夢界の中に入った奇跡は、目の前の光景を疑った。奇跡が守っていた夢原役場の時計台は魑魅魍魎に囲まれていた。恐らく、現世や冥界の影響を受けているのだろう。
奇跡は錫杖を手に持ち、臨戦態勢に入った。奇跡が錫杖を地面に突き刺すと、魑魅魍魎は一瞬で吹き飛んだ。それを見た奇跡は安堵し、時計台に登った。
そして、奇跡は時計台の修理をしていた。先祖代々守っている夢と現実を繋ぐ時計台は、二つの世界の要だ。奇跡は時計台が力を失わないようにと毎日様子を見ている。
奇跡達が夢を守っている事を知る者は少ない。夢は人々の脳内に直結している為、襲撃されればどのような影響があるか分からない。奇跡は両親からそのような話を聞いていた。
時計台の修理を終えた奇跡は夢原役場の建物の中でくつろいでいた。ここには奇跡以外誰も居ない。奇跡は待合室のソファーで寝転んでいるが、誰にも叱られない。奇跡はしばらくここで寝ようと目を閉じた。
その時だった。誰かの声で奇跡は目を覚ました。そこには、パジャマ姿の律花が立っている。
「律花ちゃん…、そっか、もうそんな時間なんだ。」
奇跡は、現実でやり残した事を思い出し、慌てて飛び起きる。
「もう行くの?」
「夕飯も食べてないし、宿題も終えてなかった。戻らないと。」
奇跡は羽織を叩き、錫杖を持って外に出た。それを律花は追いかける。
「それにしても、私がここに居るってよく分かったね。」
「なんとなくね、居るのが分かった。」
奇跡は地面に模様を描き、その中心に錫杖を突き刺した。すると、模様が光を放つ。
「この夢と現実、どっちも守るって決めたの。」
「そっか、もう決めたんだね。凄いな…」
「律花ちゃんもいつかは決めないといけないよ?」
「うん、頑張る。」
奇跡は現実世界に戻り、律花は一人夢の中に取り残された。