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雪原


 ソルベは雪太(ゆきた)を解(と)かさないように店(みせ)を暖(あたた)めた。そして、雪太(ゆきた)に冷(つめ)たいスープを用意(ようい)しながら客(きゃく)を待(ま)つ。ところが、この寒(さむ)い中(なか)アイスを買(か)う客(きゃく)は居(い)なかった。食料庫(しょくりょうこ)にあった残(のこ)り少(すく)ない材料(ざいりょう)は自分(じぶん)と雪太達(ゆきたたち)に使(つか)ってしまった。



 その翌日(よくじつ)は吹雪(ふぶき)だった。道(みち)は閉(と)ざされ、ソルベは学校(がっこう)に行(い)けなかった。

 ソルベは頭(あたま)を抱(かか)えた。店(みせ)に出(だ)すだけでなく、自分達(じぶんたち)が食(た)べるだけの食料(しょくりょう)も尽(つ)きようとしていたからだ。



 ソルベはこれからどうしようかと悩(なや)んでいた。このままでは店(みせ)を開(ひら)くどころか餓死(がし)してしまうかもしれない。何(なに)か手(て)は打(う)てないだろうか。

「もしかして、地下室(ちかしつ)に何(なに)かあるかも…」

ソルベは普段(ふだん)は行(い)かない地下室(ちかしつ)の扉(とびら)を開(あ)け、中(なか)に入(はい)った。



 地下室(ちかしつ)はソルベが想像(そうぞう)した以上(いじょう)に広(ひろ)かった。そこには、果樹園(かじゅえん)がある。

「地下(ちか)にこんな空間(くうかん)があったなんて…」

ソルベは祖父母(そふぼ)が用意(ようい)したリンゴやミカンといった果物(くだもの)を収穫(しゅうかく)し、店(みせ)に持(も)って行(い)った。

「これでアイスが作(つく)れるね!」

「うん!今度(こんど)お礼(れい)を言(い)わないとね。」

雪太(ゆきた)はアイスを楽(たの)しみにしているらしく、目(め)を輝(かが)やかせていた。


 ソルベは今(いま)目(め)の前(まえ)に居(い)ない両親(りょうしん)と祖父母(そふぼ)の顔(かお)を思(おも)い出(だ)しながらアイスを作(つく)った。異変(いへん)の後(あと)しばらく顔(かお)を合(あ)わせていないが、今(いま)はどこに居(い)るのだろうか。ソルベはずっと考(かんが)えていた。



 寒(さむ)い部屋(へや)の中(なか)で、ソルベのアイスが完成(かんせい)した。リンゴとミカンのシャーベットは冷(ひ)えていて、氷(こおり)の粒(つぶ)が輝(かが)やいている。ソルベは雪太(ゆきた)が凍(こご)えないように離(はな)れた場所(ばしょ)に火(ひ)を点(つ)けた。そして、雪乃(ゆきの)と雪男(ゆきお)を呼(よ)び、四人(よにん)で固(かた)まって食(た)べていた。




 その夜(よる)は吹雪(ふぶき)だった。雪太達(ゆきたたち)はソルベの店(みせ)に泊(と)まっていた。雪太達(ゆきたたち)が居(い)なければソルベは一人(ひとり)でこの夜(よる)を過(す)ごしただろう。

 偶然(ぐうぜん)とはいえ、家族(かぞく)が増(ふ)えたようでソルベは嬉(うれ)しかった。ソルベは寝(ね)る前(まえ)に雪太(ゆきた)と話(はな)していた。




 明(あ)くる日(ひ)も吹雪(ふぶき)は止(や)まなかった。学校(がっこう)にも行(い)けず、ソルベは雪太(ゆきた)と話(はな)している。

 雪太(ゆきた)はずっと、自分(じぶん)の身体(からだ)が解(と)ける事(こと)に悩(なや)んでいた。それを雪乃(ゆきの)に話(はな)すと、自分(じぶん)もそうだったと明(あ)かした。

「『氷結(ひょうけつ)の実(み)』?」

「うん、それを食(た)べると冷気(れいき)が増(ま)して解(と)けなくなるの。」

「どこにあるの?」

「ここよりもずっと寒(さむ)い場所(ばしょ)。冥界(めいかい)の奥地(おくち)にある凍原(とうげん)にある樹(き)に成(な)っているの。一年(いちねん)に一(ひと)つしか実(みの)らないからとても貴重(きちょう)なのよ。」

雪太(ゆきた)の母親(ははおや)の雪乃(ゆきの)も、雪太(ゆきた)と同(おな)じように寒(さむ)さに弱(よわ)かったそうだ。その時(とき)に『氷結(ひょうけつ)の実(み)』の噂(うわさ)を聞(き)いた雪乃(ゆきの)は凍原(とうげん)に行(い)き、それを食(た)べた。すると、寒(さむ)さに強(つよ)くなり、身体(からだ)も解(と)けなくなったそうだ。




 雪太(ゆきた)にとっては夢(ゆめ)のような話(はなし)だった。それを食(た)べれば願(ねが)いが叶(かな)う。今(いま)すぐにでも手(て)に入(い)れたかった。一方(いっぽう)、ソルベはあまり真剣(しんけん)に話(はなし)を聞(き)いていない。

「私(わたし)、それでアイスを作(つく)ってみたいな。」

雪太(ゆきた)はソルベの手(て)を引(ひ)いた。

「ソルベちゃん、二人(ふたり)で行(い)こう。」

雪太(ゆきた)は扉(とびら)を開(ひら)き、吹雪(ふぶき)の中(なか)飛(と)び出(だ)した。

「この吹雪(ふぶき)の中(なか)行(い)くの?」

「行(い)くよ。願(ねが)いを叶(かな)えたいから。」

「待(ま)って!色々(いろいろ)準備(じゅんび)しないと!」

ソルベは慌(あわ)てて店(みせ)に戻(もど)り、あるだけの食料(しょくりょう)と防寒着(ぼうかんぎ)、それからランタンを持(も)ち出(だ)した。そして、雪乃(ゆきの)と雪男(ゆきお)に手(て)を振(ふ)り、大急(おおいそ)ぎで雪太(ゆきた)を追(お)いかけた。



 そして、雪乃(ゆきの)と雪男(ゆきお)はソルベの店(みせ)に取(と)り残(のこ)された。食料庫(しょくりょうこ)には何(なに)も残(のこ)っていない。

「これからどうする?」

「いいんじゃない。飢(う)えたぐらいでは私達(わたしたち)死(し)なないわよ。」

雪乃(ゆきの)はソルベの店(みせ)で二人(ふたり)を待(ま)つと決(き)めたようだった。









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