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願いを紡ぐ者


 ソルベと雪太(ゆきた)は旅(たび)を続(つづ)けていた。雪太(ゆきた)の願(ねが)いを叶(かな)える為(ため)、二人(ふたり)は吹雪(ふぶき)の中(なか)を、進(すす)んでいく。ソルベは自分(じぶん)の店(みせ)と学校(がっこう)を置(お)いて雪太(ゆきた)に着(つ)いて行(い)ってしまった。

 雪太(ゆきた)の覚悟(かくご)は並大抵(なみたいてい)のものではなかった。解(と)けない身体(からだ)を手(て)に入(い)れる為(ため)なら過酷(かこく)な試練(しれん)に挑(いど)むのだろう。自分(じぶん)と同(おな)じくらいの年頃(としごろ)でありながら、進(すす)むべき道(みち)を決(き)めている。ソルベにはまだそれが無(な)かった。



 雪乃(ゆきの)が食(た)べた『氷結(ひょうけつ)の実(み)』はどんなものだったのだろうか。雪太(ゆきた)の様子(ようす)を見(み)れば見(み)る程(ほど)気(き)になってしまった。最初(さいしょ)は流(なが)れで着(つ)いて来(き)ただけだった。ところが、ソルベも『氷結(ひょうけつ)の実(み)』が気(き)になってきた。雪太(ゆきた)の、そして自分(じぶん)の願(ねが)いを叶(かな)える為(ため)にも、過酷(かこく)な道(みち)を進(すす)んでいく。


 

 その時(とき)、二人(ふたり)の前(まえ)に現(あらわ)れたのは巨大(きょだい)な雪男(ゆきおとこ)だった。この山(やま)の主(ぬし)だろうか、この先(さき)は通(とお)すまいと立(た)ち塞(ふさ)がっている。

「どうする、いける?」

雪太(ゆきた)は吹雪(ふぶき)を集(あつ)め、氷(こおり)の刀(かたな)を形作(かたちづく)った。どうやら、これを武器(ぶき)にするらしい。

「いざという時(とき)に、お母(かあ)さんが教(おし)えてくれたんだ。」

「そっか、それじゃあいけるね。」

ソルベは自分(じぶん)の鎌(かま)を取(と)り出(だ)し、雪太(ゆきた)の横(よこ)に立(た)った。


 学校(がっこう)で教(おし)えられた事(こと)はあるが、ここまで本格的(ほんかくてき)に戦(たたか)うのは初(はじ)めてだった。どの世界(せかい)でも怪(かい)の脅威(きょうい)は付(つ)いて回(まわ)る。それに立(た)ち向(む)かう為(ため)にも自(みずか)らの身(み)を守(まも)れるだけの力(ちから)は必要(ひつよう)だと家族(かぞく)は言(い)っていた。


 ソルベはまず雪男(ゆきおとこ)の足(あし)を狙(ねら)った。ところが、雪男(ゆきおとこ)は図体(ずうたい)の割(わり)には素早(すばや)い。

 その時(とき)、雪太(ゆきた)が雪男(ゆきおとこ)の開(あ)いた口(くち)めがけて刀(かたな)を投(な)げた。それを飲(の)んだ雪男(ゆきおとこ)は凍(こお)りつき、その隙(すき)にソルベは攻撃(こうげき)を当(あ)てた。



 苦戦(くせん)したがようやく雪男(ゆきおとこ)を倒(たお)した。倒(たお)された雪男(ゆきおとこ)は雪(ゆき)に混(ま)じって見(み)えなくなってしまった。

「あの雪男(ゆきおとこ)、倒(たお)して大丈夫(だいじょうぶ)だった?」

「うん、お父(とう)さんとは関係(かんけい)なさそうだから、平気(へいき)だよ。」

二人(ふたり)は雪男(ゆきおとこ)が居(い)た地面(じめん)を進(すす)んでいく。



 あの雪男(ゆきおとこ)は冥界(めいかい)で暮(く)らす怪(かい)だった。ソルベは怪(かい)があらゆる場所(ばしょ)で見(み)かけるとは知(し)っていたが、まさかこのような奥地(おくち)にまで居(い)るとは思(おも)いもしなかった。

「怪(かい)は、どれだけ倒(たお)されてもどこかで復活(ふっかつ)するみたい。私達(わたしたち)でも完全(かんぜん)に消滅(しょうめつ)させるのは難(むずか)しい。」

「そうなんだ、そんなふうに考(かんが)えた事(こと)はなかったなぁ。」

怪(かい)とは不思議(ふしぎ)な存在(そんざい)だ。例外(れいがい)を除(のぞ)いて子孫(しそん)を残(のこ)さない。

 また、寿命(じゅみょう)というものが概念(がいねん)として存在(そんざい)せず、その不死性(ふしせい)に人々(ひとびと)は苦(くる)しんでいる。時(とき)として食料(しょくりょう)になる事(こと)はあるが、圧倒的(あっとうてき)な力(ちから)の前(まえ)に為(な)す術(すべ)なく倒(たお)されてしまう事(こと)も珍(めず)らしくない。



 自(みずか)らの願(ねが)いを叶(かな)えるには、困難(こんなん)な道(みち)を進(すす)まなければならない。ソルベと雪太(ゆきた)は、お互(たが)いを頼(たよ)りにしながら吹雪(ふぶき)の中(なか)を歩(ある)いた。

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