封じられた記憶
見知らぬ空はどこまでも続いていた。青空と夕焼けと夜空が入り混じった幻想的な空間が二人を包んでいる。落ちているはずだが地面には辿り着かない。星藍は目を閉じて篤矢の手を掴んだ。
ようやく星藍を思い出した篤矢は笑っていた。
「ありがとう、僕を見つけてくれて」
「篤矢君…」
星藍は、戸惑いながらも篤矢と同じ顔を見せた。
遠い昔にここに来た気がする。だが、それがいつなのかは分からない。何故今それを思い出したのか、それも分からない。
「こうしてやっと二人になれた。もう思い残す事はないよ。」
「そうだね…」
二人は手を繋ぎ、落ちていった。ようやく二人になれた。これ以上の何も求める必要はない。二人はなすがままに天に沈んでいく。
その時、すぐ側で聞き覚えのある声が聞こえた。
「おい二人とも、生きるのを諦めようとするなよ。まだ子供だろ?」
目の前には赤いマントを羽織った音羽が空中で立っている。
「音羽君!どうしてここに?」
「それはこっちの台詞だよ。」
音羽は二人を抱え、地面に降ろした。
「ありがとう音羽君、それにしてもどうして…」
「二人はここが何処か分ってるのか?」
そう問われると、星藍の目が一瞬見開いた。
「何処って、そういえばここは何処なんだろう…」
「ここは冥界だよ。二人は何らかの力で引き込まれたんだ。俺が居なければ二人は危うく死ぬ所だった。」
音羽の手には漆黒の大鎌が握られている。二人は長い事音羽の側に居るが、このような物は初めて見た。
「音羽君って、何者なの?」
「俺は死神だよ。そして二人をずっと見張っていたんだ。」
音羽は空を見上げた。先程まで二人が居た空を禍々しい姿の怪が覆っている。音羽はそれに向かって飛び立っていった。




