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異世界に来たけど義母が5人もいた上に結構ハードモードだった。  作者: 雨露口 小梅
第二章 戦勝記念式典(ヴィクトリー・セレモニー)
45/212

◇01 敵か味方か(エネミー オア フレンド)

長い長い第一章にお付き合い下さいましてありがとうございます。

恐らく異世界で目覚めた主人公は3日間の戦闘を生き延びました。

そして任務を完遂すべく報告にまいります。

主人公を歓迎していない地へ。

第二章は次第に女性陣の活躍が増えます。

そして登場人物が更に増えます。お楽しみ下さい。


 【王国・双子城の平原 アクティム・ヴァシュリンガー中隊 夕】


 俺達は痛む体を引きずりながら、平原を後退していた。

 俺達を救った騎兵隊は、敵の前線を揉みに揉んで後退させていた。

 500の騎兵が倍以上の歩兵を蹴散らしていく。

 騎兵というのはそれほどのチカラがあるのだ。


 投射兵器は全て俺達に使ってしまったからだろう。

 騎馬の突進力に、歩兵は無力だった。

 それは俺達も痛感した事だ。


 両脇を抱えてレディ=マホとイルチが俺を歩かせてくれる。

 他の兵も似たり寄ったりだった。

 一人異質なのは、馬に乗った近衛騎兵のウプレンゲナー大尉だけだった。

 傷ついた兵は肩を借り、担架に乗り後方へ下がっている。

 戦死した兵は、直接【うたうもの(シンガー)】に運ばれていた。


 先に後退させていた重傷者達の集積所まで下がる。

 そして俺は慄然とした。

 夥しい戦死者の山。

 草原の中に死者の絨毯が敷かれているようだった。

 これが俺の指揮した結果……。

 僅かでも生き残った喜びを感じた自分を恥じた。


 コルネスティとジアルマタ、ソチェニが駆け寄って来る。


 「生きてたか!」


 俺に散々こき使われた3人は、喜悦の表情を隠しもせず、生還の祝いを述べた。

 剣を掴んでいない右手を上げて応える。


 リンヴェッカーとシュール、ヴェークも俺に駆け寄って来る。

 そこに重傷者と一緒に後退していた会社カンパニーの砲術長も加わった。


 「クライナーは?」


 「重傷です。恐らく腕を失う事になるでしょう」


 ヴェークが表情を重くして報告する。


 「そうか……」

 「しかし生きていたんだな」

 「お前たちも生きていてくれてありがとう」


 頭を下げた。

 そして俺の心からの感謝を謙遜する人間はいなかった。


 「さて、シュール。損害を確認してくれ」

 「リンヴェッカー。俺の傍にいて補佐してくれ」

 「動ける兵は持っている武器を点検させろ、失ったものがあれば拾ってでも補充するんだ」

 「ヴェーク。陣を組むぞ。重傷者をまとめてその外側に【うたうもの(シンガー)】を配置」

 「俺達は重傷者と【うたうもの(シンガー)】を守るぞ」


 驚きの余りソチェニが大きな口を開けている。

 俺を支えるレディ=マホとイルチも俺の顔を見上げる。


 「ご主人様マイロード。一体何を警戒されているのですか?」

 「周りは味方です。我々は助かったのです」


 リンヴェッカーが皆を代表して疑問を口にする。


 「味方だと? 近衛騎兵は別としてあいつらは3日間、高見の見物をしてたんだぞ」


 傍にいるウプレンゲナー大尉が僅かに頭を下げる。


 「口封じに攻撃されるかもしれない」

 「主人に裏切られた奴もいるんだぞ」


 俺はあからさまにコルネスティとジアルマタ、モニオムの事を言った。

 コルネスティは嫌な顔をして、ジアルマタは反抗的な表情を作った。

 ジアルマタとモニオムはまだ主人マリーエンロッゲンに忠誠を尽くしている。


 「ヴェーク。叔父の戦力はどれくらいだ?」


 草原を埋め尽くす軍団を見る。


 「ノイシェーハウ軍が2個師団。メットナウ軍は1個師団程でしょうか」

 「騎兵と弓兵もおります」


 ヴェークがまいったなというように、自分の頭を撫でながら答える。

 俺の緊張感と警戒感は皆に伝わったようだった。


 「そういう事だ。まだ気を抜くな」


