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異世界に来たけど義母が5人もいた上に結構ハードモードだった。  作者: 雨露口 小梅
第二章 戦勝記念式典(ヴィクトリー・セレモニー)
59/212

◇15 戦勝記念式典 暴動(ライオット)

首都ゴールドキャッスル 外壁街】

【戦勝記念式典当日 昼】


 期せずしてホリオンとシュラー。モニオム。コルネスティが俺のところに集まって来る。

 皆顔が引きつっていた。


 「ホリオン。ソチェニ、ジアルマタとお前の2個分隊を先行させろ」

 「武装馬車アタッカーを橋の上で横転させて道を塞げ」

 「1個分隊で橋を止めて、1個分隊は川沿いの脇道を確保しろ」

 「それぞれの指揮はソチェニとジアルマタで決めろ」


 「復唱するぞ」


 「いらん! 急げ!」


 ソチェニの復唱をぴしゃりと遮る。

 ホリオンは素早く分派させる部隊に命令を出す。

 ソチェニはホリオンに頷くとジアルマタと合流しに駆けていく。


 「モニオム! シュールと連携して、【うたうもの(シンガー)】と駆け抜けろ」

 「目標は川沿いの脇道だ。シュールに伝令だ。合図と共に走れ。使うのは盾だけだぞ」


 「了解しました中隊長殿」


 モニオムはすぐに【うたうもの(シンガー)】の言葉で指示を出し始める。

 見ると武装馬車アタッカーと武装した兵が駆けていくのが見える。


 「さぁ。コルネスティ。お前は【うたうもの(シンガー)】の尻を守って行け」


 コルネスティが何か言おうとするが、俺はもう次の命令に映っている。


 「ホリオン。後方警戒馬車テールガンは最後に横転させる」

 「指揮馬車ヘッドクォーター警戒馬車ミッドマンは脇道での障壁にする」

 「脇道の状況が不明だ。指揮馬車ヘッドクォーター警戒馬車ミッドマンはその時に柔軟に運用する」


 俺の命令を聞き終わらない内にホリオンが自分の中隊に命令を出す。


 「合図と共に盾で群衆を外に押し出すぞ」


 横目で人間の将棋倒しが起きた場所に目をやる。

 既に混乱は拡大し始めていた。すぐここにも飛び火する。


 「中隊長殿!」


 モニオムの絶叫が聞こえる。


 「ホリオン。押し返せ」


 「押し返せぇ!!」


 ホリオンの命令が飛ぶと共に一番外側に配置しているホリオン中隊の兵が群衆を押し出す。

 盾の隙間から突き出される両手が掴みかかるが、兵の圧力に負けて隙間が空く。


 「モニオム行け」


 500の【うたうもの(シンガー)】とシュラー小隊が駆けだす。

 ホリオン中隊の兵はまだ持ちこたえているが、群衆は体がぶつかり合う事によって、少しづつ気が荒くなってきている。


 【うたうもの(シンガー)】が馬車列を抜けて街道を走り始めた。

 もうホリオン中隊の警護がない。

 亜人デミヒューマンへの未知の恐怖と、シュラー小隊。コルネスティに頼るしかない。


 群衆の中に俺とホリオン中隊300、重傷者、遺骨が孤立する事になった。


 「ホリオン。貧乏くじを曳かせたな」


 「いえ、やっと本当に仕事が出来ます」


 ホリオン中隊が開けた穴がじりじりと埋まりだす。

 【うたうもの(シンガー)】が抜けた空間は、もう守り切る必要がない。


 「空間をこれ以上押し込まれるな」


 「中隊! 持ちこたえろ。止まるな!」

 「中隊前へ!」


 ホリオンの命令で止まりかけていた馬車列が動き出した事によって、群衆の圧力も複雑に動き始める。

 進行方向の群衆に圧力がかかり、馬車列の半ばで圧力が返って来る。馬車列半ばを守る兵は必死になって盾で圧力に耐えている。


 「固まれ! はぐれるなよ!」


 ホリオンとそれぞれの小隊長が必死になって状況把握に努めている。


 そして俺が立つ後方警戒馬車テールガンが通った後には空間が開き、そこに押し出される人が何人か転びそうになる。


 じわじわと進む馬車列。

 俺達を囲む群衆は声一つ上げないが、ぶつかり合う体と圧力は激しさを増していく。

 全身から汗が噴き出る。


 「ホリオン。後部の兵を圧力の高い馬車列中頃に集めろ」

 「盾の壁を食い破られないようにしろ」


 直ぐにホリオンから命令が飛んで、俺達を守る兵が前方へ向かう。

 これで俺達は丸裸になった。

 馬車列の中頃には兵が集中して、群衆からの圧力を跳ね返す。

 そして圧力の空白地帯になった後部馬車列に群衆が詰め寄って来る。


 俺は前方を見る。

 見事橋の上で馬車は横転していた。

 横転している馬車を中心に1個分隊が横列になって盾を構えている。

 【うたうもの(シンガー)】は無事に脇道に入る事が出来たようだ。姿が見えない。


 橋からの群衆の供給がなくなって前方の圧力が減り、馬車列の後方に集中する。

 橋はもう目前だ。


 「あっ!」


 ホリオンの声がする。


 見ると転んだ兵が群衆に踏みつぶされそうになっている。

 直ぐに他の兵が足を引っ張って馬車の脇まで引きずり出す。

 身を起こした兵も助けた兵も盾を失い、その場所にぽっかりと穴が開く。


 再び群衆の波にのまれそうになった2人は馬車に飛び乗る。

 盾の壁の崩壊は、後続の兵の上に圧力がかかり、その2人以降の兵の壁が突き崩されていく。

 次々と馬車に飛び乗る兵。

 このままでは、馬が重みで曳けなくなる。


 「ホリオン。走らせろ!!」


 俺の命令と共に歩みは早足になり、車列は駆け始めた。

 群衆もそれに合わせて走ろうとするところで新たな混乱が発生する。


 馬車列の脇で守る兵も盾で押し返すのではなく、盾を群衆にぶつけて走っていた。

 そして先頭馬車が脇道に折れていく。


 「よし! 橋に到達したぞ!」


 俺は馬車から降りた。

 直後、馬と切り離された馬車が兵によって押し倒された。

 馬車の横転は、その音響と迫力によって、俺達を追いかける群衆の壁になってくれた。

 俺もホリオンも他の兵と共に馬車列を追いかけて走る。


 横転した馬車を迂回し、俺達を追いかける群衆も走り出していた。

 既に壁役にした馬車の上に立つ群衆も見てとれる。


 脇道へホリオン中隊の兵と馬車が入り、代わりにソチェニとジアルマタの分隊が盾を持って横隊を組む。


 「よし!」


 どうやら脇道はうまく袋小路になってくれている様だ。幸運だった。

 先に到着したホリオン中隊の兵も盾を持って横隊を作る。

 それを見て群衆の走る速度が落ちる。


 ついにホリオン中隊は俺も含めて、その横隊が守る脇道に入る事が出来た。


 「ソチェニ! ジアルマタ! 剣を抜け!」


 俺はすぐに命令を出す。

 鞘の中を走りながら剣が抜かれる硬質な音が無数に響く。

 その光景を見て、群衆の歩みは完全に止まった。


 「みんな。感謝する」


 俺は剣と盾に守られて振り返ると、無言の群衆の注目を浴びているのがわかった。



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 次回 戦勝記念式典 民衆の思い


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