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異世界に来たけど義母が5人もいた上に結構ハードモードだった。  作者: 雨露口 小梅
第二章 戦勝記念式典(ヴィクトリー・セレモニー)
51/212

◇07 転戦 旅路(ジャーニー)

 【王国 王の道】

 【戦勝記念式典まで1週間と2日 昼】


 敷石が詰められよく整備された王の道である新街道の両側には、広大な牧草地帯が広がり、なだらかな丘に向かって収穫された麦畑がまた違う色をして広がっていた。

 時折石垣が見えるのは所有者の境界を示す為の様に見える。


 前線基地となった双子城(メットナウ家)の領地では、大街道とはいえ昼になっても、物流が殆どない。

 領民は疎開したかのように見える。


 秋風が心地よく、陽光が体を温めてくれるなかヴァシュリンガー中隊が進む。

 軍の行軍速度に準じた速さで、普通の人間が歩く速度より僅かに早い程度。


 石畳の心地よい揺れであっという間に眠りに落ちる。

 そして日が暮れた頃には双子城(メットナウ家)の領地の境に到着して、野営する。


 直ぐに後方のノイシェーハウ派遣軍から天幕や水、食事などの補給が届く。

 丁寧に馬の糧秣や代えの馬も引き連れてくる。

 何から何まで至れり尽くせりだった。


 しかしこれは叔父のビルゲンの気が変われば中隊は干上がる事になる。

 ただ今の中隊にはそれに代わる手立てがない。


 中隊はそのまま厳しく見張りを立てて夜を過ごす。

 明日からはノイシェーハウと同盟関係にはない領家の領地を抜けていく事になる。

 王都ゴールドキャッスルに近づけば近づくほど、ノイシェーハウへの好意は薄れ、マリーエンロッゲンの影響が強くなっていくという話だ。


 行軍の本番はこれからだった。





 【王国 王の道】

 【戦勝記念式典まで1週間と1日 朝】


 変わらぬ景色の中を進む長い長い葬送の列。

 領家が変わり前線基地から離れ、次第に王の街道も物流が活発になってくる。


 旅商人の馬車や大商人の隊列、旅人が見え始める。

 家畜や農民を見ないのは、農道が別にあるからだろう。


 王の街道の道幅が広いとはいえ、王国軍の旗を掲げた2頭引きの馬車、そして両側に【うたうもの(シンガー)】が歩き、更にその外側に武装した兵が歩く。

 一部の兵は剣を鞘から抜いており、馬車の上から直ぐに弓を引けるように番いている兵を見ると、直ぐに商人達は道を開ける。


 戦争の音は物資の徴発。若者の徴募。そして帰らぬ者。不具となって帰ってくる者。

 始めに上げた順から、見なくなるこの後方にいる民には、今だ前線にいるかのような殺気を放つこの隊列に自ら道を開けた。


 いや、街道の治安を守る領家の騎士ですら、進む王国軍に道を開けた。

 治安維持の騎士は平民の兵20名を連れて巡回に出ている。

 ノイシェーハウ派遣軍の先頭が見えたら、伝令を出して自分の主人に知らせる手筈になっている。

 出迎えは主人の仕事で、自分は通過を見守るだけだ。

 だから邪魔する事はないのだが、ほとんど見た事の無い無数の亜人デミヒューマンを引きつれている部隊。

 これがノイシェーハウ派遣軍の先触れなのかどうか判断に困る。

 確かに王国軍とノイシェーハウ軍の旗を上げている。

 しかし見慣れる貴族の旗を掲げているところを見ると、ノイシェーハウ派遣軍と関係はあるが、また別な軍という事もあり得る。

 その場合、ノイシェーハウ軍の出迎えに出る筈の自分の主人に伝えるべきかどうか迷う。


 特にこちらが騎士とわかっている筈なのに行軍を止める気配もなく、更に厳しい目を向けてくるに当たっては、とても同じ王国に仕える武装組織とは思えない。


 「俺が何をしたっていうんだ……」


 2両目の馬車の上から指揮官らしきものが敬礼をしてくる。

 しかしその顔は笑っていない。

 騎士も敬礼を返してその指揮官を見送る。

 

 その馬車の隣を歩く、ひときわ体の大きな亜人デミヒューマンを見た時、主に伝令を出すべきだったのではないかと後悔した。

 今から伝令を出せば、先ほどの指揮官の前を走っていかなければならない。

 そうなるとあの指揮官は確実に自分の部隊の事を報告されると受け取るだろう


 その後はどうなる?

 何もないかもしれない。

 しかし大きなトラブルになる事が予想される。

 まだこのまま見逃した方がいいかもしれない。


 「仕方ないじゃないか……」


 まだ戦場に出た事もなければ、夜盗とも剣を合わせた事のない若い騎士は自分を慰めた。

 そして思う。

 戦争なんかない世界になればいいのに。

 あの指揮官のような目をした人間と剣を交えたら殺される。

 それしか思えなかった。


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 次回 レディ=マホ


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