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異世界に来たけど義母が5人もいた上に結構ハードモードだった。  作者: 雨露口 小梅
第二章 戦勝記念式典(ヴィクトリー・セレモニー)
67/212

◇23 上屋敷 4回目の命(ライフ・フォー)

 【ノイシェーハウ上屋敷・ヴァシュリンガー邸】

 【戦勝記念式典当日 夜】



 【お母様】に引きづられて廊下に出ると、警備兵ワッチ以外俺の関係者が集結していた。

 従僕メイドが廊下の左右に分かれており、【お母様】が俺と腕を組んでその真ん中を歩く。


 「アクティム様。良くご無事で」

 「アクティム様。おかえりなさいませ」

 「アクティム様。生きていて下さって良かったです」

 「アクティム様。なんでもお申しつけ下さいませ」

 「アクティム様。本当におかえりなさいませ」

 「アクティム様。ご無事をお祈りしておりました」


 先ほどの鉄仮面とは打って変わって、微笑むもの、涙ぐむもの、笑顔を隠さないもの、泣き崩れるもの。

 様々な表情の従僕メイドがいた。


 「家族ファミリーの元に帰ってきたな」


 俺を後ろから頭を撫でる者がいる。

 【母さん】だった。

 シュールの様に、笑顔を隠さないが鼻の頭は赤くなっていた。


 「さぁ。お祝いだ」


 【マム】の黒装束が先に歩く。


 「ともかくおかえり、ティム」


 【母上】の軍靴が床を叩いて続いていく。


 「私たちもいきましょ」


 【お母様】が俺の腕を取って、引っ張る。


 これが俺の家族ファミリー

 記憶もないが実感が胸の奥に沸き上がる。


 長い長い廊下を進んで、上屋敷から渡り廊下を渡って、別館へと来る。

 これが俺の家。


 つくりは質素で中にも入っていないが、心の底から安心感が沸き上がる。


 「さぁ。アクティム(マイボーイ)……」


 俺の顔を覗きこんだ【お母様】が黙り込む。

 どうしたんだ?


 しばらくして俺は自覚した。

 俺は泣いていた。

 気づいてしまうとそのまま気持ちがとめどなく溢れてくる。


 「アクティム(マイボーイ)……」


 俺の膝は折れて、両手を床に着いた。

 鎧が石の床を叩く音がする。


 「帰ってきました……」

 「帰って来れました……」


 「あぁ。良かったな」

 「本当によかったな」


 【母さん】の声だ。


 「たくさんの人が死にました」

 「本当にたくさんの人間が死にました……」


 「戦争だからな」


 【母上】の声。


 「俺がもっとうまく指揮を執れば」

 「俺がもっと有能だったならば……」

 「こうやって家族の元に帰る事が出来る部下がいたのに……」


 「精いっぱいやった上での事だ」

 「人間は神にはなれない」


 【マム】の声。


 「俺だけ、帰る事が出来て良かったのでしょうか」

 「俺だけこうやって家族に迎えられていいのでしょうか」

 「死んでいった部下を残して、こうやって安心してもいいのでしょうか」


 「アクティム様……」


 従僕メイドの誰かの声。


 「申し訳ない」

 「死んでいった部下と残された家族に申し訳ない」

 「生きて返してあげられなくて申し訳ない」

 「死なせてしまって申し訳ない」

 「生きて返す事が出来なくて申し訳ない」

 「申し訳ない……申し訳ない」

 「申し訳ない」


 俺の頭が抱かれる。

 とても柔らかい甘い香り。

 【お母様】だ……。


 「アクティム(マイボーイ)。辛かったですねアクティム(マイボーイ)


 俺は【お母様】の胸に抱かれて、頭のどこかが切り替わった。


 「最初の戦闘でブルネンが死にました」

 「俺は20名の一人としか認識していなかった」

 「ブルネンの母は、息子の遺骨を抱いて泣きました」


 「谷の戦闘ではツムが死にました」

 「あんな大きな体で殺されるなんて思いもしなかった」


 「弩砲(バリスタ)の直撃を食らった部下は千切れて飛んでいきました」

 「投石器(カタパルト)で片足を失った部下は、私の手の中で死にました」

 「弩弓(ボウガン)で傷ついた部下を助けようとしたのに……最後の最後で頭を失いました」

 「森の中では部下が生きながらに野生動物モンスターに喰われました。必死に声を抑えながら喰われました」

 「シュラーは最後の最後まで私を守りました。俺を守って死にました」


 「俺もたくさんの敵兵を殺しました」

 「みんな家族がいて、帰るところがあっただろうに」


 「アクティム(マイボーイ)。もういいのよアクティム(マイボーイ)


 俺の頭がきつく胸に抱かれる。


 「腐ってもいいから、家の近くで死にたいといった兵を戦場で焼きました」

 「殆ど生き残れる見込みがないのに、帰りたいという兵を連れていく事にしました」

 「みんな家に帰りたかったんだ」

 「そしてみんなを俺は殺しました」

 「100人ほぼ全てを、俺は俺自身の手で殺しました」


 「だって苦悶の声に俺が耐えられなかったから」

 「慈悲を与えるなんて嘘だ」

 「俺が耐えられないから、俺がとどめを刺したんだ」

 「ただ家に帰りたい部下達を殺したんだ」


 「クライナーも俺が殺しました」

 「自分一人が手当てを受けていては、他の兵が頑張れなくなるからといって、治療を受けなかった」

 「なんで治療の手立て位用意してやれなかったんだ」

 「俺はなんて無力なんだ」

 「俺はなんて無能なんだ」


 「生きていても手足を失うものがいる」

 「俺は彼らに報いなければならない」

 「俺の命令に従ったんだから……」


 そこで俺の意識は途絶えた。



 ※



 -「小僧(あの子)は混乱している」


 ---「アクティムは記憶がないようだね」


 ----「報告では砲撃を受けて、打ち倒されてから記憶が定かじゃないようだが」


 ---「死んだのだろう。アクティムは」


 --「やっぱり」

 --「私たちの息子マイボーイは死んだのね」


 -「生きている。生きてここにいる」


 --「だって前の記憶がないじゃない」


 ----「私たちが覚えている。抱いて育てた記憶」


 --「……そうね」


 -「支えていこう」


 ---「もう4回。アクティムはもう死ねない」

 ---「私たちと死神との契約は全て使われた」


 --「なんとしても守らないと。私たちの息子を」


 ----「母親というものは、心配して心配して、気が休まらないわね」


 --「見返りもなし」


 -「貰ってるじゃないか」

 -「子を持つ喜びを」


 ---「子供は親から旅立つもの」

 ---「今度の命はどこの世界から、どんな子が選ばれたんだろうね」


 ----「いい子だ」


 --「5つの命。大事にしましょう」


 「「「ええ」」」


----------------------------------------------------------------


 次回 上屋敷 違う世界


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