 全員が弾け飛ぶように動き出した。


 もう、これ以上の死体は見たくない。

 俺の精神が持ちそうになかった。

 これほどの命の責任に耐えられそうにない。

 自分で自分の思考を麻痺させた。


 「目の前の事を考えろ」





 【王国・双子城の平原 ノイシェーハウ派遣軍 夕】


 行軍体形を保ったままの2個歩兵師団の前方に突出した形で、騎乗した一群がアクティムの中隊を観察していた。


 「あれは何をしているんだ?」


 馬に乗り、参謀肩章を下げた一人が疑問を口にする。

 その参謀団の中央に位置する、遠目でも一目でわかる飾りたてが豪勢な壮年の将軍が望遠鏡を構える。


 「武器を配ってるな」

 「どうやら俺達と一戦する気らしいぞ」


 「無礼な」

 

 周りの参謀団が騒ぎ始める。


 「まあ、俺達は3日間も目の前で静観を決めたからな」

 「恨みつらみも積もるだろう」


 言葉とは裏腹に、その声音にはとても嬉しそうな成分が含まれていた。

 その声に含まれる自信は嘘ではなかった。

 ノイシェーハウ家は共和国に進行した王国軍の中では最大勢力の5個師団を持っていた。

 その5個師団には後方支援は含まれていない。

 実に10万の兵力を有し、損害もほとんど出さずに後退できた。

 それは戦わなかった訳ではなく、兵も優秀なら参謀団も優秀だった。


 ノイシェーハウを除く他家は全て貴族が領民を徴発して使役するのに対して、ノイシェーハウは領民の議会が領民を徴兵し、訓練された領民が参謀となって戦争を指導する。

 ノイシェーハウはそれなりに自国の軍隊への影響力はあるが、既に他家への調整や領民軍隊の象徴になり始めている。

 逆に言うと領民出身の指揮官では、王国の他家から相手にされないから、ノイシェーハウが指揮官を務めているに過ぎない。

 そしてそれを望んだのは現当主のロストッカー・ノイシェーハウだった。


 要するに他家の貴族は兵を大切にしないのに対して、ノイシェーハウの参謀は同じ領民出身の兵を大切にする。

 他家は大は1個師団。小は1個大隊。それに比して不釣り合いな程の5個師団10万人。それを可能にした新世代の軍隊だった。

 それでも5個師団10万人の動員はノイシェーハウにとっては負担が多い事には変わりはない。


 「しかしビルゲン閣下。我々は救出に来たのですぞ」

 「自分の叔父に向けて武器を向ける等……」


 「おい! アクティム・バシュリンガー様に伝令だ」

 「ノイシェーハウ派遣軍ビルゲン・ノイシェーハウ大将が呼んでいる」

 「至急来られたし」


 幕僚の命令に弾かれた様に、騎乗した伝令が走り出す。


 「まあまあ、そういきり立つな」

 「俺達は政治で動けなかった。ならば政治で口封じされると思うのも当然だろう」

 「あれだけの損害を受けても警戒を怠らないのは優秀な将校の証拠じゃないか」


 「我々はマリーエンロッゲン家の妨害によって救出できなかった訳であります」

 「それを……」


 「その情報を知らぬ者を咎めても気の毒だろう」

 「さぁ。これは忘れよう」

 「我々はバシュリンガー中隊の奮戦を称賛し、祝福しに来たのだ」


 そしてもう一度甥の部隊を見る。

 伝令の兵が武器を手に追い返されていた。


 「はははははは。見ろ。俺の甥もなかなかに頑固だぞ」

 「どれ。あの凝り固まった体をほぐしてやろう」

 「ヤァ!」


 突然走り出した自分たちの大将に驚いて、参謀団も慌てて馬を走らせる。


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 次回 残存兵力20


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 連載を始めて遂に1万PVを超えました。第二章が始まる記念する回に1万PVを超えると言う記念が重なって嬉しいです。ブックマークをしてくださった方。ご評価を下さった方。感想を下さった方。読んで下さっている片全ての方に感謝申し上げます。

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