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禁じ手


 音羽(おとは)は、洞窟(どうくつ)にある鍵(かぎ)を集(あつ)めていた。昴(すばる)が言(い)っていた『忌具(いみぐ)』こと『黒刃(こくば)』を、開放(かいほう)する為(ため)だった。毎日(まいにち)集(あつ)めに行(い)ってた甲斐(かい)あって早(はや)くも全(すべ)ての鍵(かぎ)が集(あつ)まっていた。後(あと)はこれを最後(さいご)の洞窟(どうくつ)に持(も)って行(い)けば封印(ふういん)は解(と)かれる。

「どうして強(つよ)い鎌(かま)がずっと封印(ふういん)されていたのですか?」

「師匠(ししょう)曰(いわ)く“若気(わかげ)の至(いた)り”だそうだ。後(あと)にも先(さき)にもこれ程(ほど)強(つよ)い鎌(かま)は造(つく)れなかった。その鎌(かま)を解放(かいほう)するという事(こと)は、昴様(すばるさま)も追(お)い詰(つ)められているのか、それとも曾孫(ひまご)の音羽(おとは)君(くん)を強(つよ)くしようとしているのかな。」

「さぁ、そこまでは分(わ)からないです。」

クォーツも、マグマから『黒刃(こくば)』の全(すべ)てを聞(き)いた訳(わけ)ではない。どれ程(ほど)の力(ちから)を持(も)っているのか、何故(なぜ)長(なが)い事(こと)封印(ふういん)されていたのか、その理由(りゆう)は知(し)らなかった。

「忌(い)み嫌(きら)われていたという意味(いみ)では、華玄(かげん)が昴様(すばるさま)として蘇(よみがえ)った話(はなし)は未(いま)だに信(しん)じられないけどね。」

クォーツはそう言(い)って音羽(おとは)を見(み)つめた。



華玄(かげん)こと風見(かざみ)華玄(かげん)とは、遠(とお)い昔(むかし)に産(う)まれた人間(にんげん)と死神(しにがみ)の間(あ)いの子(こ)で、昴(すばる)の前世(ぜんせ)の姿(すがた)でもある。彼(かれ)は罪(つみ)を重(かさ)ねた結果(けっか)、忌(い)み嫌(きら)われてしまった。

 桁外(けたはず)れの力(ちから)と、不死不滅(ふしふめつ)の肉体(にくたい)と魂(たましい)を持(も)っていた為(ため)に、誰(だれ)も華玄(かげん)を倒(たお)せなかった。

 最終的(さいしゅうてき)には自(みずか)らの力(ちから)で自(みずか)らを封印(ふういん)した。遺(のこ)された子(こ)の末裔(まつえい)が音羽達(おとはたち)風見家(かざみけ)で、能力者(のうりょくしゃ)として現世(げんせ)で活躍(かつやく)してきた。

 音羽(おとは)も風見家(かざみけ)の一員(いちいん)だ。昴程(すばるほど)ではないが、強力(きょうりょく)な力(ちから)を持(も)っているはずだ。だが、昴(すばる)によると音羽(おとは)はまだ不完全(ふかんぜん)らしい。音羽(おとは)が覚醒(かくせい)する為(ため)には『忌具(いみぐ)』が必要(ひつよう)だそうだが、その力(ちから)を音羽(おとは)が使(つか)いこせるか確証(かくしょう)はない。

誰(だれ)も『忌具(いみぐ)』を使(つか)おうとしなかった。それを解(と)こうとするのは最早(もはや)禁(きん)じ手(て)だ。

「どんな罪(つみ)も罰(ばつ)も恐(おそ)れていない。それが昴様(すばるさま)の長所(ちょうしょ)でもあり、欠点(けってん)でもある。」

「よく見(み)てますね。」

二人(ふたり)は立(た)ち止(と)まった。そこには、深(ふか)い洞窟(どうくつ)が口(くち)を開(あ)けている。音羽(おとは)は鍵(かぎ)を握(にぎ)り締(し)め、歩(あゆ)みを進(すす)めた。



 

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