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間の子


 妖(あやかし)と怪(かい)という異(こと)なるものの間(あいだ)に生(う)まれた一八(いちはつ)は、幼(おさな)い頃(ころ)からどちらからも疎(うと)まれていた。妖(あやかし)にも怪(かい)にもなれない存在(そんざい)は、どっちつかずのまま生(い)きるしかないらしい。

 だが、一八(いちはつ)はそれを不幸(ふこう)だとは思(おも)わなかった。どちらでもないからこそ、どちらでもない生(い)き方(かた)ができるのではないだろうか。それに気(き)づいた一八(いちはつ)は、いつしか妖(あやかし)になろうとしている姉(あね)の松葉(まつば)とは異(こと)なる道(みち)を歩(あゆ)んでいた。



 その中(なか)で、偶然(ぐうぜん)昴(すばる)と出会(であ)った。昴(すばる)は一八(いちはつ)を見(み)ると真(ま)っ先(さき)に使(つか)いにした。一八(いちはつ)は昴(すばる)に強制的(きょうせいてき)に雑用係(ざつようがかり)にさせ、他(ほか)の部下達(ぶかたち)と同(おな)じように働(はたら)かせた。

 どうやら、昴(すばる)は過去(かこ)の自分(じぶん)と一八(いちはつ)を重(かさ)ねたらしい。昴(すばる)自身(じしん)は何(なに)も言(い)わないが、過去(かこ)の話(はなし)は何処(どこ)かで聞(き)いた事(こと)があった。昴(すばる)もまた死神(しにがみ)と人間(にんげん)の間(あいだ)に生(う)まれた存在(そんざい)だ。それ故(ゆえ)に一八(いちはつ)の気持(きも)ちが分(わ)かったのだろう。

 


 一八(いちはつ)は、昴(すばる)と過(す)ごした時(とき)の話(はなし)を終(お)えると、ビガラスがこう言(い)った。

「昴(すばる)さんと会(あ)うまでは家族(かぞく)以外(いがい)と関(かか)わってなかったんだな。」

「自分(じぶん)の境遇(きょうぐう)を嘆(なげ)くのは簡単(かんたん)だよ。だけど、俺(おれ)はそれを乗(の)り越(こ)えられるんじゃないかって必死(ひっし)なんだ。」

「そうか、」

ビガラスは一呼吸(ひとこきゅう)置(お)いてからこう言(い)った。

「俺(おれ)は真由(まゆ)と共(とも)に自分(じぶん)の中(なか)にあった悪魔(あくま)の力(ちから)を抜(ぬ)いた。だけど、今(いま)思(おも)うと悪魔(あくま)を宿(やど)したまま真由(まゆ)と生(い)きる道(みち)もあったのかな…。」

ビガラスは何(なに)か思(おも)い出(だ)したような声(こえ)を上(あ)げた。

「そういえば、一八(いちはつ)は、昴(すばる)さんの話(はなし)を何処(どこ)で聞(き)いたんだ?」

「母(かあ)さんから聞(き)いたんだ。」

一八(いちはつ)はそれ以上(いじょう)その話(はなし)をしなかった。





 今日(きょう)も一八(いちはつ)は律花(りつか)の側(そば)にずっと居(い)る。律花(りつか)は最初(さいしょ)はその状況(じょうきょう)に慣(な)れなかったが、次第(しだい)に慣(な)れてきた。律花(りつか)は一八(いちはつ)と並(なら)んで座(すわ)っている。

「この世界(せかい)には俺達(おれたち)と同(おな)じような存在(そんざい)が居(い)るんだって。」

一八(いちはつ)はそのような話(はなし)を昴(すばる)から聞(き)いたそうだ。双子(ふたご)の姉(あね)の事(こと)だろうと律花(りつか)は思(おも)っていたが、一八(いちはつ)の話(はな)し方(かた)からするとそうでもないらしい。

 だが、律花(りつか)は一八(いちはつ)から姉(あね)の話(はなし)をどうしても聞(き)いておきたかった。

「一八君(いちはつくん)はお姉(ねえ)さんと離(はな)れてて心配(しんぱい)じゃないの?」

「心配(しんぱい)なのは本当(ほんとう)だけど、それよりも頑張(がんば)っている今(いま)がとても嬉(うれ)しいんだ。」

「そっか…」

律花(りつか)には兄弟(きょうだい)が居(い)ないが、従兄弟(いとこ)の音羽(おとは)と来人(らいと)とは兄弟(きょうだい)のように親(した)しくしている。その為(ため)か、一八(いちはつ)の気持(きも)ちはなんとなく分(わ)かった。

「私達(わたしたち)も、頑張(がんば)らないとね。」

律花(りつか)は立(た)ち上(あ)がると、目(め)の前(まえ)には音羽(おとは)が居(い)た。

「律姉(りつねえ)、」

「音羽(おとは)、どうしたの?」

「冥界(めいかい)に、一人(ひとり)で行(い)く。」

音羽(おとは)の手(て)には鍵(かぎ)が握(にぎ)られていた。どうやらもう決心(けっしん)したらしい。

「そっか、気(き)をつけてね。」

「律姉(りつねえ)こそ気(き)をつけて。」

音羽(おとは)は律花(りつか)に背(せ)を向(む)けて歩(ある)き出(だ)した。律花(りつか)はそれを追(お)わずにじっと見(み)ていた。







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