不可能を可能にする者
風見昴は、執務の間ずっと頭を抱えていた。冥界にやって来た曾孫の音羽の事や、離れ離れになった篤矢と星藍の事、それから宇宙から襲来した怪も気になる。
特に、篤矢と星藍が離れてしまった事は痛手だった。星藍は不安定な状態で生死を彷徨っている。一方、篤矢の方もいつ怪と化すか分からない状態だ。
また、星藍に関する記憶が周囲の人々から消えているのも気になった。昴は現世をずっと観察していたが、危機的な状況である事は把握していた。
「多少手を打たないといけないのか…」
「しかし昴様、我々が干渉し過ぎるのもどうかと思いますが。」
部下のグルーチョがそう助言する。
「そうなんだけどな~、このまま二人が人間じゃなくなったらどうすればいいんだよ。」
昴の手元には水晶玉がある。そこには、透明になった星藍が映っていた。
篤矢と星藍、二人の元になった魂は風見家と縁がある。その魂は対になっており、同じ時代に産まれ、引き合うようになっている。昴もまた、その魂によって産まれた者の子孫だ。
かつて二人が妖になった時、それを救ったのは昴の遠い先祖に当たる一人の少年だった。また、昴の両親も二人に縁があった。
そして、その二人が人ならざるものになった時、手が打てなくなる事も分かっていた。
「現世は音羽様も律花様もいらっしゃいますし、大丈夫でしょう。」
「その音羽は今ここで探し物をしてるだろ?それに、律花もな、一八が一応見てもらってるがどこまでやれるかは分からない。」
昴は、水晶玉に律花と音羽を映していた。
今は亡き鍛冶屋のマグマが若き日に造り出した『忌具』を解き放つように命じたのは昴だった。
「それにしても、曾孫の音羽様に物騒な物を持たすだなんて、昴様は鬼畜な事をしますよね。」
「あいつなら使えるだろう。そうでなければそれまでだ。」
昴は玉座から降りた。
「しかし昴様、あまりここを離れるのは…」
「俺を誰だと思ってるんだ?」
昴が指を鳴らすと、正装から簡素なパーカー姿になった。彼が現世に赴く時の姿だ。それを見て部下達は歓声を上げた。
「二人に会ってくる。それから、朝日にも伝えなきゃならない事がある。しばらくここを離れるから何かあったら頼むぞ。」
昴はそう言った後、姿を消してしまった。
「やれやれ、それがあなた様のやり方ですか。」
グルーチョは、昴が消えた先を見つめていた。




