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異世界に来たけど義母が5人もいた上に結構ハードモードだった。  作者: 雨露口 小梅
第二章 戦勝記念式典(ヴィクトリー・セレモニー)
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◇13 戦勝記念式典 群衆(クラウド)

【戦勝記念式典当日 昼 城壁内街】


 「お前、俺の紹介を忘れていただろ」


 ソチェニが鎧を鳴らしながら駆け寄って来る。

 もう広場は抜けていて、貴族街の王の街道を歩いているから幾分気が抜けている。

 ホリオン中隊は引き続き警戒に当たっているが、【うたうもの(シンガー)】も広場で何もなかった事で安心はした様だった。


 「緊張していた」


 俺は苦笑を返した。


 「嘘つけ」

 「しかし表に出なくて良かった。俺まで喧嘩を売った事になるからな」

 「これからどうする?」


 ソチェニもどことなく浮かれている。


 「宿営地で叔父上の世話になるつもりだ」

 「原隊だしな」

 「それに俺は大所帯だ」


 2人で何はともなく笑う。

 お互い重荷を下ろす事が出来たのだ。


 すると先を行く車列から街道の隅に寄り、順に停車した。

 前方からビルゲン叔父率いるノイシェーハウ派遣軍の受閲中隊が行進してくる。


 俺達はそれぞれ敬礼をして送った。

 馬上からビルゲンは俺に笑みを向けてきたので、俺も満面の笑みを向けた。

 そして色気のある敬礼を返して広場に向かって行った。


 そのまま俺達の車列は前進を再開して、貴族街の象徴である城壁を越えていく。

 平民街に出たところで、老紳士が俺に接触してきた。




【戦勝記念式典当日 昼 城壁外街】


 「アクティム様」


 俺は剣の柄を掴んで警戒の視線を強く送る。

 リンヴェッカーはその柄に手を重ねる。


 「安全です、ご主人様マイロード

 「ノイシェーハウ家家宰(スチュワード)ガンメリン様の部下で執事バトラーのフェヒター・バークマーです」


 俺はリンヴェッカーの保証で剣の柄から手を離した。


 「アクティム様、リンヴェッカー様ご無事で何よりです」


 「ありがとう」


 俺の記憶の中にはまるでこの老紳士の記憶がない。

 また苦手な分野がやってきた。

 向こうは俺の情報を持っていて、俺は向こうの情報がない。

 足早に歩きながら用件を聞く。


 「それで?」


 その老紳士は従軍の経験がないのか、ただ単によわいを重ねて俺達についてこれないのか、遅れがちになりながらも、俺の斜め後ろの位置を維持しようとする。


 「ドロッセル様より、アクティム様と護衛騎士ガーズの皆さまを上屋敷までお迎えするように言い遣ってまいりました」


 「そうか。それで俺の中隊は?」


 言及の無い部下達の処遇が当然気になり、問い返した。

 そして次の言葉はまた俺の心に火を燈すのに十分だった。


 「それは……。王都外の軍の宿営地で……」


 痛いところを突かれたようで言葉が弱い。


 「結構。では中隊全員で行くとしよう」


 俺の決断に老紳士が慌てる。


 「お待ちください! いくら上屋敷といえどもこの人数はとても収容できません」

 「それに死体や亜人デミヒューマンの群れをお屋敷に通すわけには……」


 段々と声が小さくなっていく。

 俺は歩みを止めてその老紳士の額に俺の額を付けた。


 「俺の仲間を愚弄するのか?」


 「し、しかし。ドロッセル様がお呼びなのはアクティム様達でして」


 使用人が主人の命令と現実の板挟みになる気持ちはわかる。

 しかし、俺にとってはこの中隊の方が重要だ。


 「ならば中隊全員の宿と墓地、魔法医を用意しろ」

 「俺はその宿から屋敷に向かうとする」


 「こ、困ります。ドロッセル様はアクティム様のご帰還に慰労の言葉をかけるべくお待ちしております。ドロッセル様をお待たせするのは……」

 「それに魔法医はノイシェーハウ家の専属で……」


 俺は掴んだ胸元を突き放して、その老紳士をよろけさせる。


 「俺の知った事ではない」

 「それをどうにかするのがお前たちの仕事だろう」

 「失敗しても殺されるわけじゃないだろ?」

 「リンヴェッカー。宿営地に向かうぞ」


 それだけ言うと視線を王の街道の先に向ける。


 「直ぐに用意させます! お待ちください!」


 執事バトラーのフェヒターが飛ぶように消えていく。


 ドロッセル様というのはそれほど影響力のある人間なのか……。

 俺は心に刻む事にした。

 そしてリンヴェッカーは隊列を止めた。


 「ご主人様マイロード。お怒りはわかりますが、いじめすぎです」

 「フェヒターの上司のガンメリンはノイシェーハウ家の政治を司っているんですよ」


 「そうか。それは悪い事をした」


 俺とリンヴェッカーは笑った。

 リンヴェッカーに深刻な表情はないから、まあ問題はないのだろう。


 「楽しそうなところ悪いが、周りを見た方がいいぞ」


 ソチェニが深刻な表情を俺達に向けてくる。

 ソチェニの警告を理解した時には……。


 俺達の部隊は群衆に囲まれていた。





 行進している時、俺達の車列からあれほど距離を取っていた群衆が、じりじりとにじり寄ってくる。

 まだ車列の前方と後方は街道に沿って開けているが、その空隙も直ぐに埋まる事が予想される。


 群衆は皆、表情を殺して瞬きもせず俺達を見ている。

 俺達を見る群衆に統一感はなく、男・女・若い・老人・子供・赤子を抱えている女。バラバラだったから、余計に狙いがわからない。


 俺もリンヴェッカーも笑顔が凍り付いた。


 まずい……。直感する。

 無表情の仮面の下に渦巻いている色々な感情が空気となって、異様な雰囲気を醸し出している。


 非常にまずい。

 俺は挑発しすぎたのか?

 全くこの結果を招いた理由が沸かない。


 考えられる危険性としては、最悪の事態が脳裏をよぎる。

 この群衆が暴徒になった時、俺達は皆殺しにされる。


 たとえ武器を持っていなくても万を超える人数はそれだけでチカラになる。


 この群衆の両手が俺達に掴みかかって来た時、俺達は終わる。


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 次回 戦勝記念式典 市街戦


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