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創星のレクイエム  作者: 有永 ナギサ
1章 第3部 運命の出会い 

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35話 残念お姉さん?

「結局、あいつはなんだったんだ? オレにあそこまで興味を(いだ)かせるだなんて……」


 陣は昨日出会ったリルのことを考えながら、歩みを進めていた。

 彼女はどこからどう見ても、ただ者ではない。そもそも陣の直観が告げているのだ。リルこそ求め続けた答えなのかもしれないと。


「まあ、もう一度会って、確かめればいいか。そのためにわざわざこうやって、探し回ってるんだから」


 実は陣が歩き回っているのは、リルにもう一度会うためといっていい。

 もちろん、当てはなかった。だがそれでも、会わなければならない気がして止まないのだ。心が、(たましい)が彼女を求めて仕方がないゆえに。


「――まったく……、なんとなく、いるような気がして足を運んでみたんだが……」


 ただ自分の勘だけを頼りに歩き回っていると、前方に海を眺める銀色の髪の小さな少女の姿が。


「ははは、まさか本当にいるとはな。これは運命か、それとも前回と同じで誘われたか……。まっ、どっちでもいいか。今度こそ、その正体を見きわめてやる」


 こうして陣は、再びリルに話しかけに行くのであった。







「よう、また会ったな。自称残念お姉さんことリルよ」

「むー、自称は余計。あと残念ってなんなのかな? わたしはしっかり者のお姉さん。あまり失礼なこと言ってると、ケンカを売ってるとみなしお灸をすえちゃうんだよ」


 リルはかわいらしくほおを膨らませてくる。そして腕を前に出し、不敵な笑みを浮かべてくる。


「ほう、面白い。あんた絶対ただ者じゃないから、興味深いものが見れそうだ。じゃあ、まずはこちらから」

「ちょっと、待って!? なにいきなり構えてるのかな? 冗談だよ、冗談! お姉さんとして、少し威厳をみせようとしただけなんだよ!?」


 臨戦態勢をとる陣に、リルはあわあわと手で制してきた。

 なにやら一瞬ただならぬオーラを感じたと思ったが、気のせいだったらしい。ただ単にお姉さんを気取りたかっただけみたいだ。


「なんだ、つまらん。ここで乗ってくれたら、なに者か()さだめられたかもしれないのに。――はぁ……、やる気だして損した」


 これには肩をすくめ、ため息をつくしかない。


「わたしがわるいみたいな雰囲気、出さないでくれるかな!? この場合いきなり戦いを吹っかけてきた、ジンくんの非常識さが問題なんだからー!」


 リルは心外だと、胸にバッと手を当てながら必死に身の潔白を。


「――はぁ……、まったく、もー、キミって子は……。あの子と同じで、周りを振り回すのが得意だね」


 そしてひたいに手を当て、やれやれとどこかほほえましそうな笑みを浮かべる。


「なんの話だ?」

「こっちの話だよ。うん、それにしてもジンくんは物好きだね。わたしに会うために、こんなところまで追っかけてくるなんて。今回はわたし、ノータッチだったんだけどなー」


 ほおに指をポンポン当て、ニヤニヤと意地の悪い視線を向けてくるリル。

 彼女の気配のようなものをわずかながら感じたので、そのまま勘にしたがいここまで来たのである。ゆえにまたリルが誘っていたと思ったが、違ったらしい。


「なに? ここにいるような気がして来たんだが、これってリルが前回同様誘っていたんじゃないのか?」

「えへへ、違うね。それはジンくんのわたしを求める想いが起こした、軌跡なんじゃないのかな? まさかキミが、そこまで情熱的な人だったとは。わたしに会いたくて会いたくて、仕方なかったんだねー。お姉さん、思わずテレちゃうほどだよー」


