天上の光と地下の影
現世に降り立った昴は、まず母校である青波台小学校を覗く事にした。
昴が小学生だったのはいつの時代の話だろうか。彼が居た頃の痕跡はもう残っていないだろう。子供が、孫が、そして曾孫が通う校舎は昴の頃とは異なっていた。
昴は、小学校の様子を外から眺めていた。すると、当代の校長が見えた。
昴はその校長の顔に見覚えがあった。昴は直接会ってはいないが、見知った顔のような気がしたのだ。それは何故だろう。それは今度調べる事にして、昴は小学校を後にした。
その後、昴は風見家を訪ねた。そこには一八が留守番をしている。
「昴様!」
「一八、元気そうだな!」
一八は昴に飛びついた。
「はい!しかし昴様が現世にやって来るなんて珍しいですね。」
「妻が亡くなる前はよく来てたんだ。」
一八は昴の過去をよく知らなかった。
「昴様の奥さんって?」
「人間だったんだ。」
「しかし昴様のお力があれば人ならぬものに変える事も出来たでしょう。」
「杏は人間のまま死なせてやりたかったんだ。そして、もう二度と俺に構わなくてもいいようにしたかった。でもな、あいつはどうしても俺の側から離れたくないってさ、今は杏の木の中で眠ってるよ。」
「昴様かそんな事言うなんて珍しいですね。」
「あんまりお前に構うとあいつらが嫉妬するかもな。」
昴は一八をコウモリの姿に変え、手に乗せた。
「それじゃあな。律花はお前に任すよ。」
そう言うと昴の姿は消えてしまった。一八は人の姿に戻ると、律花の帰りを待った。
それから、昴は息子の朝日の元に現れた。伝えたい事があった。昴はそれを伝えるとすぐに別の場所へ向かった。
そこは鬼界、鬼や怪が暮らす禍々しい世界だった。
「蘇芳」
昴は鬼の一人を呼んだ。蘇芳は『獄炎の輩』と呼ばれる気性の荒い怪達を束ねる長だった。
「俺達の世界を訪ねるとは、昴様にしては珍しいな。」
「時期にこの世界も大変な事になる。そうなる前に手を組んでおきたくてな。」
「昴様も俺達を頼るくらいには追い詰められてるってのか。」
蘇芳の呼び方には皮肉が混じっていた。だが、昴はそれを厭わなかった。
昴は来るべき厄災に立ち向かおうと必死だった。その為に様々な準備を進めている。今はまだ手を休める訳にはいかなかった。




