宙からの呼び声
…星藍はどこでもない場所で目を覚ました。その空間は無で満たされている。
そこに居る星藍の身体はどういう訳か透明になっていた。何故ここに居るのか、身体が透けてしまったのか、その理由は分からない。ただ、この空間にずっと居てはいけない気がした。
星藍は立ち上がると周囲を見渡した。すると、無の空間の中に小さな黒点が一つだけある。星藍はそれに触れた。すると黒点は急激に膨張し、爆発を起こした。その衝撃で、星藍はその中に入ってしまった。
もう一度目覚めると、星藍は自分の部屋に居た。あの空間からは無事に抜けられたが、身体は透けたままだった。何故だろうと星藍が考えていると、そこへ星藍の母親が入って来る。
「お母さん!」
「おかしいわね、なんで子供の部屋があるのかしら。」
星藍の母親は星藍の部屋を片付け、物置きにしてしまった。このままでは、星藍の居場所がなくなってしまう。星藍は慌てて止めたが、その声は届かなかった。この様子だと姿も見えてないだろう。
自分の存在を否定されたようだった。星藍は家を出て行った。
それから、星藍は宛もなく町を彷徨い歩いた。見知った者と出会っても、星藍の声は届かない。
もしかして、幽霊になってしまったのかと星藍は思った。だが、自覚もなくそうなるだろうか。星藍はこれまでの事を振り返ったが、何も分からなかった。
そんな時だった。誰かが星藍の手を引いた。|振り向くと、そこには見知らぬ少女が立っている。
「君は…、私と一緒だね。」
「あなたは誰なの?」
「私はソニアっていうの、それ以外は何も分からない。」
ソニアと名乗った少女は星藍よりも幼いが、神秘的な雰囲気を漂わせていた。だが、目には光がなく虚ろで、皮膚には血の気がない。更に、髪は銀髪だった。
だが、星藍はそれ以上に自分を認識している事に驚いていた。
「どうして、私が分かるの?」
「私と同じだから、それだけ…」
ソニアは建物の窓を指差した。そこには本来二人の姿が映るはずだが、そうならなかった。もしかすると、ソニアも他の人間には見えていないのだろうか。
「なんだろう、良くない事が起きそうな気がするの、気をつけてね…。」
ソニアはそう言って目の前から消えた。
彼女は何者で、どういう状態になっていたのだろう。星藍は聞きたかったが、本人が何も知らないと言った以上、問い詰めても意味がないだろう。
帰る家を無くした星藍は、再び町を彷徨い歩いた。途中、何度も人にすれ違ったが、ソニアのように声を掛ける人は誰も居なかった。