 リルははにかんだ笑みを浮かべ、なにやら聞き捨てならないことを口に。


「うんうん、わるい気はしないね! 男の子にここまで求められるシチュエーション! えへへ、なんだかグッとくるものがあるなー」


 それから両ほおに手を当て、ぱぁぁっとうっとりしだす。


「おい、なにを勘違いしている。オレは確かにリルを探していたが、それは色恋沙汰じゃ断じてなく、ただ単にあんたの昨日の言葉が気になっていただけだぞ」


 彼女にしてはいいことかもしれないが、陣にとっては勝手に事実を捏造(ねつぞう)されている事態。よって不服の意を示す。

 するとリルは上目遣でからかってきた。


「ふふっ、なに、なにー、テレ隠しかな? ジンくん? お姉さんの前では素直になってもいいんだぞー?」

「イラ、なに調子に乗ってんだ? フンッ」


 得意げにウィンクしてくるリルの頭に、軽くチョップをくらわす。


「痛い!? ちょっ!? 理不尽な暴力がわたしを襲ったんだけど、これはいったいどういうことかな!?」


 リルは両手で頭を押さえ、少し涙目になりながら抗議する。

 その姿は見るからにいたいけな少女そのもの。ゆえにほんの少しばかり罪悪感のようなものを感じなくもない。だが本人いわく一つ年上らしいので、そこまで気にすることはないだろう。


「うん? なんかむかついたから、つい」

「――うぅ……、確かに調子に乗ったのは謝るけど、女の子に手をあげるのはいただけないなー」

「いや、これでも自分を押さえて、手加減してるんだからありがたく思えよ。本来なら魔法の一、二発打ち込んでるところだぞ」

「そうなの? ありがとう。――って、なんで謝ってるのわたし!? わるいのはそっちだよね! ――むー、せっかくいい気分だったのになー」


 この程度で済んだと感謝するリルであったが、すぐさまおかしいことに気付き文句を。そしてほおを膨らませ、すねだす。

 その姿はやはり外見相応の女の子。もはやお姉さんの欠片もなかった。


「そんなことどうでもいいから、昨日の話の続きをしろ」

「相変わらずひどいね、ジンくんは。それにせっかちさんだよ。もう少しお姉さんとのお話を、楽しもうとは思わないのかな?」

「興味があるのはリル本人じゃなく、あんたが知ってることだ。これは勘だが、オレが欲っしてる答えをリルは持ってるはず。だからなにがなんでも聞き出させてもらうぞ。たとえ力づくになったとしてもな」


 あきれるリルに対し、マジの目つきで告げる。

 彼女がただ者でないのはわかっていた。言葉ではうまく説明できないのだが、彼女はとにかく異質。突然消えたこともそうだがそれ以前に、リルからは星詠(ほしよ)みに似た力の波動のようなものを感じる。そしてそれは陣が追い求めていたものの気がして止まないのだ。


「ふふっ、なかなか面白い冗談を言うね。本当にわたしに勝てるとでも思ってるのかな?」

「ッ!?」


 リルのんだ瞳が青白く光った瞬間、思わず後ずさりしてしまった。

 なぜなら彼女の雰囲気が急に一変したからだ。それは星詠みに垣間見れる寒気。あまりにも人智(じんち)を超えた力ゆえ、認識することに恐怖を覚えてしまう。


「確かにジンくんはすごいよ。でもわたしと比べるとまだまだだね。だってキミはまだ、世界の真理に足を踏み入れる段階なんだもん。その最果てにまで到達したわたしに、(かな)うなんて道理はないんだよ?」


 リルはまるで子供をたしなめるかのように、現実を突き付けてくる。

 彼女の言う通りだ。それもそのはず、リルの垣間見せるオーラは尋常ではないのだ。もはやこれほどまでに濃い深度の力を見たことがなかった。そう、それほどまでに陣とリルでは、立っている位階そのものが違う。いうならば赤子と大人。しかも向こうは極限までに完成しきった、規格外の存在といっていい。


「ふふっ、なーんてね! 彼女ならともかく、今のわたしだとそう思うようにいかないんだよねー。――だってわたしは……、くす」


 飲み込まれるほどの圧であったが、リルがいたずらっぽく笑い出したことで四散した。そして彼女はどこか自嘲気味につぶやき、海の方を遠い目をして見つめだす。その先にはちょうど福音島ふくいんじまの姿が。

 声をかけようとするが、今の彼女の雰囲気から(はば)まれてしまう。なので陣もリルと同じく、福音島の方を見ることに。波の音が辺りを支配し、そよ風が二人の髪を揺らす。しばらく無言で眺めていたかと思うと、リルがふとたずねてきた。


「ねえ、ジンくんにはこの世界がどう映る?」






次回 リルの問い






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