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異世界に来たけど義母が5人もいた上に結構ハードモードだった。  作者: 雨露口 小梅
第二章 戦勝記念式典(ヴィクトリー・セレモニー)
69/212

◇25 ミク 政治の季節(シーズン・オブ・ウィンター)

 【キャッスル・会議室】

 【戦勝記念式典翌日 朝】


 キャッスルの会議場の中には、そうそうたる貴族が集まってた。

 正面の左側には王の代理で「王の杖」と呼ばれるマリーエンロッゲン。

 そして右側には王太子スラン・エスヌー。


 テーブルの側面は上座から有力領家が順に交互に並んで座る。

 右側が上手で左側が下手になる。

 ここではノイシェーハウはテーブルの左側の一番上座にいた。

 すなわち、マリーエンロッゲンの直ぐ隣だ。

 出席しているのはドロッセル・ノイシェーハウだった。


 「王都ゴールドキャッスルの中で勝手に軍を動かしている」


 「戦勝記念式典の途中で動けなくなってしまったと聞いている」

 「王家に弓を行くつもりは毛頭ないよ」


 鋭く睨むマリーエンロッゲンをドロッセルは軽く流す。


 「つまりまだ戦勝記念式典の続きだと?」


 「検査の広場から出ていないから、そのように考えるのが妥当だね」

 「王家に弓を引くのなら、この老いぼれがノコノコでてきたりするもんか」


 「いつ王都ゴールドキャッスルから出ていくんだ?」


 「民衆の包囲が解けてからだろうね」


 王都ゴールドキャッスルの治安維持はマリーエンロッゲンが担当している。

 暗にお前が無能だから終わらせられないのだと、チクリと指す。


 「ふん。まあいい。市街警備兵シティワッチも増員しとくぞ」


 「何なりと」

 「あんたからけしかけなければ、あの子は戦わないよ」


 「それとだ。あの亜人デミヒューマンの配分だが……」


 「それはお前さんが、手放す宣言をしたじゃないか」

 「そしてお前さんが見捨てた兵も」


 「なら、このマリーエンロッゲンが援助した物資や武器の補償だが……」


 「おかしいね。装備品は全部遠征軍のものだろ?」

 「各家に装備が帰属するんなら、今回の戦費の大部分を担当した当家に返却願いたいね」

 「金でも別なものでもいいけれどね」

 「当家の金で随分潤ったんだろ?」


 王国にあって唯一王家が降したのではなく、自ら降ってきた領家。

 その張本人に対して対処できるものは誰もいなかった。


 各貴族は黙りこみ、マリーエンロッゲンも面白くなさそうな顔をする。


 「では来春の遠征について話し合いたい」


 マリーエンロッゲンは話題を変える。

 それをまたしてもドロッセルが潰す。


 「当家抜きでやっておくれ」

 「家はこれから冬の戦を迎える」

 「年がら年中戦争やってられないよ。金が続かない」


 ドロッセルが初めてマリーエンロッゲンの顔を見る。


 「まだやりたいって言うんなら金出すけどね」

 「その時は物の値段が上がるよ」

 「家はニコニコ現金払いだ。付けは受け付けないよ」


 王国の最高政治機関。「小会議」はこれで終わった。





 その頃、王の謁見の間では、ガルテン・ノイシェーハウが跪いていた。


 「まだドロッセルにまだ尻を敷かれているのか?」


 壇上から声をかけるのは、この王国の主ティルフ・エスヌー。

 まだ初老の粋にありながら、既に古老の様相をしていた。

 かつてドロッセル・ノイシェーハウと火花を散らしあった頃の面影はなかった。


 「祖母は英傑です。王国に降る決断をして、戦争を避けました」

 「民の平和と安寧は国の礎です」


 「お前の父はノイシェーハウの軍人だったな」


 「はい」


 「するとお前も戦場ですり減っていく定めになるのか」

 「当主はあのアクティムとかいう孤児か?」


 「そうはならないかと」


 「その根拠は?」

 「無いだろう?」


 ガルテンはただ頭を下げているだけだった。

 確かに血筋だけでは、当主の座は遠い。

 何といっても、現当主の叔父ロストッカーは次々と権力を手放している。


 「どうだ」

 「私が後ろ盾になってやってもいいが?」


 ガルテンは頭を上げた。

 この王の残り寿命は短い。

 しかしドロッセル(グランマ)の残り寿命も短いだろう。

 自分に残された時間も多くない。

 アイヒェン(いとこ)ヴァシュリンガー(孤児)で子供を作れば目が無くなる。

 その前にアイヒェン(いとこ)王太子サディスティックプリンスに差し出さなければ……。


 「王に、改めて忠誠を誓います」



 ※



 【共和国 東方軍集団管区・タラソナ地方】


 王国との激闘の地、国境地帯のエリソンドから遠く離れて東方軍集団管区の半ばのタラソントまでやってきた。


 一人南方軍集団の軍管区、南コバスへ旅を続けるルデェシュティイ・ミク大佐は後ろを振り返る。


 湯あみを絶やさず、ほぐれていた金の髪は皮脂でまとまり、肌も日に焼けて幾分かくすんでいた。

 そして軍服は絶えず体臭を放っている。


 国境の山脈はもう見えない。

 寒気が溜まる低地へ降りてきたからだ。

 ここから首都まではずっとなだらかな下り坂が続く。

 寒気がひときわ厳しい国。

 それがタルルンジェニ民主共和国の大雑把な地理だ。


 馬の背に揺られながら、冬の気配を1日1日と感じてる。

 眠気を誘うなだらかな牧草地帯がどこまでも続く。

 ただ一人騎乗して南コバスへ向かう旅。

 ひたすら南、南へと進む。


 東方軍集団の憲兵隊は自分の父であるミク元帥によって抑えられているとはいえ、首都によれば内務省秘密警察スンペトルによって、逮捕される。


 革命によって皇帝が倒されたと言っても、地方まで足を延ばせば旧時代の慣習は根強く残っている。

 村によっては帝国の紋章がまだ刻まれていたりする。

 以前の私だったら、そんな事は許さなかっただろう。

 しかし今の私にはどうでもいい事だった。

 もっと大きな夢を持っている。


 馬がぬかるみに足を入れて僅かに滑る。

 手綱を握って、馬の立て直しを手伝ってやる。

 農道と言ってもいい、道だった。


 そんな道を進む。それには訳がある。

 なるべく人目につかない様にするためだった。

 内務省秘密警察スンペトルや東方軍集団憲兵隊だけではない。

 地方憲兵や盗賊、夜盗、追剥などの犯罪者からも目立たない様にするためだった。


 大佐の軍服を着た女が一人で旅をしている。

 疑われるのは勿論、格好の獲物だ。

 だから国家の整備した大きな街道を避けて進む。

 宿泊は野宿と東方軍集団の散在する屯舎。


 旅費は都度支給されて、屯舎から追い出される。

 間違いなく厄介者扱いだった。


 でもそれでも良かった。

 なんといっても南の地にはアクティム・ヴァシュリンガーが待っているような気がする。

 今すぐにでも馬を飛ばしたい。

 しかしはやる気持ちを抑え込む。


 あの男への思いを吐き出しては、幸せが逃げていくような気がする。


 地平線にあの敵将を思い描いているルデェシュティイ・ミク大佐が進む道は、まだまだ続いていた。


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 次回 トラブル


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ご評価を頂きました。誠にありがとうございます。

これを糧により一層精進して参ります。

               雨露口 小梅

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