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物語は羽ばたかない


 濡烏(ぬれがらす)は、鬼神(きじん)としての力(ちから)を解(と)き放(はな)った。黒(くろ)い羽(はね)は周囲(しゅうい)の怪(かい)を貫(つらぬ)き、次々(つぎつぎ)に消(け)していく。

「これが、濡烏(ぬれがらす)さんの力(ちから)…」

松葉(まつば)は、濡烏(ぬれがらす)の力(ちから)に驚(おどろ)きながらも自身(じしん)の刀(かたな)を持(も)った。すると、そこに三本足(さんぼんあし)の烏(からす)の姿(すがた)になった梅重(うめかさね)が近付(ちかづ)いてきた。

「梅重(うめかさね)さん、大丈夫(だいじょうぶ)ですか?」

「うん、だけど人間(にんげん)の姿(すがた)にはまだなれない」

他(ほか)の八咫烏(やたがらす)も次々(つぎつぎ)に起(お)き上(あ)がるが、人間(にんげん)の姿(すがた)に変化(へんげ)しない。ゼオラの術(じゅつ)がまだ効(き)いているからだろうか。


 そこにゾフィーが現(あらわ)れた。ゾフィーは、大勢(おおぜい)の怪(かい)を引(ひ)き連(つ)れている。

「ゼオラ、何(なに)やってるの?さっさと烏共(からすども)を片付(かたづ)けてしまいなさい」

「やれやれ、可愛(かわい)い妹(いもうと)の頼(たの)みは断(ことわ)れないね…」

ゼオラは、ゾフィーの怪(かい)を剣(けん)に巻(ま)きつけた。その剣(けん)でゼオラは濡烏(ぬれがらす)に攻撃(こうげき)する。濡烏(ぬれがらす)はそれを避(よ)けるが、ゾフィーが連(つ)れて来(き)た怪(かい)の群(む)れが隙(すき)をついてきた。

 濡烏(ぬれがらす)だけではゼオラとゾフィーは倒(たお)せない。だが、自分(じぶん)の力(ちから)で何(なに)が出来(でき)るだろう。松葉(まつば)は刀(かたな)を握(にぎ)る。

 すると、梅重(うめかさね)が松葉(まつば)の手(て)に触(ふ)れた。

 「松葉(まつば)ちゃん、私(わたし)の力(ちから)を使(つか)って」

青鈍(あおにび)と山吹(やまぶき)、それから里(さと)の八咫烏(やたがらす)が集(あつ)まり、松葉(まつば)に力(ちから)を分(わ)け与(あた)えた。

「私(わたし)は一人(ひとり)じゃない、里(さと)のみんなの為(ため)にも、頑張(がんば)らなきゃ!」

松葉(まつば)はその刃(やいば)の先(さき)をゾフィーに向(む)けた。

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