◇33 脱出 行動開始(ビヘイビア・イニシエイション)
【城壁外街 宿場】
【戦勝記念式典翌日 午後】
宿場に戻るとホリオンを始め、主だったものを集めた。
「全員に聞いてほしい」
「今夜中にヴァシュリンガー増強中隊と【うたうもの】を、郊外のノイシェーハウ派遣軍の宿営地に移動させる」
「直ぐに荷造りをするように」
「夜を待って取り巻いている群衆が散り次第、ホリオン。お前が指揮を執って向かえ」
「見張りに怯えるのは俺の趣味じゃない」
「ホリオンとシュールにはまだ話がある、残っておいてくれ」
「わかりました」
ホリオンが後ろに控えている参謀に指示を出す。
「モニオムとコルネスティは今日、ノイシェーハウのドロッセル様に会いに行け」
「リンヴェッカーとシュールはその後、大お婆様との約束を果たせ」
「リンヴェッカー。後で案内してやってくれ」
「わかりました。ご主人様」
リンヴェッカーを始め、4人が了解する。
そして俺はホリオンとシュールを伴って、表に止めてある馬車へ乗り込む。
戦勝記念式典からまだ1日。
流石に道のどこまでも埋め尽くす群衆という事は無かったが、それでもまだまだ多かった。
やはり夜も遅くならないと動けない。
人を乗せていない馬車に乗り込むと、声を潜めてホリオンとシュールにこれからの計画を話す。
外でヌワが見張っている筈だ。
「明朝。会社が用意した馬車と護衛に守られて、【うたうもの】と俺の従僕達と遺骨が出発する」
「それにはシュールとお前の小隊も同行してくれ。お前が統率しろ」
「行程と先導は全て会社が行う」
「わかりました」
シュールが頷く。
「ホリオン中隊は俺と行動して貰う」
「目的目標はまだ話せないが出発はやはり明朝」
「俺とリンヴェッカーに分隊をそれぞれ貸してもらうぞ」
「機動力が命だ、中隊全員が馬車に乗れるように派遣軍に融通してもらえ」
「苦情はビルゲン大将へするように」
ホリオンが表情を引き締める。
「俺とリンヴェッカーはある目標を秘密裏に急襲する」
「これはまだホリオンとシュール、リンヴェッカーだけの秘密だ」
「兵にも話すな」
「ホリオンの中隊は、モニオムとコルネスティを保護して、シュール達から距離を持って進んでくれ」
「しかし何かあった時はすぐにシュールに駆けつけられる距離は保つように」
「道中の護衛は全て会社に任せる」
「出来れば戦闘は行いたくない」
「内乱ととられますからね」
ホリオンが早口で挟んでくる。
「その通りだ」
「宿営地の中で派遣軍に紛れて、他の領家に悟られる事がないように、完全武装だ」
「行動期間は1週間。それ以上の物資は会社に任せる」
「しかし1週間の内は、たとえ水の一滴であっても会社の物資には手を付けるな」
「シュールと俺達は無関係だ」
シュールが少し座りなおす。
今日一日行動して、俺が何をするのか大体見えてきたようだった。
「別動した俺とリンヴェッカーはツァジン家の会社支社でシュールとホリオンに合流する」
「ホリオンとはその前に出来れば合流したい」
そして俺は一拍おいて、シュールとホリオンをまっすぐ見る。
「リンヴェッカーと俺が来なかった時は……」
「そのまま故郷へ行け」
※
俺が馬車から降りると宿場の玄関からソチェニが出てきた。
「ヴァシュリンガー。まだ戦うのか?」
「生き残るために」
俺はソチェニの肩を叩いて抱き寄せる。
「お前もそうなんだろう?」
そのまま強く抱きしめる。
この戦いで最も変化の激しかった男なのではないかと思う。
初めてあった時は虚勢を張り。
迷い後の様に俺の後をついてきて、谷の戦いでは初めて自分で動いた。
谷の即席の障害物の上では俺に並び。
そして森の埋伏では兵を助けようとして適わず泣き。
遂には強襲を志願するまでになって。
却下された後は300の負傷兵と戦死者を守り切った。
そして最後の戦闘でも生き残り、今では領民一人に対し無力感から心を痛めている。
更に強く抱きしめる。
間違いなく俺の友だった。
「ノイシェーハウのドロッセル様がお前に会うそうだ」
「プレブ家はマリーエンロッゲンの風下についているぞ」
「俺は敵じゃないのか?」
「そのマリーエンロッゲンに先に会うのか、自分の父親に先に会うのか」
「それとも大お婆様に先に会うのか決めておけ」
ソチェニが俺の体から離れる。
「俺はまだこの部隊と行動している」
「マリーエンロッゲンには会う気にもならない」
体は離れてもお互いの手は放していなかった。
「そうか」
「なら今晩リンヴェッカーとシュールと共に上屋敷へ行け」
「俺は同行出来ない」
「わかったよ」
「俺がこの部隊に世話になるのも終わりなんだな」
何かを察したソチェニと再び抱き合い、お互いの背を叩く。
「話せない」
「いいさ」
ソチェニが叩く俺の背中は痛く、俺が叩くソチェニの背は悲しい金属音がした。
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次回 脱出 鎧
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この回がまた記念すべき回になりました。40000PVを数えましてとても嬉しい回となりました。
正直好きなように書いていますが、それでも読んで下さっている方がいるという事実は、こそばゆい様な、嬉しい様な。でもやっぱり読んで貰いたいという否定しようがない自己顕示欲が刺激されて、少し自己否定してしまうような、ないまぜの感情が呼び起こされます。
が、これからも日ごろのストレス解消に好き勝手書かせて頂きます。
これからも自分勝手な小説にお付き合い頂ければ幸いです。
雨露口小梅




