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異世界に来たけど義母が5人もいた上に結構ハードモードだった。  作者: 雨露口 小梅
第二章 戦勝記念式典(ヴィクトリー・セレモニー)
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◇09 戦勝記念式典 歓喜の広場(プラザ・オブ・デライト)

【王国 首都ゴールドキャッスル 歓喜の広場】

【戦勝記念式典当日 朝】


 王都ゴールドキャッスルは遂にこの日を迎えた。

 僅かに雲が浮かぶだけの晴天。

 冬の気配を少しだけ含んだ涼しい風。


 ついこの間行われた共和国への懲罰を領民に報告し、戦勝を記念する日。

 領民から見れば、ただのお祭りの日。

 しかしただ生きる。それだけの事に多大な労力を払わなければならないこの世界にあって、数少ない自分を解放できる日。


 つまり街も領民も全てが明るい気持ちで過ごし、浮かれていた。


 王国の首都は巨大な城下町を有する都市で、昔は城壁に囲まれていたが、城壁を越えて街が外へ広がった為に、王の街道から通じる道に検問が設けられている位で、特に軍事上の防塁は設けていなかった。


 しかしながら城壁に囲まれた城内は貴族などが住む街で、城壁の外は内側から大商人など領民でもチカラのある順に町が作られている。

 ただし城壁に門はなく、自由に出入りが出来る。


 一番外側には軍の駐屯地と演習場が広がるが、その場所も次第にスラムに占領されつつある。

 そんな成長する街が首都ゴールドキャッスルだった。





 【共和国・首都 01特別市】



 バラがあしらわれた壁紙に囲まれた部屋で乾いた叩打音が響き、直後に軽いものが絨毯の上に落ちる音がする。

 部屋の壁際には何人かの黒い服を着た男たちが並んでいるが、その顔に表情は何もなかった。


 「貴様。おめでとうだと? 何がめでたいと言うんだ!」


 怒りの余り、分けた髪の乱れも直さず、血走った目をした男が床に向けて歯茎を剥く。


 「貴方……。統領。申し訳ございませんでした」

 「今次の侵攻は共和国の勝利によって終わったと聞いたものですから」


 床に倒れた中年の女性が頬を押さえながら詫びる。

 打ち倒されながらも、その出自の良さを伺える優雅な仕草が自然と出る。


 「あいつらは私の共和国を荒らしたんだぞ」

 「俺の命令は王国に侵攻して、思い知らせろ!だ」

 「それが、軍は侵攻する気はない。侵攻した連隊は撃退される」

 「どいつもこいつも革命精神に欠けている!」


 統領と呼ばれた男は部屋の中をせわしなく歩き出す。


 「やはりだめだ。軍は信用できない」

 「早急に党の軍を編成しなければ」


 ゆっくりとしなやかに床に倒れていた女性が立ち上がる。

 身が動くと上質なドレスも、まるでサラサラと音がするように優雅になびく。


 「民主革命は後戻りできない」

 「貴族や軍人どもを抑える為に、元王妃のお前を妻に迎えたんだぞ!」


 男がぐっと女に顔を寄せる。


 「少しは役に立て。さもないと王の様に首を晒すぞ」

 「負けた連隊長なんかを庇ってる暇はないだろうが」

 「元貴族の元帥に尻尾を振るってる場合じゃないだろう。え?」


 女性の顔に表情はなかった。

 くるりと背を向けて部屋を出ていく統領に頭を下げて見送る。

 そのまましばらくの時間同じ姿勢を続け、顔を上げると腰に留めてある宝飾品を外す。

 上蓋が開くロケットになっていた。

 そのロケットには、精緻な筆遣いで赤子の肖像画が書かれていた。





 【王国 首都ゴールドキャッスル 歓喜の広場】

 【戦勝記念式典当日 朝】


 首都ゴールドキャッスルと呼ばれる王都ゴールドキャッスルから王国の全ての貴族の領地に伸びる王の街道。

 その始まりであり、集結点でもある王城キャッスルの……。

 ────只のキャッスルと呼べば領家の持つ城の一般名詞ではなく、この首都ゴールドキャッスルにある王城キャッスルを指す。

 その王城キャッスルの麓にある歓喜の広場に通じる。


 王城キャッスルを文字通り目抜く、王の街道を派手な装飾に身を包んだ兵が行進している。

 貴族が上げる皮で出来た靴底の乾いた音。兵が上げる皮の靴で出来た平たい音。

 その音は見事に揃い、両脇にそびえる街の建物に木魂し、ひしめく熱狂的な民衆を頭上を圧した。

 その民衆の列は、軍の隊列と共にどこまでもどこまでも続いていた。

 圧倒的な民衆の数の先に、巨大な広場である歓喜の広場があった。

 その広場に領民は入る事は出来なかったが、通りから響く歓声に広場の主たちは満足していた。


 その広場の主たち。

 王と貴族と呼ばれる領家の一族が、石畳の広場から一団高い位置にある壇上に並んで座っていた。

 序列は注から王族、そして両脇を固める有力貴族たち。

 広場をぐるりと取り囲み、街道に近い下手が最もチカラの無い貴族になる。

 一段低い広場に立ち、その貴族を守るのは近衛軍ロイヤルガーズ護衛隊サーヴィストゥループス


 既に歓喜の広場に一番乗りしている近衛軍ロイヤルガーズ第一騎兵大隊ファーストウィングの選抜された兵で構成される受閲部隊は全て騎乗していた。

 この広場で騎乗が許されているのは近衛軍ロイヤルガーズのみ。

 マリーエンロッゲン等の有力貴族の受閲部隊ですら騎乗は許されず、かちとなる。


 そして王へ向けてまっすぐ整列している近衛軍ロイヤルガーズ第一騎兵大隊ファーストウィングは彫刻の様に微動だにせず、王を真正面に見据える指揮官にはプレンツェン・バイ・パッサイル大佐がついていた。


 そしてそのパッサイル大佐の脳裏にあるのは、自分の息子の事だけだった。


 「どうか流血の事態にならないように」

 「そしてその血が息子のティムのものにならないように」


 息子の為だったらここで剣を抜く心構えは出来ていた。


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 次回 戦勝記念式典 入場


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