貴方が愛した心の奥で
律花と一八は、真由とビガラスと共に青波台を駆け巡った。一目見ただけでは変わった事は分からない。だが、異変は間違いなく近づいている。
一八はそれをいち早く察知したらしい。見えない何かを恐れているようだった。
「一八君、大丈夫?」
一八は律花に手を握られ、我に返った。
「ああ、大丈夫だよ」
一八は律花の手を握り返して頷いた。
「これ以上、町を、大切な人を傷つけさせない」
この状況を引き起こしたのはゾフィーだろう。それは二人も分かっていた。他の世界も窮地に陥っている。そんな中で、律花に出来るのは、育った町、青波台を守る事だった。風見家の人々は、人知れずその役目を果たしていた。
「私が風見家として産まれなければ、町を救おうとも、厄災を止めようとも思わなかっただろうな」
「俺も、昴様や律花に出会わなければ、きっとそうだろうな」
「これは、私にしか出来ない事だから!」
律花は御札を取り出した。一八も、自分の杖を取り出す。
「俺も、律花と同じだ」
一八は蔦を操り、壁を作った。律花は御札に霊力を込め、空へと投げた。すると、隠れていたゾフィーと、巨大な怪が姿を現した。その周囲には、大勢の怪が取り囲んでいる。
「あんた達、来たのね」
「もうこの町を、大切な人達を傷つけるのはやめて!」
「この町は死出山と違って聖域でもなんでもない、ただの普通の場所よ。それなのにどうして風見家はここを守ろうとしているのかしら」
ゾフィーが二人を指差すと、怪は一斉に攻撃を始めた。一八が作った壁はすぐに破られた。それでも二人は諦めない。
「ここは私達の大切な場所だから、あなた達の好きにはさせない!」
律花は結界を張り、そこから杖を取り出して魔法の弾を放った。陰陽師と魔法使いの両方の力を持つ律花ならではの技だ。律花の弾で怪は蒸発していく。
ゾフィーは一瞬怯んだようだったが、怪は次々と現れた。数で攻めて、二人の体力が尽きるのを待つつもりなのだろう。
「このままでは埒が明かねぇ!」
一八は蔦で足場を作った。それから、弓矢を作り出す。
「律花、矢に霊力を込めてくれ、俺がそれを放つ」
律花は手渡された矢に霊力を込め、一八に渡した。一八はそれをつがえ、手を離した。飛んだ矢はゾフィーが乗っている怪に刺さり、怪は風船のように破裂した。




