駆けつけてくれていた。
「それでは、第一回商店街活性化会議を始めます」
最初は黒田さんが取り仕切った。
「では、今回の議題を森本八重さん、船場船穂さん、田中雪乃さんから発表してください」
「こんにちは。森本八重と申します。よろしくお願いします。この度、商店街の看板商品を作りたいと思い、会を開かせていただきました」
事前に話の進め方を確認しておいたおかげで順調に進んだ。
事のあらましを伝えるとみんな興味津々だった。とりあえず、異論を出す人は居なかった。
「コロッケの具材はどうしましょうか?」
衣笠さんが尋ねる。
「出来るだけ、地産地消でいきたいね」
西さんが答える。
「農家の知り合いがいるから、相談してみようか?」
和田さんが言う。
「私も、お世話になっている農家の方に相談してみますね~」
衣笠さんも言う。
「普通のコロッケにはない個性がほしいのですが、何か案がありますか?」
田中さんが意見を乞う。
「紫芋を使ったコロッケというだけで、もう個性があるような気がしますが…」
和田さんがもっともな意見を言う。
確かにそれだけで立派な個性なのだが、いまひとつインパクトに欠ける。
「紫芋コロッケに何かをプラスすると言ってもな…」
松山さんが話に加わる。
「最近、おっきなグルメが人気じゃない?」
石川さんが案を出した。
「材料費は嵩みそうですが、いい案ですね。何もなければ、大きなコロッケということで進めましょう」
黒田さんが有力案と評価した。
「次にチーズケーキは、どうしましょうか?」
「レシピを作るんですか?それとも、それぞれのお店に任せるのでしょうか?」と新井さんが尋ねる。
「商店街のケーキ屋さんに頼んで作ってもらえたら…って思ったんですが」
田中さんが言いにくそうに言った。
その言葉に続けるように「今日は来てもらえなかったですね…」と八重が残念がる。
「すまんな。私の力不足だ」と大谷さんが詫びる。
「責めてるわけじゃないですから…」
八重が大谷さんをフォローする。
「あいつは仕方ないですよ。金の匂いがする話にしか興味がないような奴ですから…というか、昔から馴れ合いを好まないんですよ。話に乗らなくて当然です」
和田さんが旧友を愚痴る。
「こらこら、人の悪口はいけませんよ~」
石川さんはやんわりと和田さんを注意する。
「すみません」と素直に謝った。
「どうしますか?専門店に任せる方向でいくのなら、私たちがアポを取りますよ?」と黒田さんが訊く。
「複数の店で個性豊かなメニューが出せたらいいですよね。みんなで盛り上がれば、相乗効果も期待できますし」
機転を利かせた和田さんが提案をする。
「そうね〜いろんなお店で出してもらって、スイーツ巡りなんていいわね~」
石川さんは願望を言う。
「では、とりあえず各店に任せる。という形で話を進めてよろしいでしょうか?」
田中さんがまとめに入った時、石川さんが思い出したように言った。
「あっ、そういえば、ブルーベリーの苗がお店にあったわね~。なかなか売れないから、提供しても良いわ。みんなで育ててみる?」
「いいですね!楽しそう!」と衣笠さんが食いつく。
「ブルーベリーを収穫するまでは、時間が掛かるけどね~」
石川さんが付け加えた。
「では、とりあえず各店に一任して、材料についても自由にやってもらいましょう。準備が整い次第、商店街産のブルーベリーを使ってもらうということでよろしいでしょうか?」
田中さんは再度まとめる。
「それで大丈夫ですよ」和田さんが了承する。
「大賛成!!」テンションの高い衣笠さんも返事をした。
「異論なしよ」石川さんも答えた。
それを聞いて西さんが言う。
「そういうことなら、まずは試験販売から始めたほうがいいかもしれませんね。皆さん、ご協力お願いいたします」
「皆さん、ありがとうございます。これから、お願いします!」
改めて八重は頭を下げた。
結局、僕は何も発言しないまま、会は終了した。
何はともあれ、八重の発案で名物グルメの製作が始まることになった。
会議の後、見世さんからこの件の担当者として、田中さんと共に任命された。
これが個人での初仕事。幼なじみのために、頑張らなければと意気込んだ。




