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異世界に来たけど義母が5人もいた上に結構ハードモードだった。  作者: 雨露口 小梅
第二章 戦勝記念式典(ヴィクトリー・セレモニー)
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◇34 脱出 鎧(アーマー)

 【城壁外街 宿場】

 【戦勝記念式典翌日 夕】



 全ての指示を終えて、夜まで時間を作った俺は、レディ=マホとイルチの同室の部屋で休んだ。


 本当は起きていて、事態の推移を見守りたかった。

 しかし体を休めるのも戦争の重要な任務だった。

 いざという時、俺が動けなければ全てが水泡に帰す。

 だから無理やり寝た。

 いや、ベッドに横になるだけで体は自然に寝た。


 そして俺はまた夢を見る。

 いつも見る妙に統一感のある世界の夢。


 俺は玄関で布と妙な素材で出来た靴を脱ぎ捨てると、木で出来た階段を昇っていく。

 やはり木で出来た廊下を進み、木で出来た扉を開ける。


 そしてやはり木で出来た机の上を見ると、版型に揃えられて本が積まれている。

 俺が冷や汗が出る。

 恐る恐る見ると、俺の予感は当たっていた。

 裸体を晒した女の写実的な絵が描かれた表紙が目に入る。


 妙に綺麗な部屋。

 俺の母親が部屋を掃除したに違いない。


 今はこの硝子と金属製の薄い板の中に、新しい女の裸体は入っているが、この懐かしい本の表紙を見て、俺というものが掴まれた事を意味していた。


 年上モノ。


 俺は明日、大学に行くときにどう母親に顔を合わせればいいのか。

 そして俺は目覚めた。


 俺の邸宅のベッドに比べれば、固くて板とも呼べる寝心地の悪いベッド。

 それでも戦場や馬車に比べれば天国には変わりない。

 俺の邸宅の基準がおかしいんだ。


 夢のせいで休めたのか休めなかったのか。

 なんとも中途半端な仮眠だった。

 夢の中の物に具体性が薄れてきたのは、何故だろうか?


 そんな半覚醒の状態で今朝と似たような感触を確かめる。

 ベッドを独り占めしているのではなく、誰かと分け合っている感触。

 これに揺れが加われば馬車と錯覚する。


 リンヴェッカー。シュール。

 しかし体をくすぐる感触はヌワに似ている。

 ただヌワは体が大きく、俺が体を縮めなければならないのに対して、この羽毛を持つものはまるで【お母様】のように芯が細い。

 それだけベッドに余裕がある。


 そして俺は手の感触に、昼のレディ=マホの話を思い出す。

 【人間】の胸と違って砂が詰まったような感触がする。

 まさのその通りだった。

 少しのチカラを込めても指は沈まない、

 しかし更にチカラを込めれば、指先は沈む。

 揉み絞ればこの形を変える事が出来るだろう。


 この意識が俺を目覚めさせた。

 目の前には白目の無い、瞳だけの目があった。

 俺は確信する。視線を下げればレディ=マホは裸で寝ている。


 「出発の準備は出来ているか?」


 長いまつ毛を持つ瞼が悲し気に半分閉じられた。

 そして俺はイルチの思いっきり俺に向けて勢いを付けた尻もちで覚醒した。


 「ぐはっ!」


 外は既に夜の帳が落ちていた。

 イルチは俺に加減が無くなってきている。





 イルチをどける。

 【うたうもの(シンガー)】は人間と違って酷く軽かった。


 俺は裸で横たわるレディ=マホに掛布をかけて、俺の邸宅に置いてきた鎧と剣がある事を確認する。

 眠る前に頼んだものがある事に満足する。


 布製の鎧下は、新しい物に変えられていた。

 昨日まで身に着けていた鎧下では、臭くて俺も身に付けられないかもしれない。

 俺は俺の従僕メイドに感謝して身に着ける。


 弾力のある鎧下を身につけると体が引き締まる。

 そして、鎖帷子のシャツを身に着ける。

 更に股間の部分が開いた鎖帷子を履いて、鎖帷子のシャツと金具で止める。


 そして股間当てを手に取ると、それも新品になっていた。

 見ると「母と従僕メイドより」と彫られてあった。

 俺は苦笑してベルトを回して金属製の股間当てを着けた。


 「ご主人様マイマスター


 甲冑を身に着ける為の皮ベルトを手に取ると、俺のその腕をイルチが掴んだ。

 お互いそのままの格好で、イルチが続ける。


 「また戦争に行くのですか?」


 イルチが俺の横顔をまっすぐ見つめているのがわかる。


 「……そうだ」


 イルチの手を振りほどくと皮ベルトを腰に回して金具を合わせ、皮で出来たスリングに頭を通して、肩と胸と背中をしっかり保持しているのを確認すると、皮ベルトにつないだ。

 これは使い慣れたものがそのまま入っており、据えた匂いがするが体に馴染む。


 「では私たちも準備いたします」


 レディ=マホがベッドから起きて、服を着る。

 もう腰帯と胸帯ではなく、俺が褒めた着物だった。


 「お前たちはシュールに従うんだ」

 「今度の戦いに【うたうもの(シンガー)】はいらない」


 「でも……」


 イルチが俺に反駁する。


 「足手まといになる」

 「もし俺の奴隷という意識があるのなら、このまま命令に従え」

 「自由人の意思があるなら、何が最善か考えろ」

 「【うたうもの(シンガー)】の身分はノイシェーハウ家が認めた」

 「お前たちは保護される。俺に媚び諂う必要はない」


 「そんな言い方って!」


 イルチが羽毛を逆立てて抗議する中、レディ=マホはイルチの肩に手を置くと、大腿部を守る腿甲キュイッスを屈んで手に取る。


 「ありがとう」


 俺はそれを手に取ると腿甲キュイッスを身に着けて腰ベルトとつなげる。

 レディ=マホは次に脛当て(グリーブ)を俺に手渡す。

 鎖帷子のない脛に脛当て(グリーブ)を当てる。

 次に膝を守る膝当て(パウレイン)。

 それが終わると、革靴の甲に足甲サバトンを巻いて留める。


 様々な主人に従って教養のあるレディ=マホは淀みなく俺に鎧を手渡す。

 それをイルチは黙って見ていた。


 下半身が終わると腰のフォールドを皮ベルトに付ける。

 そして胸を守る甲板プレートと腹部を守る板鎧ラメラーが一体になったキュイラスを被る。


 次に肘から下を守る前腕甲ヴァンプレイスを付け、上腕を守る上腕甲カノン、そして肘当て(コーター)を巻く。

 喉を守る器具ゴルケット甲板プレートに取りつけて顎が引けるか確認する。


 肩を守る肩甲スポードロンを付けて体の甲冑は完成する。

 俺は体を捻ったりして動きを確認する。

 問題ない。


 鎖で出来た頭巾コイフは好みではないので、厚い布で出来た帽子を被る。

 脇に頭甲ヘルムを抱えて準備は完成する。


 「では、後はシュール達に従うように」

 「それが俺の安心になる」


 イルチは再び羽毛を逆立てて怒る。

 レディ=マホは深く頭を下げた。



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 次回 脱出 母達


